第十九話~小さな~
「頭領様はどこにいるの?」
「頭領はお客さんに挨拶をしていますよ」
「あたしも挨拶する~」
「・・・・・・ええっと・・・・・・」
妖のひしめくその部屋で、彩花は駄々をこねていて。
銀狐は少々困り顔。
「彩花ちゃん、ほら、拙者が本でも読んでしんぜよう」
「もうその本読んだの!」
「じゃあ、俺と」
「もう、狭い~!」
寺の妖がその一室に全て集まっているのだ。それも当然というものであろう。
「たしかに狭いよな」
「しょうがないよ、急だったんだし」
「そうそう」
うんうんとうなずく。
その間にそ~っと、そ~っと彩花が出口へ。
「彩花殿、ここを出ては!」
「誰か彩花ちゃんを止めて!」
遅かった。妖達の静止する声もむなしく女の子は部屋の外へ。
妖達がすぐに追いかけ・・・・・・られなかった。
「う・・・・・・」
ばたばたと倒れる妖達。急いで戸が閉められる。
「いつもながら・・・・・・」
「それより彩花ちゃんが!」
「俺と葉子が!黒之助はここで」
「おう!」
「皆あんまりです!いきなりあんなところに閉じこめて!」
女の子は頬を膨らましてぷんぷんと。
庭で遊んでいたら、いきなりあの部屋に連れて行かれたのだ。
「頭領様はどこに・・・・・・」
きょろきょろ廊下を見渡す。
静かだった。皆あの部屋に籠もっているのだ。
時折声がする。
頭領の声と知らない人の声。
「あっち、かな?」
またとことこと歩き出した。
「葉子、生きてるか?」
「なんとかね・・・・・・」
銀狐と妖狼は、部屋を出てすぐにばったり倒れ。
そこから一歩も動けないでいた。
「普段すっごく押さえているんだ・・・・・・」
「油断したよ。まさかこれほどとは・・・・・・」
「彩花ちゃん、どっかで倒れてるんじゃあ。早く助けないと」
「うん・・・・・・」
とはいうものの、正直助けて欲しいのは、自分達の方であった。
よし、あいさつは・・・・・・うん、大丈夫。
「こんにちは!」
「がしゃん!」
「彩花といいます。よろしくお願いします!」
「がしゃん!!」
顔を上げると、杯を落とした頭領が。
反対側に座る客人も同じように。
皆、目を見開いて固まっていた。
「あれ?」
どうしたんだろう。おかしなことしたのかな。
「彩花、だ、大丈夫か!?」
「え、ううん。わたしは元気ですけど・・・」
「本当に何ともないか?」
頭領様、ゆらしすぎです。ちょっと痛いです。
「驚いた・・・・・・」
「同じく・・・・・・」
なぜおどろく必要があるのでしょうか・・・・・・わたしにはよく分かりません。
「頭領様、一体どうしたの?」
「あー、八霊。その娘は?」
「さっき話したじゃろう。ここで育てておる子がおると」
「人・・・・・・なのか?」
「・・・・・・一応人じゃ」
「一応・・・・・・」
「しかし驚いたな、嬢ちゃん、平気か?」
「何がですか?」
頭領の膝の上に乗る女の子。ちゃんと相手の目を見て言葉を返す。
「凄いな、平気みたいだよ」
「今は押さえていないのだが・・・・・・」
「ああ、そうだ。挨拶しておくか。俺は酒呑童子っていうんだ。こっちは」
「茨木童子という。よろしく」
「よろしくお願いします!」
両方とも若い人だ。頭領様より太郎さんやクロさんに年は近いのかな。
「おう、よろしくな」
「一つ聞きたいのじゃが、誰か彩花以外にあの部屋を出たか?」
「さあ、知らないです」
頭領様がため息をついています。
「悪い、ちょっと席を外す。彩花の相手をしてやってくれ」
「まかせておけ」
頭領様がわたしををしゅてんどうじ様にあずけました。
いばらきどうじ様がわたしをじっと見てきます。
「なんです?」
「本当にお前大丈夫なのか?」
「だから何が・・・・・・」
「お前じゃなくて彩花ちゃんだろうが」
しゅてんどうじ様がいばらきどうじ様の頭を叩きました。
とっても痛そうです。頭押さえてます。
「大丈夫ですか?ええと、いばらきどうじ様」
「う、うむ」
「彩花ちゃん、心配してくれてありがとう、だろ」
「彩花・・・・・・殿。どうも」
「はい」
「・・・・・・まあ、いいか」
「大丈夫か、おぬしら」
「ごめんなさい、頭領!」
「彩花ちゃんが!」
二匹の妖が泣いている。
彩花にもしものことがあったらと。
「今、酒呑と茨木と一緒におるよ」
「ええ!!」
「この妖気の中で平気なんですか!」
「そうみたいじゃのう」
狐と狼の首ねっこを掴んでずるずる引っ張りながら部屋に向かう。
そこでも、妖達が皆同じように泣いていた。
「頭領~」
「彩花ちゃんがここを出ていって・・・・・・」
「今頃・・・・・・う、う」
「きっと倒れてるよ、泣いているに違いないよ」
「大丈夫じゃよ」
「え?」
「彩花は無事じゃから」
「本当ですか!?」
わっと盛り上がる妖達。
「あの子、この妖気にも平気みたいだよ」
「凄い・・・でも良かった」
ほっ、と五十ばかしのため息が。喜んだ妖の何匹かは部屋の外に。
「う、う~ん」
そしてべちゃっと廊下に落ちた。
「やれやれ」
そんな妖達を頭領は次々部屋に放り込んでいく。
「まだここを出てはいかんぞ、よいな」
「は~い」
そして、頭領はその部屋を後にした。
「そうか、彩花ちゃんは五歳か」
「はい!」
「うん、元気があっていいね」
「頭領様!」
「よしよし」
頭領様が帰ってきました。頭を、なでてくれました。
「どうだった」
頭領様がひそひそ声で話しをしています。ちょっとわたしには聞き取れません。
「葉子と太郎が倒れておったよ」
「面目ない・・・・・・」
いばらきどうじ様が落ちこんでます。どうしたのでしょうか。
さっきまでうれしそうにお話しされていたのに・・・・・・。
「なに、気にするな。いつものことじゃ」
「そうか、そうだな」
「じゃあ、彩花ちゃんも含めてやりますか」
「はい!」
「お酒は飲んじゃ駄目だよ」
「はい」
色々な話をしゅてんどうじ様といばらきどうじ様はしてくれました。
お二人は兄弟で、しゅてんどうじ様は鬼さんの王様だそうです。
すごいです。びっくりしました。
あまり王様らしくないですけど。
どっちかというといばらきどうじ様のほうが・・・・・・。
「さようなら」
しゅてんどうじ様といばらきどうじ様が帰ります。
「今度はこっちにもきてくれよな」
おにがじょうというところに二人は住んでいるそうです。
「ぜひ行きたいです」
どんなところでしょうか?わたしはここを離れたことがないから・・・・・・。
「歓迎するよ」
「はい」
しゅてんどうじ様といばらきどうじ様が帰ったあと、皆が出てきました。
すぐにわたしの周りに集まってきます。
ちょっと怒った顔です。
こわいです。葉子さんと太郎さんとクロさんが、特に。
「ええと、部屋を抜け出してごめんなさい!」
たぶんこのことかな?部屋にいなさいって何度も言われたし・・・・・・。
「無事で良かったですよ。本当に」
「俺は心臓が一瞬止まったよ」
「太郎さん!?大丈夫ですか!」
「あ、大丈夫。冗談だから、ね」
ぷく~と彩花の頬が膨らんだ。
「そんなこわいこと言わないで下さい!」
「わりぃわりぃ」
「しかし・・・・・・茨木様の妖気を気にしないとは・・・」
「なんの話です?」
「あ、気にしないで下さい」
クロさん、とっても怪しいです。
「皆、寒いから中に入るぞ」
「あ、はい」
葉子さんと手をつなぎました。
手を振りながら歩きます。
皆、私達のあとから着いてきます。
わたしが一番先にげんかんに着きました。
今日は、とっても楽しかったです。
「頭領はお客さんに挨拶をしていますよ」
「あたしも挨拶する~」
「・・・・・・ええっと・・・・・・」
妖のひしめくその部屋で、彩花は駄々をこねていて。
銀狐は少々困り顔。
「彩花ちゃん、ほら、拙者が本でも読んでしんぜよう」
「もうその本読んだの!」
「じゃあ、俺と」
「もう、狭い~!」
寺の妖がその一室に全て集まっているのだ。それも当然というものであろう。
「たしかに狭いよな」
「しょうがないよ、急だったんだし」
「そうそう」
うんうんとうなずく。
その間にそ~っと、そ~っと彩花が出口へ。
「彩花殿、ここを出ては!」
「誰か彩花ちゃんを止めて!」
遅かった。妖達の静止する声もむなしく女の子は部屋の外へ。
妖達がすぐに追いかけ・・・・・・られなかった。
「う・・・・・・」
ばたばたと倒れる妖達。急いで戸が閉められる。
「いつもながら・・・・・・」
「それより彩花ちゃんが!」
「俺と葉子が!黒之助はここで」
「おう!」
「皆あんまりです!いきなりあんなところに閉じこめて!」
女の子は頬を膨らましてぷんぷんと。
庭で遊んでいたら、いきなりあの部屋に連れて行かれたのだ。
「頭領様はどこに・・・・・・」
きょろきょろ廊下を見渡す。
静かだった。皆あの部屋に籠もっているのだ。
時折声がする。
頭領の声と知らない人の声。
「あっち、かな?」
またとことこと歩き出した。
「葉子、生きてるか?」
「なんとかね・・・・・・」
銀狐と妖狼は、部屋を出てすぐにばったり倒れ。
そこから一歩も動けないでいた。
「普段すっごく押さえているんだ・・・・・・」
「油断したよ。まさかこれほどとは・・・・・・」
「彩花ちゃん、どっかで倒れてるんじゃあ。早く助けないと」
「うん・・・・・・」
とはいうものの、正直助けて欲しいのは、自分達の方であった。
よし、あいさつは・・・・・・うん、大丈夫。
「こんにちは!」
「がしゃん!」
「彩花といいます。よろしくお願いします!」
「がしゃん!!」
顔を上げると、杯を落とした頭領が。
反対側に座る客人も同じように。
皆、目を見開いて固まっていた。
「あれ?」
どうしたんだろう。おかしなことしたのかな。
「彩花、だ、大丈夫か!?」
「え、ううん。わたしは元気ですけど・・・」
「本当に何ともないか?」
頭領様、ゆらしすぎです。ちょっと痛いです。
「驚いた・・・・・・」
「同じく・・・・・・」
なぜおどろく必要があるのでしょうか・・・・・・わたしにはよく分かりません。
「頭領様、一体どうしたの?」
「あー、八霊。その娘は?」
「さっき話したじゃろう。ここで育てておる子がおると」
「人・・・・・・なのか?」
「・・・・・・一応人じゃ」
「一応・・・・・・」
「しかし驚いたな、嬢ちゃん、平気か?」
「何がですか?」
頭領の膝の上に乗る女の子。ちゃんと相手の目を見て言葉を返す。
「凄いな、平気みたいだよ」
「今は押さえていないのだが・・・・・・」
「ああ、そうだ。挨拶しておくか。俺は酒呑童子っていうんだ。こっちは」
「茨木童子という。よろしく」
「よろしくお願いします!」
両方とも若い人だ。頭領様より太郎さんやクロさんに年は近いのかな。
「おう、よろしくな」
「一つ聞きたいのじゃが、誰か彩花以外にあの部屋を出たか?」
「さあ、知らないです」
頭領様がため息をついています。
「悪い、ちょっと席を外す。彩花の相手をしてやってくれ」
「まかせておけ」
頭領様がわたしををしゅてんどうじ様にあずけました。
いばらきどうじ様がわたしをじっと見てきます。
「なんです?」
「本当にお前大丈夫なのか?」
「だから何が・・・・・・」
「お前じゃなくて彩花ちゃんだろうが」
しゅてんどうじ様がいばらきどうじ様の頭を叩きました。
とっても痛そうです。頭押さえてます。
「大丈夫ですか?ええと、いばらきどうじ様」
「う、うむ」
「彩花ちゃん、心配してくれてありがとう、だろ」
「彩花・・・・・・殿。どうも」
「はい」
「・・・・・・まあ、いいか」
「大丈夫か、おぬしら」
「ごめんなさい、頭領!」
「彩花ちゃんが!」
二匹の妖が泣いている。
彩花にもしものことがあったらと。
「今、酒呑と茨木と一緒におるよ」
「ええ!!」
「この妖気の中で平気なんですか!」
「そうみたいじゃのう」
狐と狼の首ねっこを掴んでずるずる引っ張りながら部屋に向かう。
そこでも、妖達が皆同じように泣いていた。
「頭領~」
「彩花ちゃんがここを出ていって・・・・・・」
「今頃・・・・・・う、う」
「きっと倒れてるよ、泣いているに違いないよ」
「大丈夫じゃよ」
「え?」
「彩花は無事じゃから」
「本当ですか!?」
わっと盛り上がる妖達。
「あの子、この妖気にも平気みたいだよ」
「凄い・・・でも良かった」
ほっ、と五十ばかしのため息が。喜んだ妖の何匹かは部屋の外に。
「う、う~ん」
そしてべちゃっと廊下に落ちた。
「やれやれ」
そんな妖達を頭領は次々部屋に放り込んでいく。
「まだここを出てはいかんぞ、よいな」
「は~い」
そして、頭領はその部屋を後にした。
「そうか、彩花ちゃんは五歳か」
「はい!」
「うん、元気があっていいね」
「頭領様!」
「よしよし」
頭領様が帰ってきました。頭を、なでてくれました。
「どうだった」
頭領様がひそひそ声で話しをしています。ちょっとわたしには聞き取れません。
「葉子と太郎が倒れておったよ」
「面目ない・・・・・・」
いばらきどうじ様が落ちこんでます。どうしたのでしょうか。
さっきまでうれしそうにお話しされていたのに・・・・・・。
「なに、気にするな。いつものことじゃ」
「そうか、そうだな」
「じゃあ、彩花ちゃんも含めてやりますか」
「はい!」
「お酒は飲んじゃ駄目だよ」
「はい」
色々な話をしゅてんどうじ様といばらきどうじ様はしてくれました。
お二人は兄弟で、しゅてんどうじ様は鬼さんの王様だそうです。
すごいです。びっくりしました。
あまり王様らしくないですけど。
どっちかというといばらきどうじ様のほうが・・・・・・。
「さようなら」
しゅてんどうじ様といばらきどうじ様が帰ります。
「今度はこっちにもきてくれよな」
おにがじょうというところに二人は住んでいるそうです。
「ぜひ行きたいです」
どんなところでしょうか?わたしはここを離れたことがないから・・・・・・。
「歓迎するよ」
「はい」
しゅてんどうじ様といばらきどうじ様が帰ったあと、皆が出てきました。
すぐにわたしの周りに集まってきます。
ちょっと怒った顔です。
こわいです。葉子さんと太郎さんとクロさんが、特に。
「ええと、部屋を抜け出してごめんなさい!」
たぶんこのことかな?部屋にいなさいって何度も言われたし・・・・・・。
「無事で良かったですよ。本当に」
「俺は心臓が一瞬止まったよ」
「太郎さん!?大丈夫ですか!」
「あ、大丈夫。冗談だから、ね」
ぷく~と彩花の頬が膨らんだ。
「そんなこわいこと言わないで下さい!」
「わりぃわりぃ」
「しかし・・・・・・茨木様の妖気を気にしないとは・・・」
「なんの話です?」
「あ、気にしないで下さい」
クロさん、とっても怪しいです。
「皆、寒いから中に入るぞ」
「あ、はい」
葉子さんと手をつなぎました。
手を振りながら歩きます。
皆、私達のあとから着いてきます。
わたしが一番先にげんかんに着きました。
今日は、とっても楽しかったです。