小説置き場2

山岳に寺社仏閣に両生類に爬虫類に妖怪に三国志にetcetc

あやかし姫(3)

あやかし姫番外編~酒呑童子4~

腕の中の赤子は、静かに眠っていた。 男は微笑み、赤子の母に目を移した。女も、微笑んでいた。 女が、苦しそうに息を吐いた。 男は、 「もう、寝ろ」 と言った。 女は、 「もう少し、見ていたい」 と言った。 「そうか」 「はい・・・あの、ごめんなさい」 …

あやかし姫~ひな祭り~.

鈴鹿御前「ほら~、早く甘酒持ってこい!(≧∀≦)ノ」 姫様「・・・・・・(; ´∀`)」 葉子「・・・(うわ~、酒癖相変わらずわる~( ̄□ ̄;)」 俊宗「本当すみません・・・(´・ω・`)」 姫様「いえいえ(*^_^*)」 沙羅「こ、このお雛さま、可愛いですね~でも、…

あやかし姫~紅い月夜に(2)~.

太郎が、彩花の頭に振り上げた前足をゆっくりのせた。 「太郎さん、くすぐったいよ」 彩花が太郎の肉球をぷにぷに触る。 「彩花ちゃん、どうした?」 「ちょっと厠に」 「一人か?」 「うん」 太郎が眉をしかめた。 「葉子は?」 「起こさなかったの。悪いか…

あやかし姫~紅い月夜に(1)~.

闇の中、むくりと女の子が起きあがった。 「・・・葉子さん、厠・・・」 隣で寝ている女を起こそうと、女の子は手を伸ばす。その手が止まる。 女はそれはそれは穏やかな顔で、すーすー寝息をたてていて。 「葉子さん、気持ちよさそうに寝てる・・・」 どうし…

あやかし姫~白(2)~.

「驚いた、ここに来ることが出来るものがいるとは」 見知らぬ男が座っている。何かを、口に運んでいた。 男の喉を、ごくりと丸いものが通る。 男はその手をとめ、ゆっくり近づいてくる。 怖い、そう思った。 逃げたいと思った。ここから早く離れないと・・・…

あやかし姫~白(1)~.

なんだろう・・・この感覚は・・・ 私の姿はここにあるのに、心が、どこか遠くにある 遠くから、私は私を見ている 不思議な、感覚 そう、まるで・・・ 「門?」 自分の部屋で葉子さんと一緒に寝ていたはずなのに、目の前には寺の入り口。 真っ白な世界に、お…

あやかし姫~節分~.

今日は節分。 妖達は今か今かと夜を待つ。 寺の妖達にとって、節分の豆まきは楽しい遊び。 もちろん、まいた豆を美味しく頂くのも忘れない。 「おうい、着いたぞ」 頭領。 大きな袋を何個も持って玄関に。 どさっと袋を置くと、すたすた自分の部屋に行ってし…

あやかし姫~あける・・・・・・~

皆、庭にいた。姫様と朱桜と太郎以外。 居間と他の部屋をしきる障子や戸を取り外すと、妖達は庭に戻された。 葉子はまだ眠っている光をその尾に包んでいる。 しきりに桐壺が謝っていた。 う~んと光がのびをした。どうやら目が覚めたようで。 黒之助は頭領と…

あやかし姫~大晦日(二)~

「は・・・あんたらもいるとはね」 「来てたら悪いか、東の」 「いいや、西の」 「鈴鹿、喧嘩腰になるな」 「兄上も」 頭領、酒呑童子、茨木童子、鈴鹿御前、藤原俊宗。 ある意味、豪華。 東の鬼と西の鬼の総大将と副将が、顔を合わせているのだ。 滅多にな…

あやかし姫~大晦日(一)~

「もう、一年が終わるのですね」 「はい・・・」 年末、人でいう大晦日。 もう、夜も遅い。 一年が、終わりを告げる日の夜遅く。 「眠くないですか」 「大丈夫です」 彩花が小さな女の子に話しかける。 朱桜。西の鬼の王、酒呑童子の幼い娘。 今日も父親に連…

あやかし姫番外編~鈴と鈴鹿~

仔猫の後を追う女性。 すれ違う者は皆一礼する。 それぞれ額に角を生やしていた。 「鬼」 古来よりこの地に住みし、強大なる力を持つ妖。 勇猛、粗暴。闇に潜み、爪研ぐ彼らは、人間から恐れられてい・・・・・・ 「鈴鹿御前様、鈴の散歩ですか?」 「うん。…

第二十五話~お見舞い~

「彩花ちゃん、雪ですよ~」 「沙羅ちゃん」 外に出るとかっぱの子が。どうやら遊びに・・・ 「風邪大丈夫ですか?」 「あれ、どうして・・・」 「頭領様が手紙をくれました」 どうやらお見舞いに来てくれたよう。 姫様、頭領のほうを見る。頭領、天を向いた…

第二十四話(2)~雪~

「彩花ちゃん、早く寝ないと。風邪治りませんよ」 「や~だ~!」 女の子は手足を布団の中でじたばたと。 「ほらほら」 葉子がなだめようとする。それでも聞かない女の子。 「頭領さまが絵巻物買ってきてくれるって言ったもん、読んでくれるって言ったもん」…

第二十四話(1)~風邪~

「姫様!早く起きて下さい!太郎が呼びにきましたよ」 朝。 女が布団をゆさゆさゆする。 銀狐葉子が姫様に。 姫様まだ布団の中。 なかなか起きてくれないのだ。 「うー」 もぞもぞと布団が動く。布団をすっぽりかぶって姫様は出てこようとしなかった。 「寒…

あやかし姫番外編~酒呑童子3~

「さて、どうするか」 「?」 「ん、いや、何でもないよ」 ゆっくりと鬼馬が空を駆ける。それに乗るのは鬼の王たる酒呑童子とその娘の朱桜。 荷物が、いっぱい。鬼馬重い。 二人は鬼ヶ城に帰る途中。 「父さま」 酒呑の背に乗る朱桜が。 「うん、どうした?…

第二十三話~朱桜、帰る~

「むう・・・・・・」 姫様と朱桜が仲良く座って朝食をとる。 寺に朱桜が来てからの微笑ましい光景。 頭領、そんな二人の様子を手に持つ手紙と交互に見比べる。 朝から、浮かない顔。 「誰からのお手紙ですか?」 その手をとめ、姫様が頭領に聞く。 「いや、…

小話2

~鈴と鈴鹿~ 鈴鹿「ほらー、おしっこはちゃんと言われた通りのところにする!」 鈴「にゃーん」 鈴鹿「もう、このお馬鹿な仔は!」 こっそり 俊宗「鈴鹿、鈴のこと嫌いなのかな・・・」 大獄丸「そうかもしれんな。一回家出しちゃったし・・・」 鈴「にゃ~…

第二十二話(4)~鬼~

「そしたらこの人がね~、「お前のためなら人の身などいつでも捨てられる」だって。凄くない?」 鈴鹿と対面の姫様はにこにこと聞いている。本当に楽しそうに。時折、うんうんと相づちをうつ。 鈴鹿の隣の大獄丸は呆れ顔。さっきからずっと酒をあおっていて…

第二十二話(3)~鬼~

肩を叩かれ、目を開ける。 荒野。巨大な建物が見える。鬼の顔をかたどっているような巨大な建造物。 「ここが・・・」 「うん。ここが東の鬼さんの住む場所です。あの正面に見えるのがが鈴鹿様の居城ですよ」 岩で作られた巨大な城。ごつごつとした無骨さが…

第二十二話(2)~鬼~

牛鬼が動く。わさわさと見えない道を空に向かって歩いていく。 光の輪。それをくぐる。くぐった側から、ゆっくりと身体が消えていく。 顔から胴、そして牛車と順に。 「あの、彩花さま」 牛車の中。 振動は無い。 二人だけ。 広くは、ない。 「はい?」 「寺…

第二十二話(1)~鬼~

とすっという音がした。何かが、地面に下りる音。 同時に寺が霧に包まれる。寺の中にも霧は現れた。 巨大な影が門の前に停まった。さわさわ、さわさわ。 影は絶えず動いている。 巨大な影の背から大男が降り立つ。つかつかと寺の中に入る。 ひゅっという、霧…

第二十一話~夜のお寺~

夜。朱桜が目を開ける。 姫様も、すぐに目を開けた。 「厠ですか」 「・・・・・・はい」 朱桜は恥ずかしそうに。 一人では夜怖いのだ。 姫様が布団からゆっくりと出る。 「一緒に行きましょうか」 「・・・はい」 提灯を持ち、朱桜と手をつなぐ。 火を、灯…