小説置き場2

山岳に寺社仏閣に両生類に爬虫類に妖怪に三国志にetcetc

あやかし姫(2)

第二十話(2)~あやかし姫~

「皆集まりましたか?」 「何だ、何すんだ?」 「そこ、尻尾踏むな!」 「これ尻尾か?」 押し合いへし合い。 妖達はわいわいがやがや騒ぎ立てて。 「し・ず・か・に!来てない人いる~?来てなかったら返事して~」 隣同士顔を見合わす。どうやら、皆集まっ…

第二十話(1)~あやかし姫~

「何読んでるんですか」 銀狐が小さな女の子に。ちょこんとその顎を女の子の頭に乗せ、読んでいるものを覗き込む。 「かぐや姫です」 「ふ~ん」 極彩色の絵巻物。彩花が熱をだしたときに、頭領がくれたものである。 「綺麗です。私もこういう風になりたいで…

第十九話~小さな~

「頭領様はどこにいるの?」 「頭領はお客さんに挨拶をしていますよ」 「あたしも挨拶する~」 「・・・・・・ええっと・・・・・・」 妖のひしめくその部屋で、彩花は駄々をこねていて。 銀狐は少々困り顔。 「彩花ちゃん、ほら、拙者が本でも読んでしんぜ…

第十八話~鬼姫~

秋雨。寺を長々と降る雨が覆う。 本をめくる手を姫様が止めた。 「何でしょう?」 「・・・・・・どうしました?」 ここは姫様達の部屋。 彩花、葉子、朱桜。その他もろもろの妖達が集まっていた。 唐突に姫様が呟いたので、不思議そうな妖達。代表して銀狐…

第十七話(2)~きのこ狩り之2~

「結局あたい達あまり採れなかったと」 「ご、ごめんなさい」 「・・・・・・」 「いいよ、あたいのせいでもあるし」 「・・・ごめんなさい」 「そんなに気にしなくていいから」 葉子、朱桜、沙羅は三人体育座り。ぼ~っと今日の反省をしていた。 「どうだ、…

第十七話(1)~きのこ狩り之1~

「というわけで、今日はきのこ狩りです」 「おー!」 今日は寺の妖達総出できのこ狩り。連日の雨もやみ、お日様が山の斜面を鮮やかに照らしていた。 「黒之助、どちらが多く採ってこれるか勝負だ!」 「太郎よ、望む所だ!吠え面をかかせてくれるわ」 狼と烏…

第十六話~姫様、落ち込む~

はあ、っというため息を一つ。 見ている妖達も渋い顔。 姫様は静かに箸を置いた。 「もういいんですか?」 葉子が訊く。目の前の料理はあまり減っているようには見えない。 「ええ」 「昨日のお団子がまだ残ってますけど」 どうです?と一応訊いてみる。答え…

あやかし姫番外編~酒呑童子2~

一瞬、視界から酒呑の姿が消えた。 景色が動いていく。下に、下に。 声が、でない。 急に落下が止まる。髪を引っ張られている感覚。 上に、上に。 目と鼻の先に酒呑童子の顔があった。 それは、その美男子ぶりを誉め讃えられる黒夜叉の知る顔ではなかった。 …

あやかし姫番外編~酒呑童子1~

大江山の鬼ヶ城。 鬼達の主たる酒呑童子は、目の前の人物をただ静かに眺めていた。 「どういうつもりだ、黒夜叉」 「どういうつもりだとは?」 黒衣の男はやれやれと。 それは王に対する態度ではない。 今までの従順な姿が嘘のようであった。 「都を・・・・…

第十五話(2)~父、かえる~

「いやはや、場所ぐらい先に言ってくれ」 「ぬしがさきさきいくからじゃろう」 「おう朱桜、これもうまいぞ」 膝の上に乗せた娘に菓子を薦める。居間は酒呑が持ってきた京の菓子でいっぱいに。 「人の話を最後まで・・・・・・」 「どうだ、朱桜。ここは楽し…

第十五話(1)~父、きたる~

朱桜が古寺に来て一ヶ月あまり。 今日もいつもと変わりない、のどかな一日を送る・・・・・・はずだった。 姫様と朱桜のゆっくりとした昼食。 その片付けを終え、昼寝でもしようかと三人で布団を敷き直していたときのこと。 「どうかしましたか」 急に朱桜が…

第十四話~金の瞳と銀の瞳~

ああ、俺今どこにいんのかな・・・・・・ あれから・・・・・・群れから離れてどれぐらいたったんだろ。 親父におふくろ、元気にしてるかな・・・・・・ ったく、身体が動き辛いよ。怪我・・・・・・直りきってないもんな。 あいつ、結構強かったんだな。も…

第十三話 ~今宵は十五夜~

うむ、今日は十五夜お月様の日だ。 姫さんは団子を買いに行った。葉子殿と朱桜殿と沙羅殿と一緒にだ。沙羅殿は頭巾かけっぱなしなのだが怪しまれないだろうか。本人は大丈夫だと言っていたが・・・・・・確実に怪しまれるだろうな。もう少し格好を考えてほし…

第十二話 ~三匹で会合~

お昼下がり。古寺の茶の間で、いつもの妖三匹が、各々好きな食べ物を持って、ぺちゃくちゃぺちゃくちゃおしゃべりをしていた。 「三人だけで話すのも久しぶりだね」 銀狐である葉子。大量のおあげの入った皿に手を伸ばしつつ。 「いや本当に本当に」 妖狼太…

第十一話(2)~三人と団子と小さな声~

「できた!」 「やっと終わった・・・・・・」 ぐて~と机に頭領がうつ伏せになる。結構な時間がたっていた。もう、日も昇りきっているだろう。 「じゃあ、さっそく配りにいきましょう」 「と、とりあえず、昼食をとってからでも」 慌てて葉子が言う。 時間…

小説-あやかし姫-第十一話(1)~朝からお札書き~

今日もいつもの古寺のいつもの一室で、妖達が見守るなか、姫様と朱桜が朝食を食べていた。 麦飯、味噌汁、焼き魚、きゅうりの漬け物に冷たいお茶。 ゆっくり食べる姫様と終始無言の朱桜。姫様は食事がかなり遅い。普段は手早く動くのに、食事のときはゆっく…