小説置き場2

山岳に寺社仏閣に両生類に爬虫類に妖怪に三国志にetcetc

プロジェクト

華~参~

女が、女の子の濡れた髪を優しく撫でていた。 「かか様! 濡れた!」 いっぱい濡れた! 「あとで乾かさないとね」 「まだかなー」 「とと様、花火?」 「お、覚えてたか? いい子だなー」 「当たり前なのです! 風華は、楽しみなのです!」 「だよなー。まだ…

華~弐~

「きゃっ」 小さな悲鳴があがった。 女はすぐに足を引っ込め、男の肩に抱きつき、ふるふると震えた。 男は、愛おしむように女の髪を撫でてやる。 それから、女の耳に囁いた。 「ひどくなってないか?」 「……怖いのです」 「見てみろ」 女の子は、波打ち際で…

華~壱~

真夜中。 揺らめく半月を映す海。 揺らめく陸の灯りを映す海。 夏が深まり去りゆこうとし、以前のような暑さはない。 さりとて、涼しいというわけでもない。 二つの季が混じり合い、競り合い。 夏がまだ優勢か。 そんな夜だった。 白い砂浜。 そこに、足跡が…

プロジェクト参加小説~舞い3~

「夢のような話じゃが本当よ」 翁が、また酒を口に注いだ。 雪音は、頭を下げ身じろぎせず黙って聞いていた。 「それからすぐに各地を修行と称して回ったが、似たようなことにはついぞ会わなんだな」 「黒斎様・・・・・・」 雪音が、口を開いた。 「なんじ…

プロジェクト参加小説~舞い2~

「もうし・・・もうし・・・」 「うん?」 「こんなところで寝ていらしては風邪をひいてしまいますよ」 「風邪?」 男が目を開けた。震えが、止まっていた。 「なんだこれは?」 また、吹雪いてきていた。 それなのに、男を中心とした光の小円内には何も降る…

プロジェクト参加小説~舞い~

翁が舞う 白髪が踊る 手に持つ白刃が光を、雪に負けじと反射する 翁は、泣いていた。泣きながら踊っていた それを見ている男も涙を流していた 涙を拭うこともせず、流れるままにしていた 目をしっかりと見開き 一挙一足も見逃すまいと 翁の長い、長い剣舞 そ…