プロジェクト
女が、女の子の濡れた髪を優しく撫でていた。 「かか様! 濡れた!」 いっぱい濡れた! 「あとで乾かさないとね」 「まだかなー」 「とと様、花火?」 「お、覚えてたか? いい子だなー」 「当たり前なのです! 風華は、楽しみなのです!」 「だよなー。まだ…
「きゃっ」 小さな悲鳴があがった。 女はすぐに足を引っ込め、男の肩に抱きつき、ふるふると震えた。 男は、愛おしむように女の髪を撫でてやる。 それから、女の耳に囁いた。 「ひどくなってないか?」 「……怖いのです」 「見てみろ」 女の子は、波打ち際で…
真夜中。 揺らめく半月を映す海。 揺らめく陸の灯りを映す海。 夏が深まり去りゆこうとし、以前のような暑さはない。 さりとて、涼しいというわけでもない。 二つの季が混じり合い、競り合い。 夏がまだ優勢か。 そんな夜だった。 白い砂浜。 そこに、足跡が…
「夢のような話じゃが本当よ」 翁が、また酒を口に注いだ。 雪音は、頭を下げ身じろぎせず黙って聞いていた。 「それからすぐに各地を修行と称して回ったが、似たようなことにはついぞ会わなんだな」 「黒斎様・・・・・・」 雪音が、口を開いた。 「なんじ…
「もうし・・・もうし・・・」 「うん?」 「こんなところで寝ていらしては風邪をひいてしまいますよ」 「風邪?」 男が目を開けた。震えが、止まっていた。 「なんだこれは?」 また、吹雪いてきていた。 それなのに、男を中心とした光の小円内には何も降る…
翁が舞う 白髪が踊る 手に持つ白刃が光を、雪に負けじと反射する 翁は、泣いていた。泣きながら踊っていた それを見ている男も涙を流していた 涙を拭うこともせず、流れるままにしていた 目をしっかりと見開き 一挙一足も見逃すまいと 翁の長い、長い剣舞 そ…