小説置き場2

山岳に寺社仏閣に両生類に爬虫類に妖怪に三国志にetcetc

あやかし姫(1)

小説-あやかし姫-第十話~葉子と頭領~5

「葉子さん」 「木助、葉美」 出口で二人が待っていた。 「どうでしたかお姉様、久しぶりに玉藻様と会われて」 「お変わりない様子で安心したよ」 「世間話でもなさっていたのですか?ずいぶんと長かったような」 「ええ。木助が玉藻様の跡取りになるかもし…

小説-あやかし姫-第十話~葉子と頭領~4

「そなたが八霊殿かえ」 「はい」 葉子と頭領の前には、中央に見えた金色の尾の持ち主、妙齢の美女、玉藻の姿があった。なるほど九尾の一族を束ねていることはあり、その姿には威厳と高い妖気が見てとれる。金の幕で仕切られたそこには、三人しかいなかった…

小説-あやかし姫-第十話~葉子と頭領~3

「お前に妹がいたとはな」 「大分歳が離れていますし、腹違いですけどね」 なんとなく葉子の顔は沈んでいた。 「あの二人夫婦なんですよ」 「そうなのか」 「・・・・・・」 「頭領」 「今は八霊の方が良いじゃろ」 「そうですね、ここじゃあ頭領は玉藻様の…

小説-あやかし姫-第十話~葉子と頭領~2

「すいません、しゃべりすぎちゃって」 「いいよ」 途中から聞き流していたから、とは言わない。もう一度熱く語られそうだから。 「葉子さん!?」 若い男の声。 「また葉子の知り合いかい?」 しかし、葉子の反応は今までのものと違っていた。 「こ、木助?…

小説-あやかし姫-第十話~葉子と頭領~1

「ほれ、着いたぞ」 「つ、着きましたか」 怖々と葉子は目をあける。 今日は葉子の一族の長、玉藻の二千歳の誕生日。 一族の集まりに参加することにした葉子は頭領の鬼馬で行くことに。ただ、頭領の駆る鬼馬の速さは並大抵ではなかった。馬鹿みたいにとばす…

小説-あやかし姫-第十話~(太郎と黒之助)~

「なんで泣きやまないんだよ!」 「わからん」 赤ん坊を抱えた男と隣で腕組みした男。太郎と黒之助はどうしたものかと頭を抱えていた。 本来彩花の世話をするのは葉子の役目。二人は遊んでやりこそすれ、葉子に世話を任せっきりだった。 「なにか悪い病気と…

小説-あやかし姫-第九話

それは昔々の物語。寺に赤ん坊が拾われてしばらくのこと。 庭で花咲くたくさんの煙。色鮮やかに咲くそれは、寺のものには迷惑で。 「なんでこんなに煙が・・・って葉子の仕業だな」 妖狼太郎。金銀妖瞳を持つ妖は、朝早くから煙に燻され。それはそれは不機嫌…

小説-あやかし姫-第八話

朝、古寺の一室は、女性達の声で賑やかで。 「よく似合ってますよ」 「う、うん」 「こういうものはとっておくもんだね」 寺で唯一の人間であり、姫様と慕われる彩花。 その友達でかっぱの子、沙羅。 そして、九尾の狐である葉子。 今三人が目の前にしている…

小説-あやかし姫-第七話~5~

「しかし、いいんですかね」 「いいんじゃないの?」 太郎と黒之助が酒を飲み交わしている。 茨木はその後すぐに帰った。気を利かせたのだろう。 今は皆でどんちゃん騒ぎの真っ最中だった。 頭領が余分に頼んでいたので、料理も酒もまだまだあった。 「どう…

小説-あやかし姫-第七話~4~

「そんな話、聞いたことないぞ」 「そうだろうな」 「詳しく聞かせてもらいたいな」 「聞きたいか?」 「ああ、ぜひ」 今話しているのは頭領と茨木のみ。他の妖達は、ただただ息を飲むばかり。 「相手は人間の女でな、没落貴族の娘だった」 「・・・・・・」…

小説-あやかし姫-第七話~3~

「茨木さん」 姫様の声と、着物をちょいちょいと引っ張られて茨木は我に返った。 視線の先には、青ざめた顔の妖達が。 「ああ、すまんすまん」 「大丈夫ですか、皆さん」 姫様の声にう、うんと返事が返る。とりあえず、大丈夫そうではあった。 「茨木さん!…

小説-あやかし姫-第七話~2~

「あ、あの・・・・・・」 「なんだい、沙羅ちゃん」 「なんでここから近づいちゃ駄目なんですか?」 小さな小さな声でいつもの三人、葉子・太郎・黒之助に話しかける。 今、三人が最も部屋に近く、その後ろに沙羅も含めてたくさんの妖がいる。茨木が来たと…

小説-あやかし姫-第七話~1~

荒っぽい風が吹いた後、寺の前に二人が立っていた。 若いぞっとするような色気を持つ男と、おかっぱ頭の女の子。 まだ小さい女の子は男の袴の裾をぎゅっと握りしめていた。 「ふん、あいかわらずぼろっちいとこだな」 「・・・・・・」 「ひどい言いようじゃ…

小説-あやかし姫-第六話~後編~

「大丈夫、沙羅ちゃん?」 心配したとおり、倒れていたかっぱの子。頭巾で頭を隠していたが、長時間日中にさらされてしまい。皿の水が乾いてしまったのだ。 「だ、大丈夫です」 「ほんとにごめんね」 さっきから姫様ずっと謝りっぱなし。かっぱの皿は命に関…

小説-あやかし姫-第六話~前編~

「そこ、慎重に運んで下さいよ」 山の上のいつもの古寺。そこは朝から慌ただしかった。 「あ~、もう、汚してどうするんですか!」 「ごめんなさい」 「すんません」 「ごめん」 「もう!」 ねじりはちまきをした姫様の不機嫌な顔。目の前には桶の水をこぼし…

小説-あやかし姫-第五話~後編~

「そういうわけなんです」 二人は赤ん坊が木の根本にいたこと、周りに人がいなかったことを話す。 黙って頭領は聞いていた。 「妙だな」 黒之助が口を開いた。 「妙?」 「その場所からここまでけっこうな距離がある。しかもこの雨の中だ」 「あっ」 妖達が…

小説-あやかし姫-第五話~前編~

雨の中の古寺。真夜中だというのに明かりがこうこうと。 明かりが漏れる一室に、妖達が集まっていた。 部屋の一段高いところに、着物姿の老人が。 難しそうな本を読んでおり、その姿には威厳がある。 その隣に山伏姿の若い男。 老人と同じ本を読んでいるが、…

小説-あやかし姫-第四話~後編~

「皆、楽しそうですね」 「そうですな」 浮いている姫様。 周りには烏が一羽のみ。 他は、皆思い思いに遊んでいる。特に葉子と太郎の暴れっぷりは凄まじい。 きゃきゃっきゃきゃっと水をかけたり放り投げたり。 「さてと」 「あがりますか?」 「すいかも良…

小説-あやかし姫-第四話~前編~

「暑いですね~」 「うん」 今日もいつもの縁側で、姫様達が暑さをしのいでいる。 「ここはましな方なんでしょうけど・・・・・」 葉子に懐いたかみなり様。 ちょくちょく雨を降らせに来てくれるのだ。 「水~」 「水~」 「はいはい」 庭に落ちてる妖達。 …

小説-あやかし姫-第三話~(裏)~

「ねえねえ、おいらにも仕事やらせてくれよ!」 「駄目!」 ここは雲の上。鬼の一族、かみなり様が住まう場所。ここで親子が口げんか。 「いいじゃん、雨降らせて雷鳴らすだけだろ?おいらにもやれるって!」 「光はまだ幼すぎるよ。もう少し、我慢しな。ね…

小説-あやかし姫-第三話

「あつい~」 「あつい」 「あつ」 「あ」 口々に叫ぶ妖達。夏真っ盛り。 「・・・暑いですね」 「さすがにこう暑いとやんなっちゃうね」 「そうだな」 縁側に腰掛けて足をぶらぶらさせる彩花と葉子と太郎。庭に部屋に暑さにへばった妖達がぐて~と落ちてい…

小説-あやかし姫-第二話

古寺に起こる一陣の風。巻き起こすは烏天狗。古寺はガタガタ揺れていた。 「なにやってるんですか・・・?」 庭に顔だす怒り雛。不機嫌きわまりない顔である。 「おお、姫さん。いや、身体を動かさないとなまって・・」 「クロさん、探してきて下さいね?」 …

小説-あやかし姫-第一話

ちょっと飽きてきたんで違う話でも書いてみるです。 決して詰まったのではない、そう、多分・・・ んじゃあ、あやかし姫始まり始まり・・・・・・ 昔々、人と妖怪が混じりあって生きていた時代・・・・・・ とある山に人の子が捨てられていました・・・・・…