小説置き場2

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シン・ゴジラ感想

傑作。

一回目の鑑賞、その翌日に劇場へ足を運び2回目(4DX)を観てしまう、正しくガルパン以来の衝撃である。

日本でしか撮れない、空想特撮映画の正当な後継者。

あの東北大震災を経たこの国でしか観れない、日本のゴジラである。

庵野監督のこだわりが随所に発揮され(音楽の好みが一緒、生粋の特撮好きだもんね)

樋口特撮監督の画作りの冴えが光り(進〇の巨人との落差よ。画作りはぴか一なんだって)

伊福部BGMに鷲頭BGMという、涙ぐんでしまうやろな音楽。
ゴジラ」「キングコング対ゴジラ」「メカゴジラの逆襲」「宇宙大戦争」「三大怪獣地球最大の決戦」「怪獣大戦争」「ゴジラVSメカゴジラ

映画館で観れて良かった。

1994年版のゴジラVSメカゴジラのメインテーマがEDで流れた時は……これ、リアルタイムで劇場で観たんだよなぁ。また聴けることができるだなんて

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―日本対虚構―

そのキャッチコピーに偽りはなく、映画はゴジラという未曽有の災厄と、それに対する日本の在り様を軸に描いている。

第一作目、「ゴジラ」が作られたのが、戦後の傷跡を引きずる1954年。

東北大震災、さらに熊本地震の記憶も生々しい今、公開に至ったシン・ゴジラ

ギャレム版には欠けていた、荒神としての性が、強く描かれていく。

移動するだけで、街は毀れる。船が河を逆流する。サーベイメーターの値が上昇する。

アクアラインが、品川が、鎌倉が破壊されていく。

そして、

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放射熱線。

移動するだけだったゴジラが、明確な殺意を露わにする。

ゴジラの必殺技の代名詞、放射熱線に、これほど絶望を覚えるとは。

そして、これほど美しいと思うことになるとは。

八百万の神々を奉り、神仏習合をも成し遂げる、この国の神の鎮魂歌であろう。




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災厄に翻弄される内閣府という巨大な組織。

出世から逸れたはぐれ者・問題児・おたく等々で構成された巨災対

巨大であり重鈍――会議に踊る、だが、現実にどこかで見てしまったその絵面。

そして……徹夜のカップヌードルエヴァの音楽。

これは、プロジェクトX……ごほんごほん。

進化の頂点とも称される存在、それに対する個々の頑張り――意思決定からの結果までの、詳細な描写。

数多の会議にカットで映る凄まじい情報量、一回見ただけではよくわからないのも確か。とにかく、詰め込み過ぎなのだ。この衒学、京極好きにはとても心地良いし、そう、庵野監督はそういう作品をとってきたじゃないか! だから、何も問題はない!

ここで描かれる人物達は、皆が仕事をしている。

328人のキャスティングはそのためだったのかと。

駄目な映画は、そう、大変な状況そっちのけで身内の世界にどっぷり漬かり、興ざめしてしまうのだけれど、この映画には職人しかいない。

だから、会話劇(会議劇?)がだれない。だって、必要だから。駄目だったのが例の進撃の巨人ね。

海外からの圧力――滅却の炎に抗し、日本として取り得る最後の手段ヤシオリ作戦

化学工場、新幹線(!)、在来線(!)、高層ビル、自衛隊、米軍、政治家――官民の力の結集、その背景にかかるのは、故伊福部先生の宇宙大戦争

泣きそうだった。

VSシリーズの次に、昭和チャンピオン祭りのゴジラが好きなんだよ。

空想特撮映画が好きなんだよ。

もう何回か、見に行くかもしれない。

ジ・アート・オブ・シン・ゴジラも買うだろう。この特撮技術の集積、裏側を知りたいに決まってる。

これが、観たかったゴジラだ。