シン・ゴジラ感想
傑作。
一回目の鑑賞、その翌日に劇場へ足を運び2回目(4DX)を観てしまう、正しくガルパン以来の衝撃である。
日本でしか撮れない、空想特撮映画の正当な後継者。
あの東北大震災を経たこの国でしか観れない、日本のゴジラである。
庵野監督のこだわりが随所に発揮され(音楽の好みが一緒、生粋の特撮好きだもんね)
樋口特撮監督の画作りの冴えが光り(進〇の巨人との落差よ。画作りはぴか一なんだって)
伊福部BGMに鷲頭BGMという、涙ぐんでしまうやろな音楽。
映画館で観れて良かった。
―日本対虚構―
そのキャッチコピーに偽りはなく、映画はゴジラという未曽有の災厄と、それに対する日本の在り様を軸に描いている。
第一作目、「ゴジラ」が作られたのが、戦後の傷跡を引きずる1954年。
ギャレム版には欠けていた、荒神としての性が、強く描かれていく。
移動するだけで、街は毀れる。船が河を逆流する。サーベイメーターの値が上昇する。
アクアラインが、品川が、鎌倉が破壊されていく。
そして、
放射熱線。
移動するだけだったゴジラが、明確な殺意を露わにする。
ゴジラの必殺技の代名詞、放射熱線に、これほど絶望を覚えるとは。
そして、これほど美しいと思うことになるとは。
災厄に翻弄される内閣府という巨大な組織。
出世から逸れたはぐれ者・問題児・おたく等々で構成された巨災対。
巨大であり重鈍――会議に踊る、だが、現実にどこかで見てしまったその絵面。
これは、プロジェクトX……ごほんごほん。
進化の頂点とも称される存在、それに対する個々の頑張り――意思決定からの結果までの、詳細な描写。
数多の会議にカットで映る凄まじい情報量、一回見ただけではよくわからないのも確か。とにかく、詰め込み過ぎなのだ。この衒学、京極好きにはとても心地良いし、そう、庵野監督はそういう作品をとってきたじゃないか! だから、何も問題はない!
ここで描かれる人物達は、皆が仕事をしている。
328人のキャスティングはそのためだったのかと。
駄目な映画は、そう、大変な状況そっちのけで身内の世界にどっぷり漬かり、興ざめしてしまうのだけれど、この映画には職人しかいない。
だから、会話劇(会議劇?)がだれない。だって、必要だから。駄目だったのが例の進撃の巨人ね。
海外からの圧力――滅却の炎に抗し、日本として取り得る最後の手段ヤシオリ作戦。
泣きそうだった。
VSシリーズの次に、昭和チャンピオン祭りのゴジラが好きなんだよ。
空想特撮映画が好きなんだよ。
もう何回か、見に行くかもしれない。
ジ・アート・オブ・シン・ゴジラも買うだろう。この特撮技術の集積、裏側を知りたいに決まってる。
これが、観たかったゴジラだ。