あやかし姫~帰ってくるもの、こないもの~
「・・・」
なんだろう・・・なんで、にやにや笑ってるの?
「玉藻様・・・どうしました?」
「い~や、何にもないよ。なあ木助」
木助もいたのか。
いるよね、あの子が、私に挨拶しないわけないもんね。
「ええ」
木助もにやにや笑ってる・・・・・・
二人とも葉美がくれたおあげを見てる?
「このおあげがどうかしました?」
「言っていいのでしょうか?」
木助が、玉藻様に聞いた。
「いいさ、いいさ、駄目ならあの子が先に私たちに注意してるだろうからね」
「じゃあ・・・・・・それ、葉美が作ったんだ」
「大変だったんだよ、あの子がそれ作るの」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
それは、・・・・・・そっか。
「葉美が、作ってくれたんだ・・・」
「ああ」
「はい」
あの子が・・・
子供が、泥んこ遊び。
葉子は木の上から夢中になって遊ぶ二人を見ていた。
「まあまあ、最初はどうなることかと思ったけど・・・」
なかなかどうして、・・・・・・
「姉様、姉様」
「どうしたい、葉美?」
ひらりと舞い降りる。
人の姿で、しっぽは残して。
ゆらりと銀毛の九尾がくねった。
「姉様、おあげ作ったの」
女の子が言う。
泥だらけの手を葉子に突き出す。
「・・・・・・ああ、おあげね。ありがとう」
女が答えた。
葉子が、「おあげ」を受け取る。
葉美は、嬉しそうで。
葉子も嬉しそうに。
「大事に、食べよう・・・」
「葉子さん、嬉しいことでもあったの?」
「・・・あったよ」
「ほう」
九尾の銀狐は獣の姿で帰ってきた。
狐火あげて、口になにかをくわえていて。
「あった・・・あったさ・・・」
「これは?ああ、いつものか」
黒之助が葉子が口にくわえているものを。
「ちょっと、違うね」
ちょっと・・・ね。
「これは絶~対にあげないからね。クロちゃんは?そっちはどうだった?」
「うむ・・・・・・皆元気そうだったな」
そうそう、これおみやげと黒之助が姫様に手渡す。
「羽?」
「はね?」
「大天狗様の羽だ」
「はあ・・・」
烏の羽に見える。
心持ち、大きい?
「なにさこれ?」
「すごいもんなんだぞ!」
クロさんが言うなら、すごいのかな。
「あとは、太郎さんか・・・」
「太郎・・・」
「あの馬鹿犬か・・・」
二人が、押し黙った。
姫様が、続ける。
「ねえ、葉子さん、クロさん。太郎さん、どこにいったの?」
姫様が二人に言った。
「・・・・・・さあ」
「拙者も・・・」
二人には心当たりがないようで。
「・・・・・・太郎さん、帰ってくるよね」
「・・・・・・え、ええ。ねえクロちゃん」
「あ、ああ・・・」
「俺は・・・・・・いくとこないな。この寺で一生暮らすのかな」
あのときの太郎の言葉が二人の胸に蘇っていた。
「ねえ・・・・・・帰ってくるよね」
二人とも答えなかった。
姫様は、月が消え、日が現れても待っていた。
ずっと、寝ずに起きていた。
葉子と黒之助と一緒に待っていた。
金銀妖瞳の妖狼は、その姿を見せなかった。
ずっと、
待っていたのに、
他の妖達は戻ってきたのに。
太郎は、その姿を見せなかった。
なんだろう・・・なんで、にやにや笑ってるの?
「玉藻様・・・どうしました?」
「い~や、何にもないよ。なあ木助」
木助もいたのか。
いるよね、あの子が、私に挨拶しないわけないもんね。
「ええ」
木助もにやにや笑ってる・・・・・・
二人とも葉美がくれたおあげを見てる?
「このおあげがどうかしました?」
「言っていいのでしょうか?」
木助が、玉藻様に聞いた。
「いいさ、いいさ、駄目ならあの子が先に私たちに注意してるだろうからね」
「じゃあ・・・・・・それ、葉美が作ったんだ」
「大変だったんだよ、あの子がそれ作るの」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
それは、・・・・・・そっか。
「葉美が、作ってくれたんだ・・・」
「ああ」
「はい」
あの子が・・・
子供が、泥んこ遊び。
葉子は木の上から夢中になって遊ぶ二人を見ていた。
「まあまあ、最初はどうなることかと思ったけど・・・」
なかなかどうして、・・・・・・
「姉様、姉様」
「どうしたい、葉美?」
ひらりと舞い降りる。
人の姿で、しっぽは残して。
ゆらりと銀毛の九尾がくねった。
「姉様、おあげ作ったの」
女の子が言う。
泥だらけの手を葉子に突き出す。
「・・・・・・ああ、おあげね。ありがとう」
女が答えた。
葉子が、「おあげ」を受け取る。
葉美は、嬉しそうで。
葉子も嬉しそうに。
「大事に、食べよう・・・」
「葉子さん、嬉しいことでもあったの?」
「・・・あったよ」
「ほう」
九尾の銀狐は獣の姿で帰ってきた。
狐火あげて、口になにかをくわえていて。
「あった・・・あったさ・・・」
「これは?ああ、いつものか」
黒之助が葉子が口にくわえているものを。
「ちょっと、違うね」
ちょっと・・・ね。
「これは絶~対にあげないからね。クロちゃんは?そっちはどうだった?」
「うむ・・・・・・皆元気そうだったな」
そうそう、これおみやげと黒之助が姫様に手渡す。
「羽?」
「はね?」
「大天狗様の羽だ」
「はあ・・・」
烏の羽に見える。
心持ち、大きい?
「なにさこれ?」
「すごいもんなんだぞ!」
クロさんが言うなら、すごいのかな。
「あとは、太郎さんか・・・」
「太郎・・・」
「あの馬鹿犬か・・・」
二人が、押し黙った。
姫様が、続ける。
「ねえ、葉子さん、クロさん。太郎さん、どこにいったの?」
姫様が二人に言った。
「・・・・・・さあ」
「拙者も・・・」
二人には心当たりがないようで。
「・・・・・・太郎さん、帰ってくるよね」
「・・・・・・え、ええ。ねえクロちゃん」
「あ、ああ・・・」
「俺は・・・・・・いくとこないな。この寺で一生暮らすのかな」
あのときの太郎の言葉が二人の胸に蘇っていた。
「ねえ・・・・・・帰ってくるよね」
二人とも答えなかった。
姫様は、月が消え、日が現れても待っていた。
ずっと、寝ずに起きていた。
葉子と黒之助と一緒に待っていた。
金銀妖瞳の妖狼は、その姿を見せなかった。
ずっと、
待っていたのに、
他の妖達は戻ってきたのに。
太郎は、その姿を見せなかった。