あやかし姫~狐の、姉妹~
遠き大陸の、遠い祖先に玉藻御前が歌を捧げる。
段々と、人の姿が解けていく。
玉藻御前の本性、巨大な九尾の狐が現れる。
銀毛の尾が五、金毛の尾が四。
大狐の甲高い声。
黙って、それを聞く。
長い、哀しい歌が終わったとき、儀式は終わる。
大陸の、祖先。
私は、大陸のことを知らない。
誰も、一族の誰も大陸のことを知らない。
玉藻様しか、知らない。
玉藻様が大陸のことを話したことはなかった。
「終わりましたわ」
「え?」
歌は、もう聞こえてこない。
既に、仲間達も少なくなっている。
玉藻御前は海を見つめていた。
人の姿に戻っていた。
背中がもの悲しく見えた。
「葉美・・・」
妹が、話しかけてきたのだ。
「お久しぶりです、姉様。お元気そうで」
なにより、ですわ。
「葉美も、元気そうだね」
「おかげさまで。お姉様は相変わらずあのボロ寺に?」
ボロ寺、か。
「ああ、あのボロ寺にいるよ」
「もったいないことですわ、姉様ほどの妖があのような・・・人間風情に」
「葉美?」
彩花ちゃんのこと?と聞いた。
「失礼・・・。ですが・・・」
「あたいは、好きであそこにいるんだ」
「そうですわね・・・・・・」
姉様は、そういう方だ。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「ここに戻ってくる気は、ないんでしょう?何度も申し上げていますが・・・」
「まだ、ね・・・・・・」
「戻ってくるのを、楽しみにしておきますわ」
言葉通りに、受け取っておこう。
「うん」
「もう、お帰りになられるのですか?」
今から帰れば、夜には着くよね。
「うん」
「そうですか。これ、もっていって下さい」
笹の葉で包んだ、おあげ。
最近は、ずっと同じところのだ。
もらえるだけ、いいのかな。
「じゃあ、私はこれで。まだ色々と仕事はありますので」
ああ、一族の宴があるのか、大変だよね。あたいと違って。
あれ?
なんで葉美が顔を赤らめるの?
「・・・・・・変なの」
あんな葉美の顔、いつ以来だろう・・・
「玉藻様に挨拶してこようか・・・」
段々と、人の姿が解けていく。
玉藻御前の本性、巨大な九尾の狐が現れる。
銀毛の尾が五、金毛の尾が四。
大狐の甲高い声。
黙って、それを聞く。
長い、哀しい歌が終わったとき、儀式は終わる。
大陸の、祖先。
私は、大陸のことを知らない。
誰も、一族の誰も大陸のことを知らない。
玉藻様しか、知らない。
玉藻様が大陸のことを話したことはなかった。
「終わりましたわ」
「え?」
歌は、もう聞こえてこない。
既に、仲間達も少なくなっている。
玉藻御前は海を見つめていた。
人の姿に戻っていた。
背中がもの悲しく見えた。
「葉美・・・」
妹が、話しかけてきたのだ。
「お久しぶりです、姉様。お元気そうで」
なにより、ですわ。
「葉美も、元気そうだね」
「おかげさまで。お姉様は相変わらずあのボロ寺に?」
ボロ寺、か。
「ああ、あのボロ寺にいるよ」
「もったいないことですわ、姉様ほどの妖があのような・・・人間風情に」
「葉美?」
彩花ちゃんのこと?と聞いた。
「失礼・・・。ですが・・・」
「あたいは、好きであそこにいるんだ」
「そうですわね・・・・・・」
姉様は、そういう方だ。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「ここに戻ってくる気は、ないんでしょう?何度も申し上げていますが・・・」
「まだ、ね・・・・・・」
「戻ってくるのを、楽しみにしておきますわ」
言葉通りに、受け取っておこう。
「うん」
「もう、お帰りになられるのですか?」
今から帰れば、夜には着くよね。
「うん」
「そうですか。これ、もっていって下さい」
笹の葉で包んだ、おあげ。
最近は、ずっと同じところのだ。
もらえるだけ、いいのかな。
「じゃあ、私はこれで。まだ色々と仕事はありますので」
ああ、一族の宴があるのか、大変だよね。あたいと違って。
あれ?
なんで葉美が顔を赤らめるの?
「・・・・・・変なの」
あんな葉美の顔、いつ以来だろう・・・
「玉藻様に挨拶してこようか・・・」