小説置き場2

山岳に寺社仏閣に両生類に爬虫類に妖怪に三国志にetcetc

始まりの終わり

陳到お姉さん……怖いよ……」

趙雲、大丈夫だから、大丈夫だから……」

「うおおおお! 呂布!!!」

曹操の、憂いを断つ! その首、よこせ!」

 関羽夏侯惇

 二人で呂布に挑む

 関羽の青龍偃月刀と、夏侯惇の大太刀が唸りをあげる

 さっきの睨み合いとは違い、二人は息の合った動きを見せた

 修羅の形相を見せる二人と対照的に、呂布は狂気の笑みを浮かべたまま、武器すら使わない

 ただ、避けてみせた

「…アア、も、もう、抜ケタか……あ、遊びモ、終ワりか」

 呂布の麾下が、二軍を撃ち抜いた

 夏侯惇は、さらに顔を真っ赤にした

「その余裕、俺が消し去ってやる!」

「無理ダ」

 オマエガ、キエル

 そう、呂布は言った

 そのとき、方天画戟が初めてふるわれた



「ぜえ! ぜえ!」

 夏惇侯の馬は真っ二つになっていた。

 劉備が、呂布が方天画戟を振り上げたときに夏惇侯を馬から突き飛ばしたのだ

 三つの影が、それを追おうとした呂布を遮った

劉備!」

「ぜえ! 夏侯惇どん! 早く逃げよう! 勝てるわけないんだ!」

「離せ!」

 視界の端に、関羽陳到、李典が戦姫に向かっていくのが見えた

「あんたは、大将なんだ! しっかりしろ! 高順の軍も動いたんだぞ!」

 高順の、軍。それが、夏惇侯を落ち着かせた

「ぐ………全軍……退け……退け、退け!」

 けら、ケラケラケラ

 呂布の、笑い。夏惇侯の耳に残った

 

 呂布軍は、追い討ちに追い討ちを重ねた

 その先頭には、武神の姿

 徐州を抜け出たとき、兵の数は二千を割り込んでいた

「負けた……」

「負けましたね……」

 冷静で手先の器用な副将。自分を助けるためにあの女に立ち向かったのだ

 無事な姿を見て、夏侯惇は涙を流した

「たったの、これだけ……」

 張飛は、合流して愕然とした。生き残った兵の少なさに

 夏侯惇の兵は、さらに少なかった

 それでも、劉備も、関羽も、陳到も、趙雲

 城に残していた劉備の家族、文官達とも、生きて会う事が出来た

「兄者……」

 陳到が、横になった趙雲の手を握っている

 関羽は、立ったまま眠っていた

 張飛は、疲れ果て、横になっていた劉備の元にいった

「見誤った……張飛は、そう思うかい?」

「……うん」

「強すぎる、ね」

 劉備が、空虚な笑みを浮かべた
 


「負けたか……」

「派手に負けられましたな」

「夏惇侯らしい、ともいえるな。生きていてくれてよかったよ荀彧」

「殿、予定通りに?」

「ああ」

 原野を埋め尽くす曹の旗

 曹操自ら、全軍を率いての出陣である

 許楮、典韋曹昂夏侯淵曹仁曹洪于禁徐晃楽進、李通、荀彧、荀攸郭嘉、程昱

 そして、敗軍の将、夏惇侯、李典

 劉備一党

 同時刻、呂布も全軍を率いて、動き始めていた

 決着を、つける

 それだけを、二人は考えていた