小説置き場2

山岳に寺社仏閣に両生類に爬虫類に妖怪に三国志にetcetc

愉快な呂布一家~お肉なお祭り(終)~

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馬岱「……馬というのは……」

魏延「馬?」

馬岱「仲良く座って、ニンジンを網で焼くことが出来る生き物なのだろうか……」

 馬超の従兄弟、馬岱。その目の前で、わくわくしている呂布の愛馬赤兎と、張遼の愛馬黒捷。

 何度も、目を擦る。目に映る光景は、変わらなかった。

魏延「何かおかしいことが?」

 おかしいだろうがと怒声をあげそうになり、魏延の純粋なにこにこ顔に押しとどめられて。

 この幼い笑みに、馬岱は弱かった。つい、ぎゅっとしたくなってしまう。

 駄目駄目と、胸の中で首を振る。

 なにせ自分には、親愛なる兄上がいるのだからと。

馬岱「そ、そうだな。私の勘違いだ」

魏延「へへ」

 見ていて、飽きないなぁ。

 実際、飽きなかったし。

魏延「フエフエフエー(どうしてほっぺをつねるんですかー(泣」

馬岱「……何となくだ」

 涙目の魏延の皿に、焼けたぞとエビを載せてあげた。

 

雛「ふふ、楽しいです」

 嬉しそうに、儚さを感じさせる笑みを振りまく雛。
 
 これでも、随分とましになったのだ。

張繍「そうですか! 雛さまに喜んでもらえて嬉しいです!」

 うわずった声であった。

 まだ、初々しさが残る二人。それでも……少しずつ、歩み寄って。

 一歩一歩、歩み寄って。

胡車児「つーたって、張繍様何にもしてないじゃないいっっすっっかあああ(怒」

賈詡「そうだそうだ。やったのは我々だい(クスンクスン」

 怒り上戸に泣き上戸。二人、完全に酔っていた。

張繍「そ、そうだな……」

雛「ふふふ……」

張繍「……雛さま、その、二人っきりになれるところへ……」

胡車児「ヒューヒュー!(怒り」

賈詡「ヒューヒュー(泣き」

張繍「……さ、さあ」

雛「ふふふふふふ……うふふふふふふ……(嗤い」

張繍「あ」

 酔って、いた。

 笑い上戸、登・場。

雛「じゃんじゃん持ってこーい!!!」

 普段は物静かだが、以外と酒に飲まれる方だったりして。



呂布「あ! 金魚すくい!」

 はしゃぐ主に、疲れた笑みを見せる。

 今宵の宴。夜店も色々と出されていた。

 肉の仕入れから網や炭の用意から全国から屋台を集めることから兵士の配置まで。

 本当、軍師って職業は大変です。

呂布「ほらほら!」

 金魚に喜ぶなんて、可愛いなぁー。

呂布「すっごく美味しそう! 金魚食べたい!」

 うん、お客さんもご主人も、絶賛引いてますよ。

陳宮「いやぁ……金魚は食べるもんじゃないかと」

呂布「じゃあ、いらない」

 ぷい。ぷんすかぷんすか。

 基本、お花よりお団子な呂布さんである。

陳宮「はは……私達も、早く食事を取りましょうか」

呂布「うん!」

 もりもり食う。本当、もりもり。

 いったい、どこに入るのかというぐらい、もりもり食べる。肉ばかり。

 野菜もというと、ブンブン首を振る。

 私はいいから、陳宮にあげると。

 貂蝉さまが怒りますというと、泣きそうになりながらちょっぴり食べていた。

呂布「本当に、お疲れね、陳宮

 肩叩くよ。とんとん。

陳宮「あ、ありがとうございます」

 じんわりとくるものがあった。それから、呂布さんに叩かれてこのやわな身体は無事でいられるのかという恐怖が襲った。

 うわぁ。

 こ、断れない。こんな笑みで来られたら……

 ああ、ここで死ぬるなら、それこそ本望……

呂布「えい」

 ぽむぽむ。

 あれ? お上手?

 柔らかな力使いが、これまた絶品。

 肩から全身に、心地よさが広がっていく。

呂布「どう?」

陳宮「はぁ。安らぎます」

 本当に。

呂布「母様にも、よく褒めてもらったんだ」

 へー。なるほど、なるほど。

呂布「今日が過ぎたら、また、戦」

 こりこり。

呂布「まだまだ……私のわがままにつきあってね」

陳宮「どこまでも」

 その笑みが、あるところならば。

 ~お終い~