小説置き場2

山岳に寺社仏閣に両生類に爬虫類に妖怪に三国志にetcetc

愉快な呂布一家~お肉なお祭り(1)~

呂布「というわけで……」

 西涼の地。戦が終わり、覇権が移り、平和が戻った。

 おそらく、束の間の。

 戦勝者たる呂布の目は、すでに董狼姫に向けられている。

 怨を、憎を、込めながら。

 それでも……

 今宵は、確かに、平和であった。

 かって敵味方として争った兵達が、原野にひしめき合う。

 今か今かと、壇上の戦姫の言葉を待つ。

 皆、見えない鎖で繋がれていた。

 解き放たれるのを、待っていた。

呂布「今日は、大々大々大々バーベキューパーティーです!!!」

 地鳴り。兵達のざわめきが、地を震わせた。

 全ての眼は、一人の少女に向けられている。

 方天画戟を掲げると、

呂布「……食べるぞぉ!!!」

 小さな身体で、大きな声を上げた。

呂布軍「「「グォォォォォオオオオオ!!!!!!」」」 

 歓喜とも怒声ともとれる、十万の咆吼。

 大地に、空に、消えていった。

 後に残るは……餓狼達。

 一斉に肉が焼かれ、酒が注がれ始めた。

 夜店の明かりも、次々と。祭りの様相を示していて。

呂布「ふう……」

 一息。壇上から降りる。

 ちなみに、この時代にバーベキューがあるのかという野暮な質問をしてはいけない。

 呂布さんとの約束だぞ!

貂蝉「お疲れ様です」

呂布「うん!」

 義姉の顔を満面の笑みで見上げると、貂蝉が大事に抱える赤子の頭を、よしよしと撫でた。

呂布「良い子良い子ー。でも、凄いよね! 二晩で準備できるなんて!」

 きっかけは些細なこと。呂布さんが、焼き肉したいと言ったから。

 それを、この一大プロジェクトに膨らませたのは……

貂蝉「まず、陳宮さんに労いの声をかけないといけませんわね」

 穏やかに、笑む。その表情は、以前と比べると鋭さが消え、丸みが表れていた。

呂布「そうだね……陳宮……陳宮ー!」

陳宮「こ、ここです……」

呂布「ありがとう!」

陳宮「お褒めに預かり……光栄です……」

 ひょろひょろの軍師。さすがに、きつかったらしい。

 無理もない。その仕事のこなしは、まさに鬼神の如しであったのだから。

 膨大な量を迅速にこなしていく。

 それは、貂蝉や賈詡が舌を巻くほどであった。

 ひとえに、筋肉馬鹿……脳細胞も筋肉……戦専門な呂布軍が、きちんと組織として成り立っているのは、この人がいるからなのだ。

 無茶な願いもなんのその、全ては……一人のためにである。

陳宮「はぁ……呂布様、綺麗なお花畑が……」

 眼を、閉じる。

 軍師、死す。また一つ、乱世に星が流れた――

呂布「死、死んじゃヤダー!!!」



臧覇「おいおい、うちの軍師殿、大丈夫かよ?」

 元山賊がおいおいと、あむあむ、肉を平らげながら。

 酒には、手をつけない。未成年だからだ。

 不良ぶっても、根は真面目なのだ。

 代わりに、100%リンゴジュースですませていた。

 こら、そこ、そんな質問をかくかくしかじか……

張遼「ホヒャ? ホヒュルホヒュル。フハイキョェフハイキョェ」

 呂布の義妹である、張遼

 青龍刀で突き刺した肉を口にせっせとせっせと詰め込み、言ってることは理解不明

 臧覇、お手上げの仕草をしつつ……

臧覇「食いながら喋るなよ、ったく。お前さんはうちの№2なんだからよぉ……いつまでもそんなガキっぽいことやってちゃあ駄目だぜ」

 リンゴジュースをストローで飲みつつ、焼きナスを自分の側から避けながら言われると……結構、説得力がでないものである。

馬休「フシュルルフシュルル」

馬鉄「プハープハー」

 馬超の双子の弟、馬鉄・馬休。こちらも口に目一杯頬張り、言ってることは意味不明。

 とりあえず、張遼に何か言っているよう。

 首を傾げ、ごくんと飲み込むと、

張遼「何々?」

 っと二人に。

??「お前ら、ちゃんと噛んでから物言え」

 ポンポンと、双子の軽く頭を叩く。
 
 うあーいと、嬉しそうな返事。嬉しいだろう。

 彼らの知っている、尊敬する男が、戻ってきたのだから……

 涼しげな眼差しの男が一人。鷹の羽を、翻しながら。

 馬超、であった。

張遼馬超さん! いっぱい取ってる!」

馬超「ああ。先に取っておかないと、残らないからな」

臧覇「さすがに、用意がいいねぇ。西涼のお坊ちゃんは」

馬超「まあ、な。どこぞの山賊崩れは、備えって言葉を知らないだろう」

 険悪な空気。二人はそりが合わなかった。

 不思議と、張遼馬超張遼臧覇は合うものがあって。

馬超「しかし……」

臧覇「うん?」




高順「戦、完全には終わっていなかったような……まだ、締めが」

貂蝉「嫌ですわ、高順さま。戦は終わったのですよ」

 呂布軍の重臣夫妻が話をしていた。呂布は、陳宮とどこかへお出かけ。

 一方はにこやかに、片方は鼻の上に青筋たてて見送った。

 三人の赤子を抱き、おんぶする貂蝉があーんと口を開き、高順が焼きたてキャベツをはいどうぞっと。

高順「しかしなぁ……我々の話は愉快な呂布一家~錦馬超の選択(2)~から」

貂蝉「そのようなこと、些細なことです」

 コキ、コキ。拳が、鳴った。

高順「……」

 頷く顔に、青みがかかる。

 納得したわけではない。

 が。

 怖かった。どこまでいっても、妻に頭があがらない高順であった。
 
 しょうがない。相手は、呂布軍第二位の武の持ち主なのだから。

 ちなみに、続きは……そのうち^^

貂蝉「さ、高順さま。この子達を、よろしくお願いします」

高順「?」

貂蝉「はい、あーんして」

 顔を赤くしながら、貂蝉が箸を。本当に、仲睦まじい夫婦であった。