学園あやかし姫の八!
「火羅」
何? と、火羅は首を傾げた。
目の前では彩華が、襦袢姿で胡座を掻いているようだ。
世界が霞がかっていて、我が侭な友人は薄ぼんやりしていた。
貧弱な胸が見え隠れし、蒼白い鎖骨が堂々と。
はしたないわと火羅が言うと、彩華はいつものようにけらけらと嗤った。
「ふん、どうということもないわ」
彩華はいつもきちんと服を着ていた。着崩した姿は滅多にない。
私には、露出が多い姿ばかりさせるのに。
スタイルが悪いと彩花は悩んでいた。
彩華は知らない。双子ではある。
目の前の彩華は、薄着を乱していた。
こんな姿は、見たことがなかった。
「そんなことよりもなぁ、そなたに教えたいことがあるのよ」
何だろうと火羅は身構えた。
この彩華の顔から察するに、ろくな事は言わないだろう。
どうせまた、私を弄ぶ算段に違いない。
それとも……弄んだ後とか?
え、事後? だから薄着?
そういえば、肌がすーすーする。
あれ、真っ裸? 自己責任?
ど、どうするの?
彩花さん、妹になっちゃうの?
け、権力闘争? 跡継ぎ争い?
貧乏人風情がと、苛められちゃう?
「指に埃がついたさよ、火羅さん。全く、お客様をお迎えするというのに、これじゃあ困るさねぇ」
「おやおや、掃除すら満足に出来ないなんて、拙者は許せませんなぁ」
「火羅さん。残念ながら貴方では、お姉様とは、釣り合いません」
火羅……駆け落ちしよう。
あわわわわわ――。
赤麗ちゃんは、彩花に任せて……行こう、一緒に。
うははははは――いやぁ! こ、これは何かの事故だから、過ちだから!
「何のことじゃ?」
え、あ、あの……そんなこと、してないよね?
「は?」
い、いいの! わ、忘れなさい!
「何じゃお主、青ざめたり赤らんだり、見てる分には楽しいがのぉ」
うるさい! 用件は何よ!
「おお、それよそれ」
彩華がはらりと襦袢を落とした。
ほっそりとした身体である。
胸は彩花と同じように平らで……こんなに、平らだっけ?
……あれ、それは、女の子にはないはずのものだけど?
うんうん。
少なくとも、私にはないわよ?
「妾は、男だったらしい。そういうわけで、火羅、夫婦になるぞ」
「ふ……」
思いっきり取り乱してしまい、鈴鹿先生にチョークを投げられた。額が放課後の今もずきずきとする。
どうやらあれは夢だったらしい。
心胆を寒々とさせる、恐ろしい夢だった。
「赤麗、今日は何だか嬉しそうね?」
「えへへー」
火羅は、赤麗の送り迎えをよくしていた。
赤麗が通う小学校も、火羅が通う中学校も、あやかし学園――彩花と彩華の敷地の中にあるのだ。
「ああ、今日は災難だったわ……よよよ」
「大丈夫、お姉ちゃん? 元気だして」
「うん、お姉ちゃん、頑張る」
「ア、ソウダ。チョットココデマッテテ」
「え?」
「マッテテネ」
赤麗が、角を曲がって消えてしまった。何だろうと、火羅は待った。
帰ってくる。
人を連れていた。
見覚えのある顔だった。
「はい」
「ふふん、どうやら妾は、男だったらしい」
それは、正装した彩華だった。
それは、男装した彩華だった。
びしっと黒いスーツを身に纏い、王子様役をした彩花のように、長い髪を一つに束ね後ろに流していた。
「どうじゃ、驚いたか。んふ、いい顔をしておるのぉ。そお、それじゃ、その顔が見たかったのじゃ。赤麗と準備してきた甲斐があったわ」
「今日はね、お姉ちゃん。エイプリルフールなんだよ! どぉ、びっくりした?」
「……火羅?」
「お姉ちゃん?」
火羅は……立ったまま、気絶していた。
何? と、火羅は首を傾げた。
目の前では彩華が、襦袢姿で胡座を掻いているようだ。
世界が霞がかっていて、我が侭な友人は薄ぼんやりしていた。
貧弱な胸が見え隠れし、蒼白い鎖骨が堂々と。
はしたないわと火羅が言うと、彩華はいつものようにけらけらと嗤った。
「ふん、どうということもないわ」
彩華はいつもきちんと服を着ていた。着崩した姿は滅多にない。
私には、露出が多い姿ばかりさせるのに。
スタイルが悪いと彩花は悩んでいた。
彩華は知らない。双子ではある。
目の前の彩華は、薄着を乱していた。
こんな姿は、見たことがなかった。
「そんなことよりもなぁ、そなたに教えたいことがあるのよ」
何だろうと火羅は身構えた。
この彩華の顔から察するに、ろくな事は言わないだろう。
どうせまた、私を弄ぶ算段に違いない。
それとも……弄んだ後とか?
え、事後? だから薄着?
そういえば、肌がすーすーする。
あれ、真っ裸? 自己責任?
ど、どうするの?
彩花さん、妹になっちゃうの?
け、権力闘争? 跡継ぎ争い?
貧乏人風情がと、苛められちゃう?
「指に埃がついたさよ、火羅さん。全く、お客様をお迎えするというのに、これじゃあ困るさねぇ」
「おやおや、掃除すら満足に出来ないなんて、拙者は許せませんなぁ」
「火羅さん。残念ながら貴方では、お姉様とは、釣り合いません」
火羅……駆け落ちしよう。
あわわわわわ――。
赤麗ちゃんは、彩花に任せて……行こう、一緒に。
うははははは――いやぁ! こ、これは何かの事故だから、過ちだから!
「何のことじゃ?」
え、あ、あの……そんなこと、してないよね?
「は?」
い、いいの! わ、忘れなさい!
「何じゃお主、青ざめたり赤らんだり、見てる分には楽しいがのぉ」
うるさい! 用件は何よ!
「おお、それよそれ」
彩華がはらりと襦袢を落とした。
ほっそりとした身体である。
胸は彩花と同じように平らで……こんなに、平らだっけ?
……あれ、それは、女の子にはないはずのものだけど?
うんうん。
少なくとも、私にはないわよ?
「妾は、男だったらしい。そういうわけで、火羅、夫婦になるぞ」
「ふ……」
思いっきり取り乱してしまい、鈴鹿先生にチョークを投げられた。額が放課後の今もずきずきとする。
どうやらあれは夢だったらしい。
心胆を寒々とさせる、恐ろしい夢だった。
「赤麗、今日は何だか嬉しそうね?」
「えへへー」
火羅は、赤麗の送り迎えをよくしていた。
赤麗が通う小学校も、火羅が通う中学校も、あやかし学園――彩花と彩華の敷地の中にあるのだ。
「ああ、今日は災難だったわ……よよよ」
「大丈夫、お姉ちゃん? 元気だして」
「うん、お姉ちゃん、頑張る」
「ア、ソウダ。チョットココデマッテテ」
「え?」
「マッテテネ」
赤麗が、角を曲がって消えてしまった。何だろうと、火羅は待った。
帰ってくる。
人を連れていた。
見覚えのある顔だった。
「はい」
「ふふん、どうやら妾は、男だったらしい」
それは、正装した彩華だった。
それは、男装した彩華だった。
びしっと黒いスーツを身に纏い、王子様役をした彩花のように、長い髪を一つに束ね後ろに流していた。
「どうじゃ、驚いたか。んふ、いい顔をしておるのぉ。そお、それじゃ、その顔が見たかったのじゃ。赤麗と準備してきた甲斐があったわ」
「今日はね、お姉ちゃん。エイプリルフールなんだよ! どぉ、びっくりした?」
「……火羅?」
「お姉ちゃん?」
火羅は……立ったまま、気絶していた。