小説置き場2

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狼風奇譚~第10話~

「ほう、誰か大物が来たと思ったらあなたでしたか」
 係の者が言った。後ろを見ると、まだ列は左右に分かれたままだった。
「この子の登録を・・・」
 係の者が風華のほうを見る。
「なかなか優秀そうなお弟子さんで」
 そういって、笑った。
「いえ、そんなことは」
 恥ずかしくなって、ぶんぶん頭を振った。また、笑われた。
「さてさて、登録をしましょうか。そこの紙のそことそこに名前を書いて下さい」
「あ、はい」
 言われたとおりに名前を書く。
「はい、白狼大師もここに名前を」
「・・・」
「これで完了です。あなたも仙の一員ですよ」
「・・・・・・はい」
 これで登録は終わった。白狼が移動を始めたので、風華もついて行く。あまりにもあっけなかったので実感がわかなかった。
「風華・・・」
「はい」
「大したことないだろ・・・」
「・・・そう、ですね」
「そんなもんだ・・・」
 洞穴が見える。白狼はそこに向かっていた。二人が入ろうとすると、呼び止められた。ここから先は小師以上の者でないと入れない、そう言われた。
「昔は違ったのだが・・・」
「・・・・・・」
「とりあえず、大牙のところで待っていてくれないか・・・」
「分かりました。あの、どれぐらい待てば」
「すぐ戻れると思う・・・」
「では、後ほど」
「ああ・・・」
 風華は、ちょっと悲しそうな顔をした。
 
 洞穴の中は、巨大の広場になり、豪華な食材が並んでいた。そこかしこで談笑が起こっていた。
「・・・」
 白狼は一人で酒を飲んでいた。周りのものは、白狼のことをちらちら見るが、話しかけようとはしなかった。
「・・・」
 また、喉に酒を流し込む。見慣れた人物が近づいてくるのが、視界に入った。
「よう」
 炎双だった。挨拶代わりに杯を上げる。白狼は、少し酔っていた。
「うお、酒くせ。お前こんなとこで飲むなよ」
「暇だったし・・・」
「いや、そうなんだろうけど」
「助かった。知り合いが誰もいなくてな・・・」
「道三は?」
「行きたくないとさ・・・」 
「あいつらしいな。で、なんでお前がここに」
「一応神星派の一員だし・・・」
「風華ちゃんの登録だろ?」
「・・・そうだ・・・」
「そうでもないとここに来ないよな、お前は」
 そう言って、やれやれと両手をふった
「・・・そっちはいつも?・・・」
「当たり前だ。長老連中の印象を良くして、早く神星派を自分の物にしたいからな」
「・・・炎双らしい・・・」
 そういって、また酒を喉に注いだ。