小説-あやかし姫-第四話~前編~
「暑いですね~」
「うん」
今日もいつもの縁側で、姫様達が暑さをしのいでいる。
「ここはましな方なんでしょうけど・・・・・」
葉子に懐いたかみなり様。
ちょくちょく雨を降らせに来てくれるのだ。
「水~」
「水~」
「はいはい」
庭に落ちてる妖達。
なかには溶けかかっているものも。姫様が水をかけてやるが、それも焼け石に水といったところ。
「全く、しょうがない奴らだね」
そういう銀狐も暑さに降参。毛が非常に暑いのだそうな。
「ところで太郎のバカとクロちゃんはどこに行ったんでしょうかね?」
続ける銀狐。
頭領はいつものこととして、二人の姿が見えないのが不思議なのだ。
大体三人で姫様の周りにぶっ倒れているのが常なのである。
「村に下りるっていってましたけど?」
「村? 何やってるんだろうね」
「さあ……」
「お~い」
寺の門から聞こえる声。烏と狼の声である。
皆反応はするが動きだす者はなし。
とことこと二人が歩いてくる。
「あの、迎えにでるとかそういうのは……」
「暑いから無理!」
「そうですか……」
「で、その荷物は何ですか?」
二人は袋を抱えていて。皆中身が気になるところ。
「じゃ~ん、すいか!」
「おお!」
妖達の声。皆、太郎と黒之助の周りに集まった。
「そして、これ!」
「おお!お?」
次に取り出したるは、金魚柄の「わっか」とでもいうべきもの。初めて見る物である。
「それ、何です?」
仕方なしに姫様が。皆すいかに夢中なので。
「これは浮き輪といってですね、水遊び…」
「水遊び?」
「そ、これにつかまってりゃあ溺れることはまずないってしろものだぜ」
そういって、浮き輪につかまる太郎。
水遊びに行きたいので、浮き輪を買ってきたのだ。
「私の、ために……」
姫様、泳げないのだ。
一度川に連れて行ってもらったのだが、そのとき見事に溺れてしまい。
それ以来、水遊びは皆の禁句になっていた。
「どうです、川にでも……」
皆の注目が、集まる。
「それじゃあ、いきますか」
わざわざ自分のために買ってきてくれたのだ。それでいかないのなら姫様の名がすたるというもの。
さっそく川に行くことに。
寺から徒歩五分と行ったところ。
そこに小さな綺麗な川が。昔は力の強い妖がいたとかで、村の人はめったに近づかない。
といっても、頭領に川を譲ってどこかにいってしまったらしいのだが。
「カッワ、カッワ」
さっそく水に入る妖達。村人が来ることがないので、自由に泳ぐことができるのだ。
「できましたよ」
一生懸命空気を入れていた黒之助。
葉子と太郎が早々と川に入ってしまい、彼しかする人がいなかったのだ。
「よいしょ、っと。さ、どうぞ」
浮き輪をつける。恐る恐る、水の中に入る。
心配そうに姫様を見る妖達。
「ここでやめたら……駄目、だよね」
そう、思った。
せっかく浮き輪なるものを買ってきてくれたのだ。
ここは、太郎と黒之助を信じて……
「てい!」
目をつぶって思い切って飛び込む。
川の深さはかなりあり、底は姫様の足のはるか遠くで。
「……浮いてる?」
目を、開く。川にぷかぷか浮いている。
水の冷たさが、心地よかった。
「気持ち……いい」
そういって、姫様は笑った。
それを見て、妖達もほっと一息。姫様が喜んでくれたのだ。
これで気兼ねなく遊べるというもの。
「うん」
今日もいつもの縁側で、姫様達が暑さをしのいでいる。
「ここはましな方なんでしょうけど・・・・・」
葉子に懐いたかみなり様。
ちょくちょく雨を降らせに来てくれるのだ。
「水~」
「水~」
「はいはい」
庭に落ちてる妖達。
なかには溶けかかっているものも。姫様が水をかけてやるが、それも焼け石に水といったところ。
「全く、しょうがない奴らだね」
そういう銀狐も暑さに降参。毛が非常に暑いのだそうな。
「ところで太郎のバカとクロちゃんはどこに行ったんでしょうかね?」
続ける銀狐。
頭領はいつものこととして、二人の姿が見えないのが不思議なのだ。
大体三人で姫様の周りにぶっ倒れているのが常なのである。
「村に下りるっていってましたけど?」
「村? 何やってるんだろうね」
「さあ……」
「お~い」
寺の門から聞こえる声。烏と狼の声である。
皆反応はするが動きだす者はなし。
とことこと二人が歩いてくる。
「あの、迎えにでるとかそういうのは……」
「暑いから無理!」
「そうですか……」
「で、その荷物は何ですか?」
二人は袋を抱えていて。皆中身が気になるところ。
「じゃ~ん、すいか!」
「おお!」
妖達の声。皆、太郎と黒之助の周りに集まった。
「そして、これ!」
「おお!お?」
次に取り出したるは、金魚柄の「わっか」とでもいうべきもの。初めて見る物である。
「それ、何です?」
仕方なしに姫様が。皆すいかに夢中なので。
「これは浮き輪といってですね、水遊び…」
「水遊び?」
「そ、これにつかまってりゃあ溺れることはまずないってしろものだぜ」
そういって、浮き輪につかまる太郎。
水遊びに行きたいので、浮き輪を買ってきたのだ。
「私の、ために……」
姫様、泳げないのだ。
一度川に連れて行ってもらったのだが、そのとき見事に溺れてしまい。
それ以来、水遊びは皆の禁句になっていた。
「どうです、川にでも……」
皆の注目が、集まる。
「それじゃあ、いきますか」
わざわざ自分のために買ってきてくれたのだ。それでいかないのなら姫様の名がすたるというもの。
さっそく川に行くことに。
寺から徒歩五分と行ったところ。
そこに小さな綺麗な川が。昔は力の強い妖がいたとかで、村の人はめったに近づかない。
といっても、頭領に川を譲ってどこかにいってしまったらしいのだが。
「カッワ、カッワ」
さっそく水に入る妖達。村人が来ることがないので、自由に泳ぐことができるのだ。
「できましたよ」
一生懸命空気を入れていた黒之助。
葉子と太郎が早々と川に入ってしまい、彼しかする人がいなかったのだ。
「よいしょ、っと。さ、どうぞ」
浮き輪をつける。恐る恐る、水の中に入る。
心配そうに姫様を見る妖達。
「ここでやめたら……駄目、だよね」
そう、思った。
せっかく浮き輪なるものを買ってきてくれたのだ。
ここは、太郎と黒之助を信じて……
「てい!」
目をつぶって思い切って飛び込む。
川の深さはかなりあり、底は姫様の足のはるか遠くで。
「……浮いてる?」
目を、開く。川にぷかぷか浮いている。
水の冷たさが、心地よかった。
「気持ち……いい」
そういって、姫様は笑った。
それを見て、妖達もほっと一息。姫様が喜んでくれたのだ。
これで気兼ねなく遊べるというもの。