小説-あやかし姫-第三話~(裏)~
「ねえねえ、おいらにも仕事やらせてくれよ!」
「駄目!」
ここは雲の上。鬼の一族、かみなり様が住まう場所。ここで親子が口げんか。
「いいじゃん、雨降らせて雷鳴らすだけだろ?おいらにもやれるって!」
「光はまだ幼すぎるよ。もう少し、我慢しな。ね?」
「・・・・・・は~い」
お~い、と呼ぶ声。呼ばれた母は声のする方を見る。
「どうやら、仕事が入ったみたいだね。光はうちでじっとしてるんだよ?」
「は~い」
母は声の方に走り出す。その姿が見えなくなると、いったね。そう光はつぶやいた。
「全く、いつまでも子ども扱いしやがって」
そして、光も走り出す。それは、光の家とはまるっきり逆方向だった。
こねこねこねこねっと、光は足下の雲を集めている。米俵ぐらいの大きさにすると、作業を止め、右手をふところにつっこんだ。
ふところから出した右手にはでんでん太鼓、それを集めた雲に向ける。
それを合図にもそもそもそっと雲が動き出す。それは子ども一人が乗れるぐらいに大きくなって。
「ちょっと、小さすぎたかな・・・・・・大丈夫、だよね」
雲に乗る。そしてぴょんぴょん跳ねてみる。とたんに嬉しそうな顔。
「よ~し、おいらの初仕事。一丁やってみるか!」
雲はふわふわと降下を始めた。
「これが下の世界か~、色々なものがあるな~」
光はのんきに見学中。見る物全てが初めてなので、それも仕方が無いことだった。
「いや、のんびりしてちゃあいけないな。さて、どこに雨を降らそうか?」
ちょうど古寺が目にとまる。周りに建物は、ない。木々に囲まれている。
「あれなら、いいよな。」
まだ「仕事」をしたことはない。もし、失敗しても周りに被害が及ぶことはなさそうだ。
「よし、ここに決めた」
そういうと、でんでん太鼓を振り始めた。
「雲よ、大きくな~れ!」
雲はすっぽりと寺の敷地を埋めるぐらいに大きくなる。
「あれ、ここまで?元が少なすぎたかな?」
でんでん太鼓を振り続けるも、雲の大きさは変わらない。
「よし、雨よ、ふ~れ!」
ざーっと雨が降り出した。犬が庭に出てはしゃいでいる。
「よしよし、犬も喜んでる。・・・・・次は雷だな」
そして、でんでん太鼓を強く振る。
「雷よ、な~」
れ、という音と共に、光は真っ逆さま。雲から足を踏み外したのだ。
「いて~!!!」
雷と共に落ちた光。目の前には人間が。
(落ち着け、落ち着けよ)
「おいこら、何見てんだよ!」
(落ち着け、落ち着け。人間は・・・人間は妖怪を畏れるんだよな・・・・・・)
それは母の教えた言葉。なら、人にいうことを聞かすのも簡単ではないか?なにせ自分は由緒正しき鬼の一族、かみなり様。人は畏れおののくはず。
「腹減った。飯を食わせろ!」
とりあえず、人の食物を口にしてみたい。それは真っ先にでた光の望み。うまそうに人が食べるのを、よく上からのぞき見していたのだ。
二人組の女に部屋に入れといわれる。年上の方が、私がやりましょう、といい、出て行った。若い方が目の前に座る。すると、老人が入れ替わりに入ってきた。
しばらく待つと女が料理を持ってきた。うまそうなので、がっついた。
すぐに、食べ終わった。
「おかわり!」
料理を待つ間、目の前の二人に話をしてやることにした。
「でだな、あんたら人間は妖怪なんて見たことがないだろうが・・・」
おいらの話をありがたそうに聞いている。まあ、当たり前か。なんせおいらは鬼の一族、偉大なかみなり様だからな!当然だろう!って、こいつら笑ってやがる。ここは一発かましておくか・・・・・・
「なんで笑ってんだよ!」
滅相もないと首を振る二人。気分を良くして、光は話を再会する。
「この太鼓で雷を落としたりするんだ、すごいだろう?」
さっきから触れられてる感じがするけど、気のせいだろ。そのまま、話を続けてやる。
すると、また雷の音。母の声。母が迎えに来てくれたのだ。
ところ変わって少し前の雲の世界。光の母は、息子がいなくて大慌て。すぐに息子を捜しにいく。悪い人間に捕まってはいないか、妖に化かされて泣いてはいないかと、必死で光の気配をたどる。
たどった先には古寺が。庭には狼と、その頭に留まる烏が一羽。すぐに、それが力を持つ妖だと気づく。
「光、まってなよ。すぐに迎えにいくからね」
背中の太鼓を一叩きすると、母は雷に姿を変えた。
古寺は、近くで見ると異様な数の妖の気配を発していた。覚悟を決めて前にでる。たとえ何が立ちふさがろうと、息子を取り戻す決心はしていた。
「たのもー」
「お袋!」
光は母の元に駆け寄る。母は、異様に緊張していた。
親子の前にでる老人と娘。娘の方から話しかけたきた。
「ええっと、お母さん。でいらっしゃいますよね?」
「ここは・・・・・・」
「別に身構えんでよろし。実は・・・・・・」
かくかくしかじかとこんな具合で。老人の説明を聞くと、母は構えを解いた。光には目を見開くことしかできなかった。
「すみません、この子が迷惑をかけまして・・・・・・」
そういって、母も説明する。説明すると、
「本当に、すみませんでした!」
そういって親子で頭を下げる。男の子は首根っこを捕まれて無理矢理だが。
「いや、本当におかまいなく」
老人はいった。
すぐに、光親子は帰ることになった。光はこれからこってり怒られるそうな。
「これ、もっていきな」
年上の方の女が、光におにぎりを渡す。
「いいの?」
「おかわりだろ?」
「・・・・・・ありがと」
「小さくなってくね」
「うん」
「また、会ってもいいかな」
「そうだね」
夏の暑い夕立のある日。かみなり様と古寺と。
「駄目!」
ここは雲の上。鬼の一族、かみなり様が住まう場所。ここで親子が口げんか。
「いいじゃん、雨降らせて雷鳴らすだけだろ?おいらにもやれるって!」
「光はまだ幼すぎるよ。もう少し、我慢しな。ね?」
「・・・・・・は~い」
お~い、と呼ぶ声。呼ばれた母は声のする方を見る。
「どうやら、仕事が入ったみたいだね。光はうちでじっとしてるんだよ?」
「は~い」
母は声の方に走り出す。その姿が見えなくなると、いったね。そう光はつぶやいた。
「全く、いつまでも子ども扱いしやがって」
そして、光も走り出す。それは、光の家とはまるっきり逆方向だった。
こねこねこねこねっと、光は足下の雲を集めている。米俵ぐらいの大きさにすると、作業を止め、右手をふところにつっこんだ。
ふところから出した右手にはでんでん太鼓、それを集めた雲に向ける。
それを合図にもそもそもそっと雲が動き出す。それは子ども一人が乗れるぐらいに大きくなって。
「ちょっと、小さすぎたかな・・・・・・大丈夫、だよね」
雲に乗る。そしてぴょんぴょん跳ねてみる。とたんに嬉しそうな顔。
「よ~し、おいらの初仕事。一丁やってみるか!」
雲はふわふわと降下を始めた。
「これが下の世界か~、色々なものがあるな~」
光はのんきに見学中。見る物全てが初めてなので、それも仕方が無いことだった。
「いや、のんびりしてちゃあいけないな。さて、どこに雨を降らそうか?」
ちょうど古寺が目にとまる。周りに建物は、ない。木々に囲まれている。
「あれなら、いいよな。」
まだ「仕事」をしたことはない。もし、失敗しても周りに被害が及ぶことはなさそうだ。
「よし、ここに決めた」
そういうと、でんでん太鼓を振り始めた。
「雲よ、大きくな~れ!」
雲はすっぽりと寺の敷地を埋めるぐらいに大きくなる。
「あれ、ここまで?元が少なすぎたかな?」
でんでん太鼓を振り続けるも、雲の大きさは変わらない。
「よし、雨よ、ふ~れ!」
ざーっと雨が降り出した。犬が庭に出てはしゃいでいる。
「よしよし、犬も喜んでる。・・・・・次は雷だな」
そして、でんでん太鼓を強く振る。
「雷よ、な~」
れ、という音と共に、光は真っ逆さま。雲から足を踏み外したのだ。
「いて~!!!」
雷と共に落ちた光。目の前には人間が。
(落ち着け、落ち着けよ)
「おいこら、何見てんだよ!」
(落ち着け、落ち着け。人間は・・・人間は妖怪を畏れるんだよな・・・・・・)
それは母の教えた言葉。なら、人にいうことを聞かすのも簡単ではないか?なにせ自分は由緒正しき鬼の一族、かみなり様。人は畏れおののくはず。
「腹減った。飯を食わせろ!」
とりあえず、人の食物を口にしてみたい。それは真っ先にでた光の望み。うまそうに人が食べるのを、よく上からのぞき見していたのだ。
二人組の女に部屋に入れといわれる。年上の方が、私がやりましょう、といい、出て行った。若い方が目の前に座る。すると、老人が入れ替わりに入ってきた。
しばらく待つと女が料理を持ってきた。うまそうなので、がっついた。
すぐに、食べ終わった。
「おかわり!」
料理を待つ間、目の前の二人に話をしてやることにした。
「でだな、あんたら人間は妖怪なんて見たことがないだろうが・・・」
おいらの話をありがたそうに聞いている。まあ、当たり前か。なんせおいらは鬼の一族、偉大なかみなり様だからな!当然だろう!って、こいつら笑ってやがる。ここは一発かましておくか・・・・・・
「なんで笑ってんだよ!」
滅相もないと首を振る二人。気分を良くして、光は話を再会する。
「この太鼓で雷を落としたりするんだ、すごいだろう?」
さっきから触れられてる感じがするけど、気のせいだろ。そのまま、話を続けてやる。
すると、また雷の音。母の声。母が迎えに来てくれたのだ。
ところ変わって少し前の雲の世界。光の母は、息子がいなくて大慌て。すぐに息子を捜しにいく。悪い人間に捕まってはいないか、妖に化かされて泣いてはいないかと、必死で光の気配をたどる。
たどった先には古寺が。庭には狼と、その頭に留まる烏が一羽。すぐに、それが力を持つ妖だと気づく。
「光、まってなよ。すぐに迎えにいくからね」
背中の太鼓を一叩きすると、母は雷に姿を変えた。
古寺は、近くで見ると異様な数の妖の気配を発していた。覚悟を決めて前にでる。たとえ何が立ちふさがろうと、息子を取り戻す決心はしていた。
「たのもー」
「お袋!」
光は母の元に駆け寄る。母は、異様に緊張していた。
親子の前にでる老人と娘。娘の方から話しかけたきた。
「ええっと、お母さん。でいらっしゃいますよね?」
「ここは・・・・・・」
「別に身構えんでよろし。実は・・・・・・」
かくかくしかじかとこんな具合で。老人の説明を聞くと、母は構えを解いた。光には目を見開くことしかできなかった。
「すみません、この子が迷惑をかけまして・・・・・・」
そういって、母も説明する。説明すると、
「本当に、すみませんでした!」
そういって親子で頭を下げる。男の子は首根っこを捕まれて無理矢理だが。
「いや、本当におかまいなく」
老人はいった。
すぐに、光親子は帰ることになった。光はこれからこってり怒られるそうな。
「これ、もっていきな」
年上の方の女が、光におにぎりを渡す。
「いいの?」
「おかわりだろ?」
「・・・・・・ありがと」
「小さくなってくね」
「うん」
「また、会ってもいいかな」
「そうだね」
夏の暑い夕立のある日。かみなり様と古寺と。