小説-あやかし姫-第四話~後編~
「皆、楽しそうですね」
「そうですな」
浮いている姫様。
周りには烏が一羽のみ。
他は、皆思い思いに遊んでいる。特に葉子と太郎の暴れっぷりは凄まじい。
きゃきゃっきゃきゃっと水をかけたり放り投げたり。
「さてと」
「あがりますか?」
「すいかも良く冷えてるでしょうし。皆の分を切り分けておきますね」
川岸に向かおうとする。
移動はできるようになったのだ。
「え?」
「どうしました?」
「何かが足をつかんでます・・・・・・」
誰のいたずらでしょうかね、そういいかけたとき。
「え! まって! 駄目!」
ぶくぶくぶく、と姫様が沈んだ。
「姫さん!」
慌てる黒之助。すぐに水中に潜る。他の妖達も、心配そうに周りに集まる。
「げほげほげほ!?」
咳き込む姫様。烏天狗が慌てて水の外に出した。
「一体、誰だい?」
口調こそ穏やかであれ、葉子はものすごい殺気を発している。
それは太郎も黒之助も同じこと。三人とも一番力の発揮できる姿になっていた。
「うちらじゃ、ないよな」
ぶるぶるぶると皆首を振る。
「ということは、よそもんか」
「そうみたいですな」
「そだね」
殺気の固まりが三つ。
他の妖達はただただ震えるばかり。三人の視線は川の中に。
「・・・・・・ご、ごめんなさい!」
川から飛び出たのは女の子。姫様と同じぐらいの年齢であろうか。
ちょっと違うのは、頭の皿が目につくぐらい、である。
妖。
「かっぱ?」
「かっぱ」
「かっぱ!」
ごめんなさいごめんなさい。
土下座を繰り返すかっぱの子。妖気にあてられ、涙目である。
「ごめんですむとおもってんのかよ?」
「許し難いな」
「うちらの姫様になんてことを!」
ごめんなさいと土下座を繰り返すかっぱの子。それを見ていて、
「もうその辺にしておいたらどうですか?」
姫様が口をだす。
姫様の心が痛んだのだ。
「訳・・・とかあるのかな?」
「それは・・・・・・」
かっぱが話すところによると、今年からここに移り住んだそうな。
人(妖)がいきなり大量に訪れたので気が動転してしまい、足を引っ張ってしまったのこと。
「なんで気が動転したら姫様の足を引っ張るのかね!」
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
かっぱの子は必死である。なにせ命が懸かっているのだ。
本能で、それは感じ取れた。
「顔、上げてください」
土下座をやめるかっぱの子。目の前には姫様の顔。
「すみません、突然大勢で押しかけて」
そういうと、頭を下げる。
「これでおあいこ、ということしませんか」
ぶんぶん首を縦に振るかっぱの子。それから、姫様は三人のほうを見る。
「いいですね」
まだ虫が納まらないようではあるが、
「姫さんがそういうのなら・・・」
「じゃあクロちゃんに同じ」
「同じく」
「それじゃあ、これでしまいということで」
また遊び始める妖達。かっぱの子もそっと水に入ろうと。
「待ってください」
涙目に戻り振り向くかっぱの子。まだ何かあるのかといいたげで。
「すいか、一緒に食べませんか?」
「・・・・・・いいんですか?」
「ええ」
ぱあっと、顔が明るくなった。
「またね、沙羅ちゃん」
手を振る姫様。かっぱの子と仲良くなり、名前も教えあったのだ。
「また来ていいそうですよ」
烏と狼にそういうと、
「当たり前だ」
「この川は頭領のもの、ですよ」
そっけない返事。またかっぱの子が泣きそうになる。
「あ~、もう」
太郎と黒之助をぐっと睨むと、姫様かっぱの子の元へ。
銀狐は仲良くなったが、二人はまだ怒っているのだ。
「今度、きゅうり持ってくるからね」
「うん」
今度こそ、またね。沙羅も彩花もお互い見えなくなるまで手を振った。
「ところで」
「はい?」
沙羅の姿が見えなくなったところで太郎と黒之助に話しかける。
「浮き輪とすいかの代金、どこにあったんですか?」
あは、っとひきつった笑みの二人。実は金庫から勝手に持ち出したのだ。
「二人のお小遣いからですか?」
「え、それは、その・・・・・・」
「しばらくお小遣い無しですね」
にこりと微笑みながら言い放つ。がっくりと肩を落とす二人。銀狐が慰める。
「冗談ですよ」
そういって、笑った。遅れて、二人以外の皆も笑った。
「せっかく私のために買ってきてくれたのですから・・・・・・」
友達もできた。川遊びもできるようになった。姫様にとっては、十分な一日だった。
「今日はお酒飲んでもいいですよ」
妖達が、夏の夕日に歓声をあげる。
「そうですな」
浮いている姫様。
周りには烏が一羽のみ。
他は、皆思い思いに遊んでいる。特に葉子と太郎の暴れっぷりは凄まじい。
きゃきゃっきゃきゃっと水をかけたり放り投げたり。
「さてと」
「あがりますか?」
「すいかも良く冷えてるでしょうし。皆の分を切り分けておきますね」
川岸に向かおうとする。
移動はできるようになったのだ。
「え?」
「どうしました?」
「何かが足をつかんでます・・・・・・」
誰のいたずらでしょうかね、そういいかけたとき。
「え! まって! 駄目!」
ぶくぶくぶく、と姫様が沈んだ。
「姫さん!」
慌てる黒之助。すぐに水中に潜る。他の妖達も、心配そうに周りに集まる。
「げほげほげほ!?」
咳き込む姫様。烏天狗が慌てて水の外に出した。
「一体、誰だい?」
口調こそ穏やかであれ、葉子はものすごい殺気を発している。
それは太郎も黒之助も同じこと。三人とも一番力の発揮できる姿になっていた。
「うちらじゃ、ないよな」
ぶるぶるぶると皆首を振る。
「ということは、よそもんか」
「そうみたいですな」
「そだね」
殺気の固まりが三つ。
他の妖達はただただ震えるばかり。三人の視線は川の中に。
「・・・・・・ご、ごめんなさい!」
川から飛び出たのは女の子。姫様と同じぐらいの年齢であろうか。
ちょっと違うのは、頭の皿が目につくぐらい、である。
妖。
「かっぱ?」
「かっぱ」
「かっぱ!」
ごめんなさいごめんなさい。
土下座を繰り返すかっぱの子。妖気にあてられ、涙目である。
「ごめんですむとおもってんのかよ?」
「許し難いな」
「うちらの姫様になんてことを!」
ごめんなさいと土下座を繰り返すかっぱの子。それを見ていて、
「もうその辺にしておいたらどうですか?」
姫様が口をだす。
姫様の心が痛んだのだ。
「訳・・・とかあるのかな?」
「それは・・・・・・」
かっぱが話すところによると、今年からここに移り住んだそうな。
人(妖)がいきなり大量に訪れたので気が動転してしまい、足を引っ張ってしまったのこと。
「なんで気が動転したら姫様の足を引っ張るのかね!」
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
かっぱの子は必死である。なにせ命が懸かっているのだ。
本能で、それは感じ取れた。
「顔、上げてください」
土下座をやめるかっぱの子。目の前には姫様の顔。
「すみません、突然大勢で押しかけて」
そういうと、頭を下げる。
「これでおあいこ、ということしませんか」
ぶんぶん首を縦に振るかっぱの子。それから、姫様は三人のほうを見る。
「いいですね」
まだ虫が納まらないようではあるが、
「姫さんがそういうのなら・・・」
「じゃあクロちゃんに同じ」
「同じく」
「それじゃあ、これでしまいということで」
また遊び始める妖達。かっぱの子もそっと水に入ろうと。
「待ってください」
涙目に戻り振り向くかっぱの子。まだ何かあるのかといいたげで。
「すいか、一緒に食べませんか?」
「・・・・・・いいんですか?」
「ええ」
ぱあっと、顔が明るくなった。
「またね、沙羅ちゃん」
手を振る姫様。かっぱの子と仲良くなり、名前も教えあったのだ。
「また来ていいそうですよ」
烏と狼にそういうと、
「当たり前だ」
「この川は頭領のもの、ですよ」
そっけない返事。またかっぱの子が泣きそうになる。
「あ~、もう」
太郎と黒之助をぐっと睨むと、姫様かっぱの子の元へ。
銀狐は仲良くなったが、二人はまだ怒っているのだ。
「今度、きゅうり持ってくるからね」
「うん」
今度こそ、またね。沙羅も彩花もお互い見えなくなるまで手を振った。
「ところで」
「はい?」
沙羅の姿が見えなくなったところで太郎と黒之助に話しかける。
「浮き輪とすいかの代金、どこにあったんですか?」
あは、っとひきつった笑みの二人。実は金庫から勝手に持ち出したのだ。
「二人のお小遣いからですか?」
「え、それは、その・・・・・・」
「しばらくお小遣い無しですね」
にこりと微笑みながら言い放つ。がっくりと肩を落とす二人。銀狐が慰める。
「冗談ですよ」
そういって、笑った。遅れて、二人以外の皆も笑った。
「せっかく私のために買ってきてくれたのですから・・・・・・」
友達もできた。川遊びもできるようになった。姫様にとっては、十分な一日だった。
「今日はお酒飲んでもいいですよ」
妖達が、夏の夕日に歓声をあげる。