小説置き場2

山岳に寺社仏閣に両生類に爬虫類に妖怪に三国志にetcetc

2006-09-12から1日間の記事一覧

あやかし姫~旅の人(15)~

陽炎のように絶えず揺らめくその身体。 その紅い二つのまなこが哄笑を。 犬神―― 一歩進むたびに、煙があがる。触れるものを、腐らせているのだ。 植物の悲鳴。土の悲鳴。 三匹の中で次に動いたのは、九尾の銀狐葉子であった。 「いくよ!」 九つの蒼い火が、…

あやかし姫~旅の人(14)~

「で、いつ来るのさ?」 「さあねえ。そこの男に聞け」 「私も……いつも家に閉じ籠もっていたので……」 木森原。若い男が座っていた。月心である。 紫色の煙が、その姿を薄く包み隠していた。 青白い炎が幾つも幾つも宙を漂い、辺りを照らしている。 月心の周…