2007-12-28から1日間の記事一覧
「お水ー、お水ー」 「その籠、なに?」 光が、朱桜の手荷物に顔を向け、言った。 「秘密なのですよ」 恥ずかしげに背に隠すと、光は、重ねて尋ねることはしなかった。 巫女の怪我が心配なのだ。 もう少し訊いて欲しいですよ。 でも――ぼた餅。 これいらない…
小さな女の子が、はたはた急ぎ足。 布包みを背にしょい籠を手に古寺に。 女の子の額には、二本の小さな人あらざる証。 鬼の王の娘――朱桜。 門の前で出迎える姫様の胸に飛び込むと、その顔がふわりとほころんだ。 いい匂いですと思った。 父上とも、叔父上と…