2011-10-11から1日間の記事一覧
彩花の掌は温かいと火羅は思った。 傷に滲みる秋の夜気とは雲泥の差である。 背中に毛氈をくくりつけ、彩花にてくてくと手を引かれていく。 獣の尾のような芒の間、刈り取られたばかりの道を進んでいく。 虫の音がそこかしこから聞こえてくる。 調和のない秋…
妖の掌は冷たいと、姫様は思う。 急に冷えた秋の夜気より、少しだけ冷たい。 包みを片手に、妖狼の手を引き、揺れる芒の間を歩いて行く。 松虫、鈴虫、蟋蟀、轡虫、馬追――艶やかな秋の音色が、まだ新しい細道に溢れている。 火羅の顔を覗き見る。上背がある…