小説置き場2

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第二十四話(2)~雪~

「彩花ちゃん、早く寝ないと。風邪治りませんよ」
「や~だ~!」
 女の子は手足を布団の中でじたばたと。
「ほらほら」
 葉子がなだめようとする。それでも聞かない女の子。
「頭領さまが絵巻物買ってきてくれるって言ったもん、読んでくれるって言ったもん」
 だから・・・
「それまで起きとくの!」
「それで頭領いないのか・・・」
「太郎~、クロちゃ~ん、替わってよ~」
「無理無理、一度言い出したらてこでも聞かないじゃん」
 妖狼、苦笑い。黒之助もうんうんうなずいている。
「ご飯抜き!」
 葉子が怖い顔で。
「う・・・」
 この一言で彩花の動きが止まった。
「葉子殿、それはまずいだろ」
 心配そうに黒之助が。
「ちょっと、クロちゃん。言うだけよ、言うだけ」
「寝ない~」
 それを聞いて、彩花はまたじたばたしだした。
「ああ、もう~」
「彩花、そんなに暴れちゃ駄目だろ。風邪長引くよ」
「頭領!」
 頭領を見て銀狐はほっと一息。
「頭領さま!頭領さま、買ってきてくれた?」
 女の子、御老人にねだる。老人、笑う。
「これでいいんじゃろ?」
 「かぐや姫」そう書かれた巻物を見せて。
「うん、うん!」
「読んであげるから、そうしたら寝るんじゃよ」
「はい!頭領さま、ありがとう」
「おう」
 頭領、絵巻物を開く。彩花はにこにこしながらそれに見入っていた。

 姫様が、目を開ける。
「夢・・・」
「ありゃ、もう起きたんですか」
「はい」
 辺りを見回す。妖達がそこにいた。
「姫様~、大丈夫?」
 妖達が布団の上に。
 しっしっと葉子が払っていく。
「う~ん、ちょっとまだ・・・」
「姫さん、お薬」
「姫様、おかゆ
 烏と妖狼が。二人でお膳を差し出した。
「ありがとう・・・・・・頭領は?」
「外にいますよ」
「寒いのに・・・どうしたんですか?」
「さあ」

「はふはふ・・・ごちそうさまでした」
「はい、薬どうぞ」
「う、苦い・・・」
「薬ですから」
 ゆっくりと食べる。薬を飲む。
「お茶、どうぞ」
「どうも」
 湯気が、ほくほく。
「姫様、雪!」
「雪!」
「雪!」
 庭に目を向けた妖達、叫ぶ。
 庭に白いものがちらほらと。
 落ちては消え、落ちては消え。
 ひらりひらりと降り続ける。
 妖達、はしゃぐ。皆視線を庭に向ける。
「初雪・・・」
「お前ら、あまり騒ぐな!」
「クロさんが一番うるさい!」
「うるさい!」
「ああ!」
「ねえねえ、葉子さん」
「外に出たいんですか?」
「・・・はい」
「・・・・・・言い出したら姫様聞かないですもんね。ちゃんと厚着して下さいよ」
「うん。皆さん、外に出ましょうか」
「は~い」
 妖達が嬉しそうに声をあげた。