小説置き場2

山岳に寺社仏閣に両生類に爬虫類に妖怪に三国志にetcetc

あやかし姫~あける・・・・・・~

 皆、庭にいた。姫様と朱桜と太郎以外。
 居間と他の部屋をしきる障子や戸を取り外すと、妖達は庭に戻された。
 葉子はまだ眠っている光をその尾に包んでいる。
 しきりに桐壺が謝っていた。
 う~んと光がのびをした。どうやら目が覚めたようで。
 黒之助は頭領と何だろうと話している。頭領達も、外に出されたのだ。
 鈴があったかいと鈴鹿御前は子猫を頬に。
 藤原俊宗はその横に立っていて。
 酒呑と茨木はもう少し飲みたかったと、そう口にしていた。
 
 鐘の音が、途切れた。
 
 妖達が己の声の大きさに、ふと気がつく。

 誰も、話さなくなった。

 障子が、居間を隠している。

 月明かりが映す己の影。

 障子に映る三人の影。

 違うものをみ、同じものを見る。

 影が一つ近づいてくる。

 障子が、一つ開く。

「皆さん、入って下さい」

 姫様が、姿を現し声をかけた。

「すごいじゃない」
「ほお・・・」
 お蕎麦。たくさんあった。きちんと並んで置いてある。
「私と、葉子さんと、朱桜ちゃんでつくったんです」
「えっへん」
 銀狐が、胸を張った。
「俺も、並べるの手伝ったんだぜ」
「へえ、太郎殿が」
 珍しい物を見るかのように、黒之助が太郎を。
「さ、皆さん、召し上がって下さい」
 皆、席に着く。ぴったり、同じだけ用意されていた。
「いただきます!!!」
 皆が、言った。

 どうでしょうか・・・・・・皆さんの口に合うでしょうか・・・
「彩花・・・うん。おいしいよ」
 頭領・・・
「なかなかのもんだな」
 茨木童子様・・・
 良かった・・・頑張った甲斐があったというものです。
「はい、あ~んして」
「あ~ん」 
 酒呑童子様と鈴鹿御前様が同じことを・・・朱桜ちゃんと俊宗様恥ずかしそうです・・・
「なんだい、真似して」
「そっちこそ」
「こほん」
 頭領が咳をすると二人とも慌てています。何故でしょうか?
 
「う~、今の刻は?」
「もう、朝だね」
「そっか、もう朝か・・・」
 お蕎麦は、すぐになくなりました。
 皆、本当に喜んでくれました。
 もう少し、多く作ってもよかったかな。
 それからは、またおしゃべりの時間。
 途中で朱桜ちゃんが酒呑童子様の膝の上で寝てしまいました。
「初日の出、拝んでから帰るか」
「そうしますか兄上」
 酒呑様が朱桜ちゃんを起こします。
「俊宗、あたいらもそうする?」
「いいな」
 初日の出・・・もうそんな時間・・・・・・
「彩花、わしらも外に出るか」
「頭領・・・はい」
 沙羅ちゃんも、光君達も、一緒に外に出ます。

 ゆっくりと闇が消えていきます。
 光が山々の後ろから現れます・・・あったかいお日さまの光。
 初日の出です。
 あれ、なぜでしょう?
 皆が私から離れていきます・・・
 私に背を向けます。
 私何か悪いことしたのでしょうか。
 頭領も鈴鹿様も太郎さんも・・・
 皆が・・・皆がお日さまの光と共に消えていくような・・・
 
 ・・・まだ皆と、皆と離れたくないです・・・

「新年あけまして、おめでとうございまいます!!!」
 くるりと姫様の方を向くと、皆の大声。朗らかな声。
 皆からの新年のご挨拶。
「あ・・・・・・」
 姫様、びっくりして目をぱちくり。
「姫様、びっくりした?」
 葉子が言った。いたずらっ子っぽく。
「え、ええ、とても・・・」
「来年、いやもう今年か。よろしくな」
 頭領が言う。
「はい!」
 姫様が返事した。頭を、深々と下げる。

「皆々様、今年もよろしく・・・よろしくお願いします!」