小説置き場2

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呂布、曹操とぶつかる(2)

曹洪「おのれ!!!」
曹仁「迎え撃て!!!」
 呂布軍は三つの大きな塊になって動いていた。一つの塊がそのまま夏侯惇の部隊とぶつかった。
 側面をつこうと動き出していた曹洪曹仁にあとの二つがぶつかっていく。
 予定外であった。押されている。ぶつかりあった全ての軍が押されていた。
曹操「まずい・・・」
夏侯惇「馬鹿な!呂布軍がこのような動きを・・・・・・」
曹洪「あの旗は・・・・・・高順か!あのときの借り返さしてもら・・・・・・」
 色鮮やかな鎧で身を包んだ高順の姿が目に入る。
曹洪「・・・なんでお前ピンク色の鎧なんだ?(; ゜Д゜)ノ」
高順「黙れ・・・(´・ω・`)」

魏続「きちー!」
宋憲「でもがんばろうー!」
侯成「おうー!」
夏侯惇「・・・・・・妙だな、確かに圧力はそれなりにあるが返せないほどでは・・・呂布の姿も・・・」
曹操「これが呂布殿の戦?・・・・・・まあいい、ここは攻め立てるべきだろうな。夏侯惇に目の前の「雑魚」を押し返すよう言え。夏侯淵曹洪を攻めている部隊を外から崩せ」
夏侯淵「その勢いのまま曹仁のところまで貫いてよいな」
曹操「ああ。(しかし呂布殿はどこにいるのだ?)」

呂布「動いた!」
 呂布軍の鼓がならされた。乱戦状態になっていた呂布軍が引き始めた。
 同時に、漆黒の部隊が動き出していた。
 先頭を走る武将が、方天画戟を振り上げた。
高順「退け!退け!」
張遼「退くよ~」
魏続「合図だ!」
宋憲「下がれ!」
侯成「退くぞ!」

曹洪「退いていく?・・・追撃に移るぞ!」
曹仁「いくぞ!」
夏侯惇「押せ押せ!」
 三人が軍を前に出し始めた。
 そのとき、曹操軍全ての部隊に隙間が生まれた。
 呂布軍は、三方向に退いていたのだ。
曹操「あれは・・・・・・まずい!」
 夏侯惇軍と曹仁軍の隙間を縫うように、漆黒の騎馬隊が動くのが見えた。
 先頭の武将は、小柄であった。巨魁な馬と巨大な武器が不釣り合いであった。兜はつけていない。
 一つに束ねられた髪が、踊っていた。
 猛烈な勢いで近づいてくる。
曹操呂布・・・殿・・・・・・」
 夏侯惇曹仁呂布に気付き、反転しようとしていた。
 だが、それは正面の呂布軍に背をみせることになる。
 なかなか出来ない。
 遊軍としておいていた夏侯淵の部隊も遠すぎる。今は呂布と逆側にいるのだ。
典韋「殿、お下がりくだされ!」
許褚「殿」
曹操「う、うむ」
 曹操が馬を走らせる。
 旗本も動く。
 しかし、中軍だけでも一万。
 相手は見たところわずか千足らず、勝てるのではないか?いくら呂布殿とはいってもだ。
 そう思い、後ろを見たときだった。
 中軍が潰走するのが目に入ったのは。

典韋「やあやあ我こそが悪来典韋なり!」
 大男が大音声で名乗りを上げた。
 呂布は何も言わなかった。
 ただ、その大男に向かっていった。
 二人は武器を構え、すれ違った。
 主のいなくなった馬がそのまま駆けていった。
呂布「もう一人・・・もう一人いる・・・首は、いらない・・・ほしいのは・・・」
 赤兎馬の首を返す。許褚を視界に捉えていた。
 許褚が静かに大薙刀を構えた。
 相手の気が満ちていくのが分かる。
 強い、だが自分の敵ではないことも分かる。
呂布「これで、この部隊は崩れる・・・あとは・・・」

 許褚大薙刀が真っ二つになり、許褚が馬から落ちるのと、本隊が恐慌をきたすのは同時であった。
 核がなくなった一万の兵は、千の精兵にいいように押されていた。
曹操「そ・・・・・・そんな・・・」
 死を覚悟した。
 死が、人の形をした死が迫ってきていた。
 旗本が、曹操を隠すように包む。
 しかし、あの美しい死を遮ることはできないだろう。
 呂布が笑ったのが見えた。可愛らしく、恐ろしい笑みだ。
曹操「ここまで・・・・・・か・・・」
 短く儚い人生であった、そう呟いた。
 旗本の姿がどんどん削り取られていた。