小説置き場2

山岳に寺社仏閣に両生類に爬虫類に妖怪に三国志にetcetc

呂布、曹操とぶつかる(1)

「注意:ここの呂布は女の子です!あと、張遼も女の子です!:注意終わり」
 
 兗州を凍てつかす二人の雄。
 一人は覇業を目指す者。
 一人は無双を誇る漆黒の戦姫。
 領土を奪われし曹操と、領土を奪いし呂布
 ついに、ぶつかるときがきた。
陳宮呂布さま!曹操軍が陣を敷きました!」
呂布「・・・・・・」
 ずっと呂布は地図を見ていた。詳細に描き込まれたその地図の上には、曹操軍をかたどった駒達が。
 小駒が四つと大駒が一つ。
 小駒は大駒を囲むように置かれていた。
呂布陳宮曹操殿はここにこのように陣を構えたんだよね」
陳宮「は!」
高順「攻めるという気がないのでしょうか?」
張遼呂布姉さまを原野戦に誘ってる?」
 曹操率いる本隊一万が中軍。曹洪曹仁がそれぞれ一万、右軍・左軍。夏侯惇が前軍二万。夏侯淵が騎馬のみの部隊八千で後方にいた。堅く陣を守り、攻める気配がない。半日待ったがそこから動かなかった。
 城からは一日かかる距離だ。
呂布「・・・・・・私を引き込んで、討つ。そう考えているのでしょうか」
張邈「城に籠もるという選択もありますが・・・・・・」
呂布「うってでます!」
高順「御意!」
張遼「は~い」
呂布陳宮、張邈殿、城をお願いします」
張邈「しかし、曹操はこちらの二倍の兵を・・・」
呂布「大丈夫です。戦に絶対ということはありませんが・・・」
貂蝉「皆さん・・・」
 三姉妹の長姉、貂蝉。心配そうであった。義妹が強いのはよく知っているが、相手はあの曹操なのだ。
 曹操は、たった三万の兵で青州黄巾軍百万を下してみせた。
呂布「心配ないですよ。貂蝉姉様」
 「少女」はにっこりと微笑む。
 この笑顔の少女があの呂布なのだ。
 まだあどけなさの残る少女。
貂蝉「うん・・・・・・」

夏侯惇曹操!何故攻めない!」
曹操「まあ落ち着け」
 曹操の余裕の笑み。夏侯惇は顔を真っ赤にしていた。
夏侯惇「これが落ち着いていられるか!敵はすぐそこ、こちらの兵は二倍!一気に押しつぶせばよいではないか!」
曹操夏侯惇青州黄巾軍百万は三万の敵に敗れたぞ」
 笑みが消え、冷たい視線を従兄弟に飛ばす。
 夏侯惇が一歩ひいた。
曹操「これは誘いだ。城に籠もらせると時間がかかるからな。原野戦で、一気に」
夏侯惇「つぶす、か?」
曹操「ああ。どうせ呂布殿は全軍正面突撃だろうからな。対処は簡単だ。そのときに、できれば呂布殿は捕らえたいな」
夏侯惇「まだ言ってるのか、お前」
 夏侯惇があきれた。曹操が人材コレクターとはいえ、少々度が過ぎるような気がする。
伝令「曹操様!呂布軍が動き出しました!」
曹操夏侯惇曹仁夏侯淵、・・・・・・曹洪を呼べ」
夏侯惇「むむむ・・・」
曹操「何だ?」
夏侯惇「何で止まった?」
曹操「うるさい!」

呂布「・・・・・・やはり陳宮の言ったとおりの陣立てですね」
高順「どうなさいますか?」
 内心、高順は困っていた。
 呂布の戦は、自ら先頭に立っての全軍突撃。それしかない。
 恐らく、曹操はそれを読んでいる。読んだうえで陣を構えている。誘っている。
呂布「高順は曹洪軍に、張遼曹仁軍にあたってください」
高順「呂布殿、恐らく曹操はその・・・あれ?」
張遼「・・・・・・あれ?」
呂布「魏続、宋憲、侯成。貴方達で夏侯惇を上手く抑えて。私の兵のうち九千を貴方達にさらに与えるから」
魏続「・・・・・・あれ?」
宋憲「あれ?」
侯成「あれれ?」
 みんな狐に化かされたかのような顔である。
呂布「返事は?」
 呂布の持つ方天画戟が「どん!」と地面に打ちつけられた。
高順・張遼・魏続・宋憲・侯成「「「「「は、はい!!!!!」」」」」
高順「あの、呂布殿は?」
呂布「私は騎馬千を率いて狙います」
 呂布が笑った。
呂布曹操殿を・・・・・・くす」
 戦姫の微笑みだった。
 張遼以外みな驚いた。
 こういう笑い方もするのだと。
 純粋であり、それだけに残酷。


曹操呂布軍が来る!よいな、作戦通り動けよ!」
曹洪呂布の戦は正面突撃!惇兄がそれを受け、我らが側面より呂布軍を崩す!」
曹仁「よいか!曹洪に遅れをとるな!」
 呂布軍全軍の突撃を夏侯惇の軍が受け止める。
 少しの間我が軍が押されるであろう。
 だが、呂布軍の側面を曹洪曹仁がついたとき、この戦は終わる。
曹操「来た!やはり突撃、それも猛烈な勢い・・・さすがは呂布殿の軍。良く調練されている」
夏侯惇「予想通・・・・・・おかしい・・・」
 兵が分かれていた。呂布軍は、一つの塊として動いていなかった。