小説置き場2

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張繍伝3

張繍:元董卓四天王張済の甥!叔母上命の純朴な青年!!!
雛:張済の妻。薄幸の美女!彼女に幸せは・・・
賈詡:現張済軍軍師
胡車児:元呂布軍。張済軍の豪傑
曹操:覇者の気質を持つ男。説明無用のあの人です!
典韋曹操の忠実な護衛!
曹昂曹操の長子!



典韋「うむ?」
 従者だという男が怪しげなそぶりをしたので斬ろうと思った。
 武器を振り下ろした。
 いなくなった。
賈詡「空蝉の術」
 仮面をつけていた。丁度顔半分だけを覆っている。
 その仮面に見覚えがあった。
 昔、西で名をはせた・・・
典韋「お前・・・・・・そうか、お前が、あの・・・」
 賈詡が両手をふるう。すると、鉄甲が手の甲を覆った。
 その手甲から鋼のかぎ爪が生えている。
 三本の鋭い爪が両手に現れた。
賈詡「典韋殿。恨みはないが、我が主のため」
 典韋が片手で双戟を横に振るう。
 それを賈詡はがっちりと両方の手のかぎ爪で受け止めた。
 もう片方の手で腰に付けていた袋をまさぐると、典韋が鉄の棒を放つ。
 人の中指ほどのそれは、狙い違わず賈詡の心臓に向かっていく。
典韋「ぬ!」
 賈詡の姿がまた消えた。
典韋「そこ!」
 もう一本鉄の棒を放つ。
 血が、飛び散った。
 それは、典韋の血であった。
 心臓を棒に突き刺された賈詡と、左手のかぎ爪を典韋の腹に突き刺している賈詡。
 二人の、賈詡。一人が消えた。からんと鉄の棒が落ちた。
 典韋が、また双戟を振り上げた。腹の傷などないかのように、その動きに変わりはない。
 賈詡は、かぎ爪を抜き、後ろに避けようとした。
 抜けなかった。
 それは、典韋の強靱な筋肉に食い込んで動けなくなっていた。
 また、血が飛び散った。
 賈詡は、後ろに飛んだ。
 そして、もう一度姿を消した。

曹操「そうか・・・・・・あなたを私に差し出して・・・油断させたというわけか。念の入ったことだ」
 曹操が剣を抜き、雛に突きつける。
 雛は何も言わなかった。
 まだ、何が起こっているのか理解出来ていないのだ。
曹操「何か、言い残すことはないか?」
雛「言い残すこと?」
 つまり、私はここで死ぬというの?
曹操「お前の従者も典韋が斬っていよう。おぬしを助けるものは誰もおらん」
雛「・・・・・・あの、甥に、元気でね、そう伝えて下さい」
曹操「・・・おぬしを利用した男にか?」
雛「え・・・?」
賈詡「違う!」
 鉄のかぎ爪が、曹操の剣をはじき飛ばす。
 賈詡が曹操と雛の間に立つ。同時に、典韋が部屋の壁を突き破って現れた。
典韋「殿、指一本、触れさせない!」
 典韋の腹には、まだかぎ爪が突き刺さっている。それには、人の腕がついていた。
 賈詡の左手の肘から先は、なかった。
雛「・・・・・・」
賈詡「・・・・・・」
曹操「・・・・・・」
典韋「・・・・・・」
 無言で、四人が対峙した。
 賈詡と典韋の足下にどんどん血の池が作られていく。
 それでも、お互い構えを崩さなかった。
曹昂「父上!」
 また、部屋に飛び込んでくるものがあった。
 曹操の長子、曹昂である。
 曹操の護衛についていた者は、既に全員張繍軍との戦に駆り出されている。
 典韋がいれば・・・そう思い、全員曹操の部屋から離れたのだった。
曹操「おお、曹昂か」
曹昂「早くお逃げ下され!」
曹操「この者達は・・・」
曹昂「今は逃げることが先決です!」
曹操「う~ん・・・」
曹昂「父上!」
 幼いながらも、曹昂の表情には覇気があった。
曹操「分かった分かった。典韋!行くぞ」
 曹操典韋曹昂が去っていく。
 雛と賈詡はそこに立ちすくんでいた。
 賈詡の構えがゆれる。
 雛が、悲鳴をあげた。
 自らがつくった血の池に、おのが身体を沈めたのだ。