小説置き場2

山岳に寺社仏閣に両生類に爬虫類に妖怪に三国志にetcetc

高順VS張飛

 一合、二合

 飛び散る火花。触れあう牙

 一騎打ち

 呂布軍筆頭武将・高順と、劉備の義兄弟・張飛

 どちらも、武勇に優れていた

「やるなあああ!!!」

「……」

 張飛は笑っていた。笑う余裕があった。笑いながら、吼えた

 高順は無言。次第に、蛇矛を受けるのが精一杯になっていた

 高順の軍は、ただ陣形を整えながら二人が戦うのを眺めていた

「……」

 不意に、張飛が笑うのを止めた。高順の軍勢がなにも動きを見せない事に、不審を抱いたのだ

「どうしてだ?」

「?」

「誰も、てめえを助けにこないなあ、おい?」

「さあ?」

 張飛の団栗眼に、劉備夏侯惇と合流するのが見えた

「ちっ……」

 劉備の言葉から嗅ぎ取った命は、一人でしばし時間をかせぐこと

 それは、劉備夏侯惇と合流するまででよいのだ

 目的は、達した

 だが、高順は何故軍を動かさなかった?

 劉備軍をそれだけ、恐れているという事か?

 それとも、まずこの俺様を倒してから、襲う気だったのか?

 よく、分からん

 分からんが、俺は兄者の命に従うだけだ

 蛇矛が、高順の馬の首を横切った。それは、高順も吹き飛ばした

 血が飛び、張飛を真っ赤に染める

「蛇眼……」

「さてと。相変わらず、誰も助けにこないな?」

「……」

 高順の桃色の鎧。戦場では、かなり目立つ。それが、馬の血で染まっている

「ふっ……」

 高順が、笑った

「ああ!?」

 びくりと、張飛の背に雷が走る

 戦場の風

 風が、変わった

 確かに、変わった

 これと同じ感覚を、何度も経験している

 そう、何度も

「あ……?」

 いつの間にか、若い男が背後にいた。風に、気を取られすぎた

 大斧

 張飛が、蛇矛でそれを塞ごうとした

 馬の悲鳴が、戦場に木霊した