愉快な呂布一家~新たな、始まり(3)~
「赤ちゃん、可愛いね~」
呂布が言った。
「うん」
張遼が頷く。
こしょこしょと、くすぐってみる。ちょこっと、動いた。
「それでは、高順様と貂蝉様は五人で?」
陳宮の言葉に、二人が頷く。
「私と呂布様、張遼さんは丁原さまのお屋敷へ。他の方々は?」
「適当に、見て回ってくるわ」
「いやあ、楽しみだね~」
お子様二人は遠足気分。
「我々は、洛陽と涼州を繋ぐ街道に」
張繍一党。
彼らは、呂布に従ったのだ。
張繍と雛にとって、この地にはあまり良い思い出がなかった。
「それじゃあ、見つからないようにね」
呂布が、言った。
「まさか、張繍さんが仲間になってくれるなんてね~」
「びっくりなのです、呂布姉さま」
「私も、びっくりです」
話を持ちかけられたときは、正気かと。
だが、張繍は本気で。
独立勢力として行き詰まりを感じていたのだ。
自分の力を、見切っていた。
劉表に、仕える気もなかった。
呂布のことはよく知っている、この人なら、そう思ったのだ。
「ああ、みえてきた。懐かしいなあ」
「ここ、ですか」
「うん……」
荒れた屋敷。
懐かしい場所。
かって、呂布が丁原と暮らしていた場所。
「変わって……るね」
張遼が言った。
張遼も、一緒に暮らしていたのだ。
「うん……」
三人、屋敷の中へ入っていく。フードを、外した。
赤兎、黒捷がひんと鳴いた。
「ああ、ここだ」
大きな、石。そこに呂布は駆け寄った。
「そこに?」
陳宮が言った。
「うん。丁原様、また、来たよ」
「……来たよ~」
「えっと……その……あ、私は」
陳宮、もごもご。
「ねえ、丁原様、私、まだ、戦ってるよ」
陳宮、張遼、呂布の言葉に耳を傾ける。
「まだ、戦ってる。丁原様と一緒に戦った人達、ほとんど死んじゃった。でも、私は、まだ戦ってる」
そこで、一息ついた。
「多分、丁原様は私が戦う事、いやだったんだと思うの。でも、それしか出来ないから、ね」
雪が、降っていた。呂布の頭にも、ちょこっと積もる。
それを、陳宮が払った。
「……死んだ人は、土に帰るだけ」
そう、呂布が言った。
「それでも……ここに、来たかった……」
帰ろうと、言った。
ここは、帰る場所じゃないから。
陳宮と張遼が頷いた。
「王允さま……」
赤子をあやしながら、貂蝉が言った。
屋敷は跡形もなく、廃墟になっていた。
高順も、赤子をあやしながら付き従っていた。
「王允さま……」
もう一度言った。
王允の遺骸は、ここに、埋められている。
そこしか、なかったのだ。
一度は、漢王朝を把握した男にしては、惨めなものだった。
「私が……お傍にいれば……でも、王允さまは、私を切り捨てた。私が、邪魔になって……それでも、私を育ててくれた恩は、忘れません」
愛憎、二つの感情が、以前は渦を巻いていた。
今は、憐れみの気持ちが、強くなっていた。
あの方は、弱い人だったのだと。
「私は、精一杯、いきます。王允さま、それじゃあ……」
赤子が、泣いた。
よしよしと、言った。
「もう、いいのですか?」
「ごめんなさい、高順様、私につき合って頂いて。丁原様のところへ、行きたかったでしょうに……」
「いえ……」
高順が、ぐずり始めた赤子をあやしながら。
「私も、ここで良かったのです」
屋敷に、誰か近づいてくる。
貂蝉と高順は顔を見合わせると、その場を、離れた。
「貂蝉姉様、もう、いいの?」
「呂布さまは?」
「「うん」」
「それじゃあ、涼州へ!」
呂布の元気な弾けるような声に、全員がうんと頷いた。
呂布が言った。
「うん」
張遼が頷く。
こしょこしょと、くすぐってみる。ちょこっと、動いた。
「それでは、高順様と貂蝉様は五人で?」
陳宮の言葉に、二人が頷く。
「私と呂布様、張遼さんは丁原さまのお屋敷へ。他の方々は?」
「適当に、見て回ってくるわ」
「いやあ、楽しみだね~」
お子様二人は遠足気分。
「我々は、洛陽と涼州を繋ぐ街道に」
張繍一党。
彼らは、呂布に従ったのだ。
張繍と雛にとって、この地にはあまり良い思い出がなかった。
「それじゃあ、見つからないようにね」
呂布が、言った。
「まさか、張繍さんが仲間になってくれるなんてね~」
「びっくりなのです、呂布姉さま」
「私も、びっくりです」
話を持ちかけられたときは、正気かと。
だが、張繍は本気で。
独立勢力として行き詰まりを感じていたのだ。
自分の力を、見切っていた。
劉表に、仕える気もなかった。
呂布のことはよく知っている、この人なら、そう思ったのだ。
「ああ、みえてきた。懐かしいなあ」
「ここ、ですか」
「うん……」
荒れた屋敷。
懐かしい場所。
かって、呂布が丁原と暮らしていた場所。
「変わって……るね」
張遼が言った。
張遼も、一緒に暮らしていたのだ。
「うん……」
三人、屋敷の中へ入っていく。フードを、外した。
赤兎、黒捷がひんと鳴いた。
「ああ、ここだ」
大きな、石。そこに呂布は駆け寄った。
「そこに?」
陳宮が言った。
「うん。丁原様、また、来たよ」
「……来たよ~」
「えっと……その……あ、私は」
陳宮、もごもご。
「ねえ、丁原様、私、まだ、戦ってるよ」
陳宮、張遼、呂布の言葉に耳を傾ける。
「まだ、戦ってる。丁原様と一緒に戦った人達、ほとんど死んじゃった。でも、私は、まだ戦ってる」
そこで、一息ついた。
「多分、丁原様は私が戦う事、いやだったんだと思うの。でも、それしか出来ないから、ね」
雪が、降っていた。呂布の頭にも、ちょこっと積もる。
それを、陳宮が払った。
「……死んだ人は、土に帰るだけ」
そう、呂布が言った。
「それでも……ここに、来たかった……」
帰ろうと、言った。
ここは、帰る場所じゃないから。
陳宮と張遼が頷いた。
「王允さま……」
赤子をあやしながら、貂蝉が言った。
屋敷は跡形もなく、廃墟になっていた。
高順も、赤子をあやしながら付き従っていた。
「王允さま……」
もう一度言った。
王允の遺骸は、ここに、埋められている。
そこしか、なかったのだ。
一度は、漢王朝を把握した男にしては、惨めなものだった。
「私が……お傍にいれば……でも、王允さまは、私を切り捨てた。私が、邪魔になって……それでも、私を育ててくれた恩は、忘れません」
愛憎、二つの感情が、以前は渦を巻いていた。
今は、憐れみの気持ちが、強くなっていた。
あの方は、弱い人だったのだと。
「私は、精一杯、いきます。王允さま、それじゃあ……」
赤子が、泣いた。
よしよしと、言った。
「もう、いいのですか?」
「ごめんなさい、高順様、私につき合って頂いて。丁原様のところへ、行きたかったでしょうに……」
「いえ……」
高順が、ぐずり始めた赤子をあやしながら。
「私も、ここで良かったのです」
屋敷に、誰か近づいてくる。
貂蝉と高順は顔を見合わせると、その場を、離れた。
「貂蝉姉様、もう、いいの?」
「呂布さまは?」
「「うん」」
「それじゃあ、涼州へ!」
呂布の元気な弾けるような声に、全員がうんと頷いた。