小説置き場2

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長江、燃える(2)

「皆の衆、やっと、ここまできた。やっと、ここまできた。よく、ここまでついてきてくれた」
 孫策が、諸将を集めて言った。
「本当、苦労かけたなぁ」
「わ、若様!」
「もったいないお言葉でございます!」
「うおぉぉぉ!!!」
 感極まり、大泣きする黄蓋韓当・程普の孫家宿将三人組。
 その後ろで、孫策の師であった祖茂が微笑んだ。
「親父が生きていたら、今頃は天下を獲っていたろう。天下の主となっていたろう。親父のそんな姿を、今でも、夢に見る」
 母方の叔父である呉景が、そっと水滴を一拭いした。
「血で、染めてやる。長江を赤く染めてやる。親父を殺した黄祖の血で赤く染めてやる。我ら、孫家の戦をするぞ。天下に、知らせるのだ。最強は……我ら江東の虎が一流れ、孫家ということをなぁぁぁ!!!」
 孫策が吠えた。兵が、呼応する。
 周瑜太史慈朱治・呂範が武器を掲げる。
 凌操凌統父子が泣きながら先鋒に向かっていく。
 孫家の旗が、雄々しく翻った。



「ふん、孫家の若造が我らに喧嘩を売りおった」
 兵が、静かに黄祖の言葉を聞く。
「知っての通りだ。孫策は、強い。あの袁術を平らげたのだからな。だが……」
 我らの方が――強い。
 皆が、笑った。
「これが、劉表の元での最後の戦だ。皆、好きなように暴れろ。水軍、最強。それこそが我らの誉れなれば。叔父上――」
 黄忠に、顔を向ける。
 黄忠が、弓を引き絞る。
 矢を、天に向かって放った。
 影が、落ちてくる。白鷺。
 首を、射ていた。
 それは、劉表の旗に落ちた。
「へ、野郎共! ご託はどうでもいい! てめえらぁぁ! 殺して殺して殺しまくれぇぇぇ!!!」
 轟。
 燃える。
 甘寧に、煽られる。既に、狂気に冒されている。
 劉表の元での最後の戦。
 確かに黄祖はそう言った。
 

 
 長江水戦。
 孫策軍先鋒、凌操凌統父子。
 黄祖軍先鋒、甘寧黄忠
 開戦。