小説置き場2

山岳に寺社仏閣に両生類に爬虫類に妖怪に三国志にetcetc

思案中思考中2

「うーっとね、何で戦しちゃいけないの? だって、攻めてきたんだよ? 攻められているんだよ?」
「まだ、会話という手段が残っています! 交渉の余地はあるはずです!」
「ああ、うん。遅いよねー、もう。だって、始まってるんだもの」
「命は平等です。違いますか? 国は違えど、同じ生きている人なのですよ。何とか、会話の席に」
「……うーん、自分でやってよ」
「!?」
「やれると思うなら、貴方がやってよ。
 今すぐに。こんなところで、私と話ししてないで。
 私、やれないから。
 それに、戦が嫌いって貴方は言うけど、私は好きだな。
 だって『主役』ちゃんが綺麗になるんだもの。
 『前太守』さんから引き継いだ黒狼軍を従える『主役』ちゃん。
 敵を殲滅して、血に濡れて帰ってきた『主役』ちゃん。
 ああ、惚れ惚れする。
 命を吸ってね、『主役』ちゃんは美しくなる。
 その姿を見ているだけで、私は幸せー」
「……く、狂ってる」
「狂ってる? そうかな? 私は、『主役』ちゃんが一番好きー。ただ、それだけなんだけどね?」
「『隣国』も、馬鹿じゃないはずです。まだ、間に合う」
「……ふぁ。私達は、北天群に住んでる。貴方は、陽州に住んでる。その違いだね」
「ど、どういう意味ですか?」
「うーん、自分で考えたら」
 けたけたけた。
「貴方は、人の命を」
「それは、あっちに言ってよ。
 『主役』ちゃんが攻め入ったことはないんだから。
 あっちにとくと聞かせてやってよ。
 そういう有り難い言葉は。ああ、でも……
 私を呼び出して、こんな無駄話をえんと聞かせてる貴方に、そんなこと出来る度胸はないか」
 けた、けたけたけた。

 主役の義妹
 主役と共に、前太守(前領主のこと)と白蛇の女妖に育てられた
 前太守が亡くなり、その片腕であった白蛇の女妖が姿を消した後は、北天群に関する政を一手に引き受ける
 齢十四過ぎの、小柄な娘。主役より、半年ぐらい年下。のんびりした喋り方
 落ち着きのある物腰、したたか
 前太守の教えの元、学問を修める。それは、凄まじい激情を抑えるためでもあった
 それに前太守と白蛇の女妖が気が付いたのは、二人が勝手に町に繰り出し、さらわれそうになったとき
 捕らえられた男達を、主役を傷つけたと、全員刺し殺したがため
 その時までは、主役と同じように武芸も学んでいた
 その日から、武芸を教えられなくなり、学問に重きを置くようになる
 主役が一番好きで、前太守と白蛇の女妖が二番目。それ以外はどうでもいいと思っている節がある
 それでも、群の統治を担っているのは、主役のため
 主役の背中を押すのは、まずこの人
 太守である主役と違い、無位無冠
 身体を動かすのは苦手で、あまり丈夫ではない。どっちにしろ、武芸はものに出来なかったなーと思っている
 白蛇の女妖とは、今も繋がりを持ち、どこにいるか知っているが、主役には教えていない
 上の会話は、新しい陽州牧の息子との会話

 

「陽州」
 国(名前未定)の北に位置し、北天群も入る

「北天群」
 国で最も北にあり、また、一番新しい群。前太守が独力でまとめあげた

「州、群」
 群→州の順に、大きな行政単位になる

「陽州牧の息子」
 新任の陽州牧(州を治める、地方行政官。この辺は三国志より)の長男。王族である。平和を愛し、戦を嫌い、軍を憎む。就任早々、陽州の軍を半分に減らそうとした。しかし、国境と魔獣を抱える北天群は反対する。妖人の集落が集まって群を成しているという独特の状況も一因であった。黒狼軍を引き連れ、州牧就任の祝いの言葉を述べにきた主役に、冷ややかな目を向ける