小説置き場2

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狼風奇譚~第8話~

「騎獣の提供感謝する、空彩殿・・・」
「本当に感謝しているのか?」
「本当だ・・・」
「ならいいがな」
「・・・」

「白狼様」
「なんだ・・・」
 気になることが、あった。
「神星派の会合場所まで、どのぐらいかかるのですか?」
 何も、聞いていない。準備も何も、していない。私が床に伏していた、というのもあるが。日が近づくにつれ、だんだんと気になってきた。ここに引き取られてから、旅行は初めてである。何かしなければ、いけないのではないだろうか。
「騎獣で三時間ぐらいか・・・」
「騎獣!?」
「ああ、空彩殿に貸してもらう手はずになっている。おとなしいから心配はない・・・」
「はあ・・・あの、準備とかはいらないのでしょうか?」
「特に必要ない・・・」
「はあ」
 こんな感じで、当日になった。皆と一緒に門の前で、空彩殿を待つ。空彩殿は、瑶殿の茶飲み友達で、獣人なのだそうだ。獣人を見るのは初めてである。失礼の無いようにしなければ。

「よう」
「お久し振り」
 瑶殿と空彩殿が、挨拶を交わしている。道三殿も挨拶をしている。白狼様は、あまり関心がなさそうだ。弟が、もの珍しそうに見ている。少しつねった。
「あんたらが白狼大師の弟子か?」
「あ、はい」
 空彩殿が、話しかけてきた。
「一応名乗っておくな。キツネビトの彩族が長、空彩だ。獣人なんて珍しいだろ」
「・・・はい」
「この近くには獣人なんていないもんな、まあ仲良くしてくれ」
 そういって、笑った。確かに狐、立っている狐。服の下の胸の膨らみで、女性だとわかる。
 また、瑶殿と話し始めた。今度は、白狼様も話しをしている。
「姉さま」
小さい声だ。
「どうした」
「初めてですね」
「ああ」
「いい人みたいですね」
「そうだな」

 しばらく談笑しているのを見ていると、白狼様が話しかけてきた。
「そろそろ行くか・・・」
「はい。空彩殿は?」
「しばらく、ここに滞在するそうだ。瑶殿と会うのも久しぶりだからな・・・」
 騎獣をみる。大きな犬だ。あくびをしていた。人なつっこそうな、目をしている。
「あまり、無茶な乗り方はするなよ」
「ああ・・・」
「行き先は教えておいたから大丈夫だと思うけど、一応な」
 なでてみる。頬をすりよせてきた。
「名前を教えてなかったな。大牙というんだ。覚えてやってくれ」
「よろしくな、大牙」
 うれしそうに、吠えた。
 背中に乗る。私が、後ろになった。ふわふわとして、気持ちがいい。
「行くぞ、しっかりつかまっていろ・・・」
「はい」
 言われたとおり、しっかりつかまる。顔がにやけそうになる。気を引き締める。
 大牙が、空に浮き始めた。手を振っていた皆が、だんだんと小さくなる。
 なんだか、緊張する・・・白狼様に迷惑をかけなければいいが・・・。