第二十二話(1)~鬼~
とすっという音がした。何かが、地面に下りる音。
同時に寺が霧に包まれる。寺の中にも霧は現れた。
巨大な影が門の前に停まった。さわさわ、さわさわ。
影は絶えず動いている。
巨大な影の背から大男が降り立つ。つかつかと寺の中に入る。
ひゅっという、霧を切り裂く風。
頭領が男の後ろに姿を現す。と同時に、短刀を男の喉元に当てた。
「なんの、ようじゃ」
「おいおい脅かすなよ」
汗が一滴、男の頬をつたう。
「勝手に入ってくる方が悪い」
そういうと、頭領は短刀を下ろした。
「で、なんのようじゃ、大嶽丸」
大嶽丸。獣の毛皮を纏った大男。その額に一本角。
鬼姫鈴鹿御前の義兄である。
「うちの姫様からこちらの姫様に伝言だよ」
「じゃあ、私が直接」
姫様が霧をかき分け姿を現す。右手で頭をさすっていた。
「どうした、頭押さえて」
「霧のせいで前が見えなくなって・・・・・・ちょっと棚に頭を・・・」
大獄丸が頭領を見る。
「それで怒ってたのか・・・」
「ふん!」
「うちの姫様が「こっちに遊びにこない?」だそうだ」
寺の居間。皆、そこに集まっていた。
「鈴鹿様が・・・・・・うん、いいですね」
「で、悪いけど二人分しか席ないんだわ」
「そうですか。朱桜ちゃん、こっちに来てから遠出したことないよね?一緒に行きませんか?」
「はい」
「皆、ごめんなさいね」
「は~い。いや、残念だな~」
「いや、行きたかったな~」
「残念残念」
白々しい声。どうやら余り行きたくないらしい。
「じゃあ、お出かけする準備しましょうか。葉子さん、手伝ってくれます?」
「あい、よろこんで」
「じゃあ、俺門の所に居るから」
「はい」
「これ良いんじゃないですか」
「こっちはどう」
姫様が白い着物。銀狐は青い着物を差し出す。
「彩花さまのを」
即答だった。
「・・・・・・」
銀狐のしかめっ面。
牛鬼。鬼の顔、牛の胴、蜘蛛の足。
牛車を引っ張っていた。大獄丸は既に牛鬼の上に。
「これに乗るんですか」
「そっか、朱桜ちゃん初めてだもんね」
西の鬼さんは鬼馬ばかり使うから、と。
「大丈夫、怖くないよ。鬼馬より乗り心地良いですし。景色は楽しめませんけど」
「その子、西のもんか」
「ええ、そんなところです。さ、朱桜ちゃん、早く乗ろ?」
「はい」
同時に寺が霧に包まれる。寺の中にも霧は現れた。
巨大な影が門の前に停まった。さわさわ、さわさわ。
影は絶えず動いている。
巨大な影の背から大男が降り立つ。つかつかと寺の中に入る。
ひゅっという、霧を切り裂く風。
頭領が男の後ろに姿を現す。と同時に、短刀を男の喉元に当てた。
「なんの、ようじゃ」
「おいおい脅かすなよ」
汗が一滴、男の頬をつたう。
「勝手に入ってくる方が悪い」
そういうと、頭領は短刀を下ろした。
「で、なんのようじゃ、大嶽丸」
大嶽丸。獣の毛皮を纏った大男。その額に一本角。
鬼姫鈴鹿御前の義兄である。
「うちの姫様からこちらの姫様に伝言だよ」
「じゃあ、私が直接」
姫様が霧をかき分け姿を現す。右手で頭をさすっていた。
「どうした、頭押さえて」
「霧のせいで前が見えなくなって・・・・・・ちょっと棚に頭を・・・」
大獄丸が頭領を見る。
「それで怒ってたのか・・・」
「ふん!」
「うちの姫様が「こっちに遊びにこない?」だそうだ」
寺の居間。皆、そこに集まっていた。
「鈴鹿様が・・・・・・うん、いいですね」
「で、悪いけど二人分しか席ないんだわ」
「そうですか。朱桜ちゃん、こっちに来てから遠出したことないよね?一緒に行きませんか?」
「はい」
「皆、ごめんなさいね」
「は~い。いや、残念だな~」
「いや、行きたかったな~」
「残念残念」
白々しい声。どうやら余り行きたくないらしい。
「じゃあ、お出かけする準備しましょうか。葉子さん、手伝ってくれます?」
「あい、よろこんで」
「じゃあ、俺門の所に居るから」
「はい」
「これ良いんじゃないですか」
「こっちはどう」
姫様が白い着物。銀狐は青い着物を差し出す。
「彩花さまのを」
即答だった。
「・・・・・・」
銀狐のしかめっ面。
牛鬼。鬼の顔、牛の胴、蜘蛛の足。
牛車を引っ張っていた。大獄丸は既に牛鬼の上に。
「これに乗るんですか」
「そっか、朱桜ちゃん初めてだもんね」
西の鬼さんは鬼馬ばかり使うから、と。
「大丈夫、怖くないよ。鬼馬より乗り心地良いですし。景色は楽しめませんけど」
「その子、西のもんか」
「ええ、そんなところです。さ、朱桜ちゃん、早く乗ろ?」
「はい」