愉快な呂布一家~呂布、見参~
目の前に小高い丘が見える。
その丘の上をたくさんの人間が動いている。
「やっと、だね……」
そう言うと劉備は立ち止まった。
後ろを振り返ると、大男が二人近づいてくる。
二人は傷をほとんど負っていない。
袁術軍が、止まった。明らかに怯んでいる。
追撃をやめ陣を敷き直している。
関羽が、劉備軍に指示を出し始めた。
豪族の兵はほとんどいなくなっていた。
陳到の姿を探した。
見つからなかった。
兵が、ざわめきはじめた。
丘から黒い獣が下りてくる。
漆黒の、騎馬隊。
真っ赤な馬が、先頭であった。
劉備軍の兵達がどよめきながら、二つに分かれていく。
劉備と関羽と張飛。
この三人だけが、獣の前に立った。
獣も、歩みを止めた。
二人、さらに前に出てくる。
呂布、そして陳宮であった。
「やあ、呂布さん」
「劉備さん、ご家族のみなさんは無事です」
「そうかい」
「劉備殿は、元々小沛の城にいられましたな」
陳宮がいった。
陶謙の救援に駈けつけたとき、劉備に与えられたのが小沛の城だった。
「そうだよ、陳宮どん」
「それでは、よろしいですね。元のとおりということで」
失ったのか、そう劉備は思った。
「……そうだね……。呂布さん」
「は、はい」
「あんがと、家族のこと」
「い、いえ」
これで終わりというように、劉備は馬を進めた。
呂布、陳宮とすれ違った。
陳宮がすれ違いざまに笑みを浮かべたのを、劉備は見逃さなかった。
劉備も、心の中で笑っていた。
「呂布……」
袁術はうめいた。
漆黒の騎馬隊が、劉備軍を二つに割って、近づいてくる。
一度止まり、また動き出した。
軍に動揺が走っていた。
汗が、じっと滲んでくる。
黒い獣が止まった。
一人だけ、真っ赤な馬だけ、その歩みを止めなかった。
袁術軍から一人飛び出した。
「紀霊!」
紀霊が、真っ赤な馬の乗り手に駈けだしていった。
その丘の上をたくさんの人間が動いている。
「やっと、だね……」
そう言うと劉備は立ち止まった。
後ろを振り返ると、大男が二人近づいてくる。
二人は傷をほとんど負っていない。
袁術軍が、止まった。明らかに怯んでいる。
追撃をやめ陣を敷き直している。
関羽が、劉備軍に指示を出し始めた。
豪族の兵はほとんどいなくなっていた。
陳到の姿を探した。
見つからなかった。
兵が、ざわめきはじめた。
丘から黒い獣が下りてくる。
漆黒の、騎馬隊。
真っ赤な馬が、先頭であった。
劉備軍の兵達がどよめきながら、二つに分かれていく。
劉備と関羽と張飛。
この三人だけが、獣の前に立った。
獣も、歩みを止めた。
二人、さらに前に出てくる。
呂布、そして陳宮であった。
「やあ、呂布さん」
「劉備さん、ご家族のみなさんは無事です」
「そうかい」
「劉備殿は、元々小沛の城にいられましたな」
陳宮がいった。
陶謙の救援に駈けつけたとき、劉備に与えられたのが小沛の城だった。
「そうだよ、陳宮どん」
「それでは、よろしいですね。元のとおりということで」
失ったのか、そう劉備は思った。
「……そうだね……。呂布さん」
「は、はい」
「あんがと、家族のこと」
「い、いえ」
これで終わりというように、劉備は馬を進めた。
呂布、陳宮とすれ違った。
陳宮がすれ違いざまに笑みを浮かべたのを、劉備は見逃さなかった。
劉備も、心の中で笑っていた。
「呂布……」
袁術はうめいた。
漆黒の騎馬隊が、劉備軍を二つに割って、近づいてくる。
一度止まり、また動き出した。
軍に動揺が走っていた。
汗が、じっと滲んでくる。
黒い獣が止まった。
一人だけ、真っ赤な馬だけ、その歩みを止めなかった。
袁術軍から一人飛び出した。
「紀霊!」
紀霊が、真っ赤な馬の乗り手に駈けだしていった。