愉快な呂布一家~戦姫~
戦場の風。
心地良かった。その風に、目をつぶって身を任せた。
日の光が、呂布の黒い具足を照らす。
赤兎が、上下に揺れる。
それにあわせて、身体が上下に揺れる。
軽く握った手綱から、早く走らせろという、思いが伝わってくる。
まだだよ、と念を送る。たてがみを優しく撫でてやる。
戦場だ、と呂布は思った。
生きている、そう実感できた。だから戦場が好きだった。
昔から好きだった。
数え切れないほど戦ってきた。これからも、戦う。
それが自分の生きている証だと思うからだ。
殺して。ころして。コロシテ。
天下など本当はどうでもよいのかもしれない。
平和な世界を見てみたい。本心だけれど、自分がそれを治めている姿は想像出来なかった。
でも、陳宮が、見たいと言った。
貂蝉が、見たいと言った。
高順が、見たいと言った。
張遼が、見たいと言った。
魏続が、宋憲が、侯成が、見たいと言った。
だから、目指してみようと思った。
そうすれば、戦える、生きていられる。
麾下の騎馬隊は、止めさせた。心配する陳宮に、
「いいからいいから」
と返事をした。
単騎で歩む。
前は、よく単騎で駈けて、丁原に怒られたものだった。
あの優しい怒鳴り声は、もう聞けない。
目を開ける。日差しが、眩しい。
一騎、向かってくるのが見えた。
ふっと、呂布は笑みをこぼした。
いい目をしていると思った。
刺すような、視線。
殺気に満ち溢れている。
心地よい憎しみ。
また、目をつむった。
赤兎に、「もう、いいよ」と話しかけた。
赤兎が、歩を早めた。走り出した。
風と一体になった。
迅い。風を、斬る。
戦場にいる者全てが、声を出せなくなった。
劉備も、袁術も、固唾を飲んで見守った。
一騎討ち。
一瞬、音が世界から消えた。
二人がすれ違う。
呂布はまだ目を閉じていた。
かつかつと、赤兎がまた歩きだした。
主をその背からなくした馬が、袁術軍に向かって逃げていく。
呂布は目を開けると、馬首を返す。
叩き落とした相手に近づいていった。
心地良かった。その風に、目をつぶって身を任せた。
日の光が、呂布の黒い具足を照らす。
赤兎が、上下に揺れる。
それにあわせて、身体が上下に揺れる。
軽く握った手綱から、早く走らせろという、思いが伝わってくる。
まだだよ、と念を送る。たてがみを優しく撫でてやる。
戦場だ、と呂布は思った。
生きている、そう実感できた。だから戦場が好きだった。
昔から好きだった。
数え切れないほど戦ってきた。これからも、戦う。
それが自分の生きている証だと思うからだ。
殺して。ころして。コロシテ。
天下など本当はどうでもよいのかもしれない。
平和な世界を見てみたい。本心だけれど、自分がそれを治めている姿は想像出来なかった。
でも、陳宮が、見たいと言った。
貂蝉が、見たいと言った。
高順が、見たいと言った。
張遼が、見たいと言った。
魏続が、宋憲が、侯成が、見たいと言った。
だから、目指してみようと思った。
そうすれば、戦える、生きていられる。
麾下の騎馬隊は、止めさせた。心配する陳宮に、
「いいからいいから」
と返事をした。
単騎で歩む。
前は、よく単騎で駈けて、丁原に怒られたものだった。
あの優しい怒鳴り声は、もう聞けない。
目を開ける。日差しが、眩しい。
一騎、向かってくるのが見えた。
ふっと、呂布は笑みをこぼした。
いい目をしていると思った。
刺すような、視線。
殺気に満ち溢れている。
心地よい憎しみ。
また、目をつむった。
赤兎に、「もう、いいよ」と話しかけた。
赤兎が、歩を早めた。走り出した。
風と一体になった。
迅い。風を、斬る。
戦場にいる者全てが、声を出せなくなった。
劉備も、袁術も、固唾を飲んで見守った。
一騎討ち。
一瞬、音が世界から消えた。
二人がすれ違う。
呂布はまだ目を閉じていた。
かつかつと、赤兎がまた歩きだした。
主をその背からなくした馬が、袁術軍に向かって逃げていく。
呂布は目を開けると、馬首を返す。
叩き落とした相手に近づいていった。