徐州の戦(5)
高順「いける! あとは、呂布殿がくれば!」
崩しに、崩した。既に、三つの軍を潰走させた。
しぶとく生き残っている軍も、もう間もなく潰せる。
そのとき、魏続の軍と呂布殿の軍が加われば……
高順は、自分の軍を一旦止めた。
代わりに、宋憲と侯成の軍が残っていた軍に突撃していく。
貫いた。潰走させた。
これで、五分と五分。そう思った。
ここからが、勝負だ。
呂布殿は、前の戦で圧倒的な武勇を振われた。
それが、生きてくる。
狂気と恐怖が加速する。
高順「いける! 勝て……あれは?」
馬を懸命に走らせている。味方の兵。
動いたのかと、高順は思った。
だが、違った。
高順の、予想外のことを、伝令は話した。
魏続配下「こ、高順様!!! 陳珪が裏切りました! 呂布様が重傷を負って、それで、それで」
高順「なに? なにを、言っているんだ、お前?」
魏続配下「夏惇侯、夏侯淵もその後ろより参戦!」
高順「う、嘘だ!」
高順が、その兵を殴りつけた。罪なき伝令は、馬から落ちた。
その兵は、泣いていた。
魏続配下「う、嘘では、ございません! ご自分の目で確かめて下さい!」
言われる前に、後方にいった。
その、惨状をみた。魏続の軍が、食い破られつつある。
兵力差に負けることなく、懸命に戦っていた。
宋憲「こ、高順殿!」
侯成「い、一体これは!」
二人とも、泣きそうな顔をしていた。どうしていいか、わからないのだ。
高順は、唇を噛みしめていた。血が流れ落ちるほど、噛みしめていた。
魏続配下「高順様!」
高順「呂布、殿は?」
魏続配下「私たちの軍に! ですが……」
高順「魏続、よくやった! 退くぞ!」
辛い戦になる。そう思った。
曹操軍本隊も、動き出す。確実に。
いや……
宋憲「動いてやがる……」
既に、動いていた。
許楮・典韋率いる精兵騎馬隊、虎彪騎。
狂猛たる青州黄巾兵。
そして、関羽・張飛の二傑。
高順「……いくぞ! 下邳城に戻る! みな、後ろをみるな!」
一体、何人生き残れるか……高順は、そのことを考えた。
貂蝉の美しい横顔が、脳裏を、よぎった。
張遼「呂布姉さまが! 嘘! 嘘いうな、馬鹿!」
魏続配下「嘘では……」
張遼「……その、舌?」
青白い、闘気があがった。
張遼が、青龍刀を伝令の顔に突きつけた。
それを、大斧が阻む。
臧覇「張遼!」
張遼「臧覇! 止めないで! こんな嘘つき! 舌を斬ってから、殺してやる!」
やっぱり、主の義妹だと臧覇は思った。
狂気が、同じだ。
だが、押さえられないほどじゃない。
臧覇「落ち着け! 見ろ! あれを!」
張遼「……見えない……」
臧覇「馬鹿! 見えてるんだろ! 高順さんの軍も退き始めてる! 俺たちも退くぞ! いいな!」
張遼「う、うん」
臧覇「退け! 退け!」
張遼「ぞ、臧覇……」
狂気が、消え失せていた。
そこにいるのは、年相応の、幼い少女。
臧覇「なんだ?」
張遼「りょ、呂布姉さま、ヒック! ヒック! だ、大丈夫だよね? 大丈夫、だよね?」
その問いに、臧覇は答えられなかった。
彼女たちも、傷ついた主に合流しようとした。
だが、出来なかった。
曹仁と、曹洪。
二人の軍は、士気に揺らぎが見えた張遼軍の行く手を、完全に阻んだのだ。
彼女たちは、小沛に流れるしかなかった。
だが、小沛を任されていたのは……
崩しに、崩した。既に、三つの軍を潰走させた。
しぶとく生き残っている軍も、もう間もなく潰せる。
そのとき、魏続の軍と呂布殿の軍が加われば……
高順は、自分の軍を一旦止めた。
代わりに、宋憲と侯成の軍が残っていた軍に突撃していく。
貫いた。潰走させた。
これで、五分と五分。そう思った。
ここからが、勝負だ。
呂布殿は、前の戦で圧倒的な武勇を振われた。
それが、生きてくる。
狂気と恐怖が加速する。
高順「いける! 勝て……あれは?」
馬を懸命に走らせている。味方の兵。
動いたのかと、高順は思った。
だが、違った。
高順の、予想外のことを、伝令は話した。
魏続配下「こ、高順様!!! 陳珪が裏切りました! 呂布様が重傷を負って、それで、それで」
高順「なに? なにを、言っているんだ、お前?」
魏続配下「夏惇侯、夏侯淵もその後ろより参戦!」
高順「う、嘘だ!」
高順が、その兵を殴りつけた。罪なき伝令は、馬から落ちた。
その兵は、泣いていた。
魏続配下「う、嘘では、ございません! ご自分の目で確かめて下さい!」
言われる前に、後方にいった。
その、惨状をみた。魏続の軍が、食い破られつつある。
兵力差に負けることなく、懸命に戦っていた。
宋憲「こ、高順殿!」
侯成「い、一体これは!」
二人とも、泣きそうな顔をしていた。どうしていいか、わからないのだ。
高順は、唇を噛みしめていた。血が流れ落ちるほど、噛みしめていた。
魏続配下「高順様!」
高順「呂布、殿は?」
魏続配下「私たちの軍に! ですが……」
高順「魏続、よくやった! 退くぞ!」
辛い戦になる。そう思った。
曹操軍本隊も、動き出す。確実に。
いや……
宋憲「動いてやがる……」
既に、動いていた。
許楮・典韋率いる精兵騎馬隊、虎彪騎。
狂猛たる青州黄巾兵。
そして、関羽・張飛の二傑。
高順「……いくぞ! 下邳城に戻る! みな、後ろをみるな!」
一体、何人生き残れるか……高順は、そのことを考えた。
貂蝉の美しい横顔が、脳裏を、よぎった。
張遼「呂布姉さまが! 嘘! 嘘いうな、馬鹿!」
魏続配下「嘘では……」
張遼「……その、舌?」
青白い、闘気があがった。
張遼が、青龍刀を伝令の顔に突きつけた。
それを、大斧が阻む。
臧覇「張遼!」
張遼「臧覇! 止めないで! こんな嘘つき! 舌を斬ってから、殺してやる!」
やっぱり、主の義妹だと臧覇は思った。
狂気が、同じだ。
だが、押さえられないほどじゃない。
臧覇「落ち着け! 見ろ! あれを!」
張遼「……見えない……」
臧覇「馬鹿! 見えてるんだろ! 高順さんの軍も退き始めてる! 俺たちも退くぞ! いいな!」
張遼「う、うん」
臧覇「退け! 退け!」
張遼「ぞ、臧覇……」
狂気が、消え失せていた。
そこにいるのは、年相応の、幼い少女。
臧覇「なんだ?」
張遼「りょ、呂布姉さま、ヒック! ヒック! だ、大丈夫だよね? 大丈夫、だよね?」
その問いに、臧覇は答えられなかった。
彼女たちも、傷ついた主に合流しようとした。
だが、出来なかった。
曹仁と、曹洪。
二人の軍は、士気に揺らぎが見えた張遼軍の行く手を、完全に阻んだのだ。
彼女たちは、小沛に流れるしかなかった。
だが、小沛を任されていたのは……