愉快な呂布一家~お泊まり(1)~
西域につながる小さな宿場街。
人と人が、物と物が、いき交いゆき交い、それなりに繁盛して。
その街の、ほどほどの大きさの宿。
そこに結構な数の団体客がいた。
皆、お揃いの薄茶の緩やかな服を着て、フードで顔を隠していた。
通りかかる人は、はて、と訝しげな顔。
義勇軍か、何かだろうか?
こんな田舎に、まあ……
一人の人間が、宿屋の主人と交渉中。
話し終えると、その奇妙な団体の元へいく。
にこやかに、言った。
「というわけで、今日は宿に泊まれる事になりました」
陳宮の発表にやったーと呂布と張遼が手と手を取り合って。
そう、この方々は例のあの呂布さん御一行である。
「やったね、貂蝉姉様! 雛さん! 久し振りのお布団だあー!」
「ちょ、呂布さま……」
赤子をあやしながら、貂蝉が呂布をたしなめる。
呂布があぐっと口を押さえた。
「陳宮殿、それで、部屋は?」
貂蝉と同じく赤子をあやしながら、鼻の上に横一文字の傷を持つ男、高順が言った。
「それでですね、二人部屋が二つ、大部屋が一つ。それだけなんです」
「はあ!」
「えー!」
「ちょっと待て、そりゃないぜ陳宮さんよお!」
臧覇、魏延、胡車児が順番に文句を。
賈詡、張繍がやれやれと。
「しょうがないでしょう、それだけしか取れなかったんだから! 嫌なら、また野宿ですが!」
「む……」
臧覇、魏延、胡車児。
ごめんなさい。
「なら、よろしい」
陳宮が言った。
「えっと、じゃあねえ、部屋割りはね……みんなでくじ引き! やっぱりくじ引きだよね! ここは公平にね!」
呂布の無邪気な提案に、皆の衆、しばらく無言。
とりあえず、くじ引きねえ~っと考える。
それから、陳宮が、
「いやいや! それ駄目でしょう!」
そう、大きな声で言った。
「えー、なんでー」
むすっと口を尖らせると、ねえ、貂蝉姉様と同意を求める。
「うーん……駄目かなあ……」
「貂蝉姉様まで……高順」
「いやー、やっぱりみんなってのは……」
「張遼」
「わたしは、呂布姉さまにさんせーい」
「だよね! だよね!」
きゃっきゃっとはしゃぐ。
「あのー呂布さま、もしかして呂布さまって、くじ引きがしたいだけですか?」
「……」
ああ、図星だなっと皆が思った。
「ええっとですね、呂布さま、貂蝉さん、張遼さん、雛さんが二人部屋で、その他の面々は一緒くたってことでいかがでしょうか?」
まあ、妥当なところかと高順が頷く。
そうだよねえ~、っと、ちょっと顔を赤らめながら魏延が。
「……くじ……引き……」
呂布がいった。
「あ、あの、二人部屋に誰と誰のペアにするかくじ引きで決めれば……」
今まで静かにこの喧騒を見守っていた雛が、やっと口を出した。
「……なる、ほど! そうだね!」
それなら、いいやと、呂布がいった。
屋根を駆ける怪しい影。
それは、「あの」宿の上に。
その影二つはさえずり出す
「ここか?」
「ええ、確かに、ここです」
「ふ、ついに、だな。夜まで、待つぞ」
「え、まじで?」
「当たり前だ! 何のために城を抜けだしここまで来たのだ!」
「で、ですが……」
「ああ、もう!」
「わ、分かりましたよ! 夜まで待てばよいのでしょう!」
「わかればよいのだ」
「はあ……」
「心配するな! きっと上手くいく!」
「……どうだかなあ……」
人と人が、物と物が、いき交いゆき交い、それなりに繁盛して。
その街の、ほどほどの大きさの宿。
そこに結構な数の団体客がいた。
皆、お揃いの薄茶の緩やかな服を着て、フードで顔を隠していた。
通りかかる人は、はて、と訝しげな顔。
義勇軍か、何かだろうか?
こんな田舎に、まあ……
一人の人間が、宿屋の主人と交渉中。
話し終えると、その奇妙な団体の元へいく。
にこやかに、言った。
「というわけで、今日は宿に泊まれる事になりました」
陳宮の発表にやったーと呂布と張遼が手と手を取り合って。
そう、この方々は例のあの呂布さん御一行である。
「やったね、貂蝉姉様! 雛さん! 久し振りのお布団だあー!」
「ちょ、呂布さま……」
赤子をあやしながら、貂蝉が呂布をたしなめる。
呂布があぐっと口を押さえた。
「陳宮殿、それで、部屋は?」
貂蝉と同じく赤子をあやしながら、鼻の上に横一文字の傷を持つ男、高順が言った。
「それでですね、二人部屋が二つ、大部屋が一つ。それだけなんです」
「はあ!」
「えー!」
「ちょっと待て、そりゃないぜ陳宮さんよお!」
臧覇、魏延、胡車児が順番に文句を。
賈詡、張繍がやれやれと。
「しょうがないでしょう、それだけしか取れなかったんだから! 嫌なら、また野宿ですが!」
「む……」
臧覇、魏延、胡車児。
ごめんなさい。
「なら、よろしい」
陳宮が言った。
「えっと、じゃあねえ、部屋割りはね……みんなでくじ引き! やっぱりくじ引きだよね! ここは公平にね!」
呂布の無邪気な提案に、皆の衆、しばらく無言。
とりあえず、くじ引きねえ~っと考える。
それから、陳宮が、
「いやいや! それ駄目でしょう!」
そう、大きな声で言った。
「えー、なんでー」
むすっと口を尖らせると、ねえ、貂蝉姉様と同意を求める。
「うーん……駄目かなあ……」
「貂蝉姉様まで……高順」
「いやー、やっぱりみんなってのは……」
「張遼」
「わたしは、呂布姉さまにさんせーい」
「だよね! だよね!」
きゃっきゃっとはしゃぐ。
「あのー呂布さま、もしかして呂布さまって、くじ引きがしたいだけですか?」
「……」
ああ、図星だなっと皆が思った。
「ええっとですね、呂布さま、貂蝉さん、張遼さん、雛さんが二人部屋で、その他の面々は一緒くたってことでいかがでしょうか?」
まあ、妥当なところかと高順が頷く。
そうだよねえ~、っと、ちょっと顔を赤らめながら魏延が。
「……くじ……引き……」
呂布がいった。
「あ、あの、二人部屋に誰と誰のペアにするかくじ引きで決めれば……」
今まで静かにこの喧騒を見守っていた雛が、やっと口を出した。
「……なる、ほど! そうだね!」
それなら、いいやと、呂布がいった。
屋根を駆ける怪しい影。
それは、「あの」宿の上に。
その影二つはさえずり出す
「ここか?」
「ええ、確かに、ここです」
「ふ、ついに、だな。夜まで、待つぞ」
「え、まじで?」
「当たり前だ! 何のために城を抜けだしここまで来たのだ!」
「で、ですが……」
「ああ、もう!」
「わ、分かりましたよ! 夜まで待てばよいのでしょう!」
「わかればよいのだ」
「はあ……」
「心配するな! きっと上手くいく!」
「……どうだかなあ……」