小説置き場2

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愉快な呂布一家~お泊まり(2)~

「えっと、高順殿、それでどうなったのです部屋割りは」
呂布殿と張遼殿、貂蝉さまと雛殿だそうだ」
 風呂上がりの牛乳を飲みながら、高順が陳宮に。
 飲むか? ときかれ、私はこっちと小銭を出して果物牛乳を売店のおじさんに受け取る。
「大浴場……まあまあだな」
「……そこ! はしゃぎすぎ!」
 ごくごくと果物牛乳を飲みながら風呂場に顔を出すと、湯をばしゃばしゃ掛け合っていた臧覇魏延張繍に注意した。
「ごめんなさーい」
「いや、俺は仕方なくだな……」
「わ、私も魏延君に無理に誘われてですね……」
 魏延が、しょぼーんとなった。う、裏切られたと。
「二人とも、無茶苦茶楽しそうだったではないか」
 ごとっと瓶を置いて、高順が。
「……わ、わりい……」
「すみません……」
「全く、賈詡殿、胡車児殿も注意を……あれ?」
 風呂場の隅で、なにやら話している二人。
 はてなと聞き耳を立てる。
 全員が視線を互いに合わせ、頷きあうと、気配を消して、二人に近づく。
 見事なもの。それも当然。
 五人が五人、一軍を率いられる猛者ばかり、なのだ。
 それはまっこと幼い魏延も一緒。
 このぐらいの芸当、お手の物、なのである。
「で、どうだ、そういう技ないのか」
「ないことはない」
「お、じゃあ、教えろ。こんなチャンスなかなかないぞ!」
「それがしは……」
 隣の風呂場から、呂布さん一行の声がした。
「うーん」
「馬鹿野郎! 男ならのぞ」
「のぞって、なんだ、胡車児
 唐突に冷徹な声がして、胡車児はぎくしゃくと鉄のように首を背に向けた。
 とりあえず、顔が青ざめる。
「なあ、賈詡殿」
 高順が言った。
「ま、まて、私はまだ」
 賈詡がぶんぶんと首を振る。胡車児はガクブルガクブル。心臓、鷲掴み。
 生きた心地がしません。
「「「「「問答無用! シネー!!!!!ヽ(`Д´)ノヽ(`Д´)ノヽ(`Д´)ノヽ(`Д´)ノヽ(`Д´)ノ」」」」」
「「エー!!ヽ(´Д`ヽ ミ ノ´Д`)ノ」」
 わーい、大変修羅場。



「隣が騒がしいわね」
「む、すごい殺気です貂蝉姉様!」
「そ、そんな……ど、どうしましょう?」
 おどおどしながら、雛が言った。
「殿方のこと、放っておけばよろしいですわ。張遼、頭洗ってあげるからこっちに来なさい」
 赤子を洗いながら、手招き、する。
「そうだね~。は~い」
「……三人がいたら、もっと騒がしいのかな」
 呂布が、ふっと寂しそうに言った。
 時間が、止まったような気がした。



「柔らかーい!」
「ねえー」
 お揃いの寝間着をまとい、ぽふぽふと寝台の上で跳ねる少女達。
 呂布は、髪を下ろしていた。
「えいや!」
 張遼が、枕を投げた。
「やったなー!」
 呂布が、枕を投げ返した。
「遊んでますねー」
 赤子の小さな手に、自分の指を絡ませながら雛が言った
「そうですねー」
 髪をとかしながら、鏡台の前で貂蝉が答える。
「信じられませんわ……」
「はい?」
 貂蝉がその手を止めた。
「一体、何がですか?」
呂布さまと張遼さま、あんなに幼いのに……もう幾度も戦を経験なさっているのですね……」
「そうですね……」
「信じられませんわ……」
「……」
「あれ?」
「……音が、変わった?」



「やったなー!(´;ω;`)っI」
呂布姉さまこそ!(´;ω;`)っI」
「武器を使うなー!!!」
 バン! っと勢いよくドアを開けると大声で怒鳴る美しい悪鬼。
 さっと、互いの得物を隠すと、呂布張遼がえへへと泣き笑いを浮かべる。
 おどおどと、雛は貂蝉の後ろから覗き見を。
 腕を組んで、はっと溜息をつくと、
「全く、二人とも子供……待って下さい……」
 貂蝉が、なにやら考え事。
 うん?
「もしかして、高順さま達……」
「あ!?」
「ふにゅ?」
「まさか、そんな……」
「ありえ、ますわ……」
 一同、男衆の元へ移動。
 ドアを開けると、やっぱりと。
「くらえ、賈詡殿ー!」
「ふ、無駄だ」
 高順、枕を投げる。
 賈詡にぶつかる。
「ふ、他愛も……なにぃ!」
 驚愕!
 なんと、賈詡が同じチームの臧覇にすり替わっていたのだ!
「ど、どういうことだ!」
「変わり身の術……」
 枕を持って呟く賈詡。
 その後頭部に、新たな枕がぶつけられた。
「なにぃ!?」
「軍師を、舐めないで頂きたい……」
陳宮……貴様……」
「その動き、私が見切った!」
「えい!」
「あ……」
 魏延の投げた枕に当たる軍師。
 しししと高順が笑った。
「むかー! 貴方仲間でしょうが!」
「いやーだってー」
「むきー!」
 沸点すれすれの陳宮
「そぉ! こぉ! まぁ! でぇ!!!」
 部屋に、木霊する大音声。
 みな、ぎゅっと耳を押さえた。
「ちょ、貂蝉さま……」
 ヒャー。
「いい大人が、一体何をやってるんですか?」
 ぴきぴきと、青筋を立てながら。
「いやー、そのー」
「い、戦の訓練なのです。ほら。高順殿、陳宮殿、臧覇君と、賈詡、胡車児魏延君に別れてですね……私は審判を」
張繍……情けない……」
「す、雛さまぁ!!!」
「明日も早いのです! とっとと寝なさい!!!!!!」
「ひゃ、ひゃい!!!」
 素早く後かたづけをすますと、みんな布団の中に潜ってガクガクブルブル。
 呂布張遼、にっこりと。
「貴方達も、ですよ」
「はーい」
 二人の、良い、返事。
 貂蝉と雛がにっこりと。