2006-10-19から1日間の記事一覧
街の外れ。そこで影は立ち止まった。 後ろには――二人の鬼の姿。 「さてと、観念、したようね」 「……大人しくしたほうがいいよ……死にたく、なければ」 「ぐ……」 「う、あー!」 また、光の糸が。 貂蝉も、同じ光の糸を。 今度は、完全に貂蝉が勝った。 糸は、…
「呂……呂布……」 口を、ぱくぱくとさせる二つの影。 目の前の事実が、信じられなくて。 「そんな、眠り薬……こいつも解毒剤を?」 「へ? なにそれ? あー、この甘い匂い?」 瞳を爛々と飢えた獣のように輝かせながら、無邪気に言った。 「殺気に反応して起き…
「な、なんで! 猫眠煙を吸って!」 甲高い声。少年とも、少女ともとれるような声を、小柄な影はだした。 「少々、慌てましたが、仕事柄この手の薬には、手慣れているので」 「ちっ……」 「一目で、眠り薬だとは。あとは、解毒剤を飲めばいい」 「はあ? ……ど…
「そろそろ……お腹が空く頃ね……」 ゆっくりと、布団から抜け出ると、貂蝉は愛する子共達のところへ。 隣のベッドの雛の安らかな寝顔に、 「……よかったですね……本当に。安心、したんですよ」 そういった。 「うん、待ってて……あれ? 窓、開けたっけ?」 窓が、…
「えっと、高順殿、それでどうなったのです部屋割りは」 「呂布殿と張遼殿、貂蝉さまと雛殿だそうだ」 風呂上がりの牛乳を飲みながら、高順が陳宮に。 飲むか? ときかれ、私はこっちと小銭を出して果物牛乳を売店のおじさんに受け取る。 「大浴場……まあまあ…
西域につながる小さな宿場街。 人と人が、物と物が、いき交いゆき交い、それなりに繁盛して。 その街の、ほどほどの大きさの宿。 そこに結構な数の団体客がいた。 皆、お揃いの薄茶の緩やかな服を着て、フードで顔を隠していた。 通りかかる人は、はて、と訝…