小説置き場2

山岳に寺社仏閣に両生類に爬虫類に妖怪に三国志にetcetc

愉快な呂布一家~侵入者(1)~

「そろそろ……お腹が空く頃ね……」
 ゆっくりと、布団から抜け出ると、貂蝉は愛する子共達のところへ。
 隣のベッドの雛の安らかな寝顔に、
「……よかったですね……本当に。安心、したんですよ」
 そういった。
「うん、待ってて……あれ? 窓、開けたっけ?」
 窓が、あいていた。
 おかしいなあっと。
 開けた覚え、ないのに。
 ないのに……
「まさか!」
 からんと、何かが投げ込まれた。竹筒。
 煙が噴き出る。
「嘘!」
 
 

 賈詡が異変に気づいてかっと目を見開いた。辺りを、甘い匂いの煙が立ちこめる。
 再度薄れゆく意識の中、奥歯を、がちりと噛んだ。
 その竹筒は、呂布一行が泊まる部屋全てに、投げ込まれた。



「もう……いいかな……」
「いいんですか? 呂布一行にだけ仕掛けて?」
「しょうがないの! これ三つしか持ってなかったんだから! それより、ちゃっちゃとやっちゃうよ!」
「へーい」
 怪しい人影が、貂蝉の部屋に。
 真っ黒な衣装。もちろん、顔も隠していて。
 一人は、目を見張るような巨体。
 もう一人は小柄。
 隣が大きいので、余計にそう、みえる。
 主なのは、どうやら小柄な影のようで。
「よしおし、よく眠ってるね」
 音を立てずに、さっと部屋に。
 ここは、三階。巨体の方も部屋に入る。
 すーっと、銀色に光る紐が、小柄な影の手に戻っていった。
「さ、探すわよ」
「……でも」
「やるの!」
「ひ!」
 小柄な影に、叱られて。
 二つの影は、あちこちそちこち。
 がさごそがさごそ。
 物色、である。
「へえ……健気だね……」
 小柄な影が言った。
 貂蝉は、我が子を守るかのように覆い被さっていた。
「……どう?」
「ないですなあ……」
「ないじゃないの! 絶対にあるはずだから」
 伝国の、玉璽。
 小柄な影はそう言った。
 そう、言ったとき、
「え?」
 すくっと、我が子を守るように倒れていた女が立ち上がる。
 桃色の着物に、妖艶な殺気を立ち上げながら、
「へえ……」
 と言った。
「目的は、 伝国の玉璽なのね……」