愉快な呂布一家~侵入者(3)~
「呂……呂布……」
口を、ぱくぱくとさせる二つの影。
目の前の事実が、信じられなくて。
「そんな、眠り薬……こいつも解毒剤を?」
「へ? なにそれ? あー、この甘い匂い?」
瞳を爛々と飢えた獣のように輝かせながら、無邪気に言った。
「殺気に反応して起きたのね……」
貂蝉が呟いた。
「……そ、そんな馬鹿な! 非常識な!……ば、化け物か!」
「あー、よく言われるよ! それで、殺っちゃっていいの? 貂蝉姉様?」
「……この方々の雇い主……ああ、まだいるとは決まったわけじゃないか。動機をはっきりさせるまでは、駄目ー」
「了ー解」
呂布が、方天画戟を突きつけた。
「……不利すぎだぁ! 逃げるぞお嬢!」
大きな影が、小さな影を抱えると、窓から飛び出した。
屋根を伝って逃げていく。
「待て!」
賈詡も、飛び出そうと。
それを貂蝉が止める。
「待って下さい。賈詡殿は皆を起こして下さい! まだ、敵は二人と決まったわけでは……それと……」
苦しげに、「四人」を見た。
「……わかった。雛さまと子供達は、皆は、私が」
賈詡が「四人」を抱えて穴を使って隣へ消えて。
「……追いましょう!」
呂布に、言った。
「うん!」
貂蝉が飛び出す。呂布も、飛び出した。
しかし、差はかなりある。貂蝉は、まだ薬が抜けきっていないのだ。
それを見て、呂布が口笛を吹いた。
きーんとする音。
貂蝉が、耳を押さえた。
「呂、呂布様!?」
「こっちの方が絶対早い! 乗って貂蝉姉様!」
ぼろーい着ぐるみを脱ぎ捨て主人の呼びかけに答えるは、燃え盛る紅蓮の毛を靡かせる呂布の相棒。
人中の呂布、馬中の――赤兎
「いくよー!」
「大分差は広がったか!」
「ちょっと周泰! なに逃げてんのよ!」
小さな影がじたばたと。
大きな影が、怒鳴ってみせる。
「お嬢! そんなこと言ってる場合か! 相手はあの呂布に桃色悪鬼……逃げるしかねえだろ!」
「で、でも……手ぶらで帰ったらあに様に怒られ……」
「孫策様、怒らないから! お嬢が死ぬより、ずっとまし!」
「で、でも……」
なおも、言いつのろうと。
吹き抜ける狂気と殺気。
恐る恐る後ろを振り返る。屋根を伝って赤い風が追いかけてくる。
その背には、二人にとって最悪の二人。
「……本当、何でもありだな……」
「いやー!」
口を、ぱくぱくとさせる二つの影。
目の前の事実が、信じられなくて。
「そんな、眠り薬……こいつも解毒剤を?」
「へ? なにそれ? あー、この甘い匂い?」
瞳を爛々と飢えた獣のように輝かせながら、無邪気に言った。
「殺気に反応して起きたのね……」
貂蝉が呟いた。
「……そ、そんな馬鹿な! 非常識な!……ば、化け物か!」
「あー、よく言われるよ! それで、殺っちゃっていいの? 貂蝉姉様?」
「……この方々の雇い主……ああ、まだいるとは決まったわけじゃないか。動機をはっきりさせるまでは、駄目ー」
「了ー解」
呂布が、方天画戟を突きつけた。
「……不利すぎだぁ! 逃げるぞお嬢!」
大きな影が、小さな影を抱えると、窓から飛び出した。
屋根を伝って逃げていく。
「待て!」
賈詡も、飛び出そうと。
それを貂蝉が止める。
「待って下さい。賈詡殿は皆を起こして下さい! まだ、敵は二人と決まったわけでは……それと……」
苦しげに、「四人」を見た。
「……わかった。雛さまと子供達は、皆は、私が」
賈詡が「四人」を抱えて穴を使って隣へ消えて。
「……追いましょう!」
呂布に、言った。
「うん!」
貂蝉が飛び出す。呂布も、飛び出した。
しかし、差はかなりある。貂蝉は、まだ薬が抜けきっていないのだ。
それを見て、呂布が口笛を吹いた。
きーんとする音。
貂蝉が、耳を押さえた。
「呂、呂布様!?」
「こっちの方が絶対早い! 乗って貂蝉姉様!」
ぼろーい着ぐるみを脱ぎ捨て主人の呼びかけに答えるは、燃え盛る紅蓮の毛を靡かせる呂布の相棒。
人中の呂布、馬中の――赤兎
「いくよー!」
「大分差は広がったか!」
「ちょっと周泰! なに逃げてんのよ!」
小さな影がじたばたと。
大きな影が、怒鳴ってみせる。
「お嬢! そんなこと言ってる場合か! 相手はあの呂布に桃色悪鬼……逃げるしかねえだろ!」
「で、でも……手ぶらで帰ったらあに様に怒られ……」
「孫策様、怒らないから! お嬢が死ぬより、ずっとまし!」
「で、でも……」
なおも、言いつのろうと。
吹き抜ける狂気と殺気。
恐る恐る後ろを振り返る。屋根を伝って赤い風が追いかけてくる。
その背には、二人にとって最悪の二人。
「……本当、何でもありだな……」
「いやー!」