小説置き場2

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狼風奇譚~第6話~

 少女の刀が、獅子を斬る。しかし、獅子は気にとめていないようだった。
 よける。斬る。よける。斬る。その、繰り返しだった。体力が、無くなってきていた。刀の光も、勢いをなくしつつあった。
「ここで、死ぬのか」
 また、獅子が突進してきた。よけようとした。よけきれなかった。蛇が、右腕にまとわりつく。神力が、なくなりつつある。
「蛇が、すいとっているのか」
 獅子がこちらを向いた。
「ここで、死ぬのか」
 また同じことを、いった。立ち上がる気力も、ない。白狼様に、もう一度会いたい。眼を閉じた。涙が、自然にこぼれた。
 獅子が、突進した。
「・・・・・・?」
 人の温もりを、感じた。まだ、生きている、のか。
「よく、頑張ったな・・・」
 白狼がいた。自分を抱きかかえていた。風華の右手に眼を向けると、蛇を無造作に引きちぎった。
「白狼様・・・・・・」
 それだけしか、いえなかった。そのまま、闇に落ちていった。
「風華!」
 道三が、叫んだ。
「気を、失っただけだ・・・」
 白狼が、答えた。同時に、背中の刀を抜いた。大きな刀だった。白狼の背と変わらない長さだった。
「風華を・・・」
 炎双に風華を渡すと、獅子に身体を向けた。刀が光り始めた。風華のよりも、もっとまばゆい光だった。
「轟!!!」
 獅子が、吼えた。蛇が威嚇した。白狼に突進した。
「絶」
 白狼が、刀を振る。光の洪水が、獅子を襲った。洪水のあとに、獅子の姿は残っていなかった。
「絶剣か」
 炎双が、白狼に尋ねる。白狼は、答えなかった。
「風華は?」
 道三が尋ねる。
「体力が落ち込んでいるが、大丈夫だろう」
「そうか・・・」
 炎双が、白狼に風華を渡した。
「大事な弟子だろ。お前が運んでやれ」
 なにか、いいたげだった。気にせず、炎双が、駈け始めた。道三も駈け始めた。
 仕方なく、白狼も駈け始める。風華を、抱えたまま・・・・・・