小説置き場2

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狼風奇譚~第7話~

 まぶしい・・・ここは・・・私はどうなっているのだ・・・
「姉さま!」
「小・・・狼?」
「よかっ・・・た」
 女の人が部屋の入り口に姿をみせた。
「風華ちゃん!」
「瑶・・・殿?」
「目を覚ましたのね。今、白狼殿と道三を呼んでくるから」
 瑶殿が、走っていく気配がした。
 弟が、泣いている。
 状況が、よく飲み込めない。
「獅子は・・・どうした?」
 そうだ。私は、魔獣と戦った。押されていた。死ぬ、そう思ったときに・・・
「やっと起きたか」
「道三小師・・・」
「大師に感謝しろよ」
 道三殿が、すこし笑っている・・・・・・大師。そうだ、「死ぬ」、そう思ったときに大師が現れて・・・

「私は、白狼様に助けられた?」
「まあ、そんなとこだな」
 一応、俺と炎双もいたがな。そう道三は付け加えた。
「白狼様に、助けられた・・・」
 不意に、情けなさがこみ上げてきた。結局、私はお役に立てなかったのか。
「お前は、よくがんばった・・・」
 白狼が、姿を見せた。優しい、顔をしていた。寝たままでは失礼だ、そう思った。起きあがろうとした。身体が、動かなかった。
「無理はするなよ。あれだけ、神力を使ったんだ。まだ3日だ。もう少し、寝たままだな」
 道三が口を挟んだ。
「3日、私はその間ずっと?」
「寝ていた、死んだようにな。皆、心配してたぞ」
「迷惑をおかけして、すみません」
「風華・・・」
「はい?」
 白狼様が、また、話しかけてきた。私は、おしかりの言葉を覚悟した。
「お前に、位を授けようと思う・・・」
「え?」
「いやか・・・?」
「え、いや、その」
 混乱、している。白狼様は、位を下さるといっている。でも、なぜ?私は、未熟で・・・
「お前は、あの獅子を私たちがくるまで持ちこたえた。資格は、十分だ・・・」
「は、はい」
 位。それを得るということは、仙界の住人たることを認められるということ。この私が・・・
「いやか・・・」
「い、いえ」
「そうか。十日後に、神星派の集まりがある。それまでに、身体を癒すがいい・・・」
 位を得る。つまり、白狼様の一門となる。前に白狼様がいっていた。一門といっても、自分一人だと。では、白狼様と二人だけの一門・・・。なにを考えている、少しおかしくなっているようだ。
「さてと、そろそろ風華ちゃんも疲れてきただろう?」
 瑶殿・・・疲れている。確かにそうだ。
「さあ、またおやすみ。まだ、回復していないんだから」
 でも、そういおうとしたが、瑶殿が目を覆う。闇になる。眠気が、襲ってくる。皆が、「おやすみ」そういったような気がした。もう、よくわからなかった。


「しかし、いきなり位を与えるといいだすとはな」
「風華は、よくやった・・・」
「そのために、神星派の集まりに、か」
「あまり、いきたくはないがな・・・」
「だいぶ、顔をだしてないしな。何を言われるやら」
「お前は・・・」
「もちろん、留守番だ。あんな面倒なとこはごめんこうむる」
「そうか・・・」
 残念そうな顔をしているな。だが、まあいいだろう。二人っきりで出かけるのも、たまには悪くあるまい。風華に、俺からも褒美をやらんといかんからな。
「炎双は、もう着いたかな・・・」
「そうだな」
「あれも、忙しいな・・・」
「大師連中は皆そんなもんだろう」
 正直、白狼が一番暇な大師だろう。それは、言わなかった。
「空彩に、騎獣を貸してもらうか・・・」
「俺から連絡をつけておこう」
「ありがたい・・・」
「・・・」
「で、どう思う、あの化け物のこと」
「よく、わからん。神星派の上の連中ならなにか知っているかもしれん・・・」
「教えてくれるかな」
「さあな・・・」
「・・・」
「帰ったら、宴会だな」
「ああ・・・」
 白狼が、少し微笑んだ。