小説置き場2

山岳に寺社仏閣に両生類に爬虫類に妖怪に三国志にetcetc

2007-04-17から1日間の記事一覧

あやかし姫番外編~やつあしとびわ(18)~

黒之丞は、瞬きせず、ずっと白蝉の顔を眺めていた。 白蝉は、笑っていた。 その笑顔を――綺麗だと思った。 何かを綺麗だと思ったのは、あの玉を見て以来であった。 「……琵琶の音」 ぽつりと、呟くように言った。 「琵琶が、どうかしましたか?」 「聞きたい」…

あやかし姫番外編~やつあしとびわ(17)~

きちちと鳴くと、黒之丞は人の姿に戻った。 右手がない。 左手で、蜘蛛の脚を草原に投げ捨てていく。 お前達の餌だと、呟きながら。 「白蝉」 「あ、はい」 女が、答えた。 「大事ないか?」 うんと、頷く。 真ん丸と大きな目に、白蝉の顔を映し、しばし瞬き…

あやかし姫番外編~やつあしとびわ(16)~

「将太さんを……殺したの……」 「うん、ああ。分け前で、吉蔵と揉めた。だから、殺した」 淡々と、述べる。 白蝉は、ふうんと頷いた。 それがあの人の末路か。 優しい人だったのに。 あの日まで、優しかったのに。 分け前で、揉めた。そんなに、お金が欲しかっ…

あやかし姫番外編~やつあしとびわ(15)~

蜘蛛の爪は、男の胸を貫いた。 男の刃は、二本、脚を切断し、黒之丞の肩から斜めに斬り下ろされていた。 ずっと、躰が崩れる。 倒れたのは、黒之丞。 男が、倒れ伏したる黒之丞を、無表情に見下ろした。 「見事、見事」 そう言うと、蜘蛛の脚を、しゅっと斬…