小説置き場2

山岳に寺社仏閣に両生類に爬虫類に妖怪に三国志にetcetc

ヴァイオレット・ガーデン番外編と京都アニメーションと

映画版ヴァイオレット・ガーデンを観た――限定二週間の間に、2回観た。

 

f:id:musou111111:20191018231354j:plain

もともと、アニメ版は観ていない。だから、正当な続編といえる映画版を観るつもりはなかった。

 

京都アニメーション……涼宮ハルヒの憂鬱に始まり、らきすた、日常、中二病、メイドドラゴン等々、上京後のアニメ遍歴に常にあった名前だ。

 

ニコニコ動画が天下を取り、ラジオに耳を傾けながら通学していた時代――京都アニメーションは、最高のスタジオだった。

 

そのスタジオが燃え、多数の犠牲者が出たという報せに触れたとき、胸の中に渦巻いたのは、言いようのない感情だった。

 

鬱屈――今思えば、そうなのだろう。

 

仕事に身が入らない、あの不安定な状態は。

 

映画は、あの大災害の前日に完成した作品である。

 

奇跡的に、あの大災害を免れて、劇場上映された作品だ。

 

だから、観る。

 

そのスタッフロールには、全ての社員の名前があった。

 

もう、この世にはない――京都アニメーションの一員としてあったはずの日常を奪われた人々の名前が。

 

涙が溢れて、止められなかった。

 

スタッフロールが始まった瞬間――理性は決壊し、その無常さに、鬱屈さに、自身の費やした素晴らしい時間に、その全てに涙していた。

 

それは、自身の涙だった。自身の、京都アニメーションへの、鎮魂の涙だった。

 

上映最終日、二度目の鑑賞では、そこまでの感情の変化はなかった。

 

前向きな、京都アニメーションらしい、優しい作品だ。

 

あの瞬間――あの涙は、あの時のものなのだろう。

 

毀れた日常、それでも、新作を鋭意制作中だという。

 

ふり絞るように、社長が語っていた。

 

その言葉こそ、言いようのない感情の吐露だと、思った。

 

f:id:musou111111:20191018231555j:plain