小説置き場2

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小説-あやかし姫-第十話~葉子と頭領~2

「すいません、しゃべりすぎちゃって」
「いいよ」
 途中から聞き流していたから、とは言わない。もう一度熱く語られそうだから。
「葉子さん!?」
 若い男の声。
「また葉子の知り合いかい?」
 しかし、葉子の反応は今までのものと違っていた。
「こ、木助?」
 驚いた声だった。
「お久し振りです!」
 葉子と頭領の目の前で、深々とお辞儀をする。どことなく葉子に似た雰囲気を持つ男は嬉しそう。葉子は微妙な表情を浮かべていた。
「葉子さん、この方は・・・?」
 木助とよばれた男は頭領のほうを見た。
「い、今世話になってる方で」
「八霊という、よろしく」
「世話?」
「い、居候させてもらってるんだ」
「ふ~ん」
 木助はじろじろと頭領を上から下へなめるように見る。
「木、木助はあたしの従兄弟にあたるんです」
「ああ、なるほど」
 それで一目見たときから葉子と似た印象を受けるのかと合点がいった。
「木助さん、どこですの?」
 木助をよぶ女の声。どうやら木助を探している様子。
「木助さ・・・・・・お姉様!?」
「よ、葉美。久しぶり」
 葉美とよばれた女も、葉子に顔は似ている。しかし、受ける印象が大きく違う。
 葉子が赤い太陽といった感じなら、葉美は青白い三日月といえる。
 静と動といった二人。
「お久し振りです」
 驚いているように見えたのは最初だけで、すぐに葉美とよばれた女はにこやかな、それでいて面のような表情を浮かべた。葉子も同じような表情をつくった。
「木助さん、勝手に離れないで下さいよ」
「すまんすまん、あげにつられてつい」
「お姉様、その方は?」
「この人は・・・・・・」
 木助に話したのと同じようなことを繰り返し。そこで会話は一旦途絶えて。
「とう、じゃなくて八霊様、早く長の元へ」
「まだいってないんですか、お姉様」
「ええ」
「すぐに挨拶にいったほうがいいですよ」
「え、ええ」
 それで二人と別れた。また、後で。そういった葉美の声はなんとなく冷たかった。
 木助とは大違いだった。