小説置き場2

山岳に寺社仏閣に両生類に爬虫類に妖怪に三国志にetcetc

劉備の、選択

貂蝉さん……仲がよろしいな」

 呂布軍軍師陳宮。下邳城より遠ざかる軍と、「二人」の姿を眺む

陳宮殿……」

「陳登殿か。なにか用でしょうか?」

 陳登。呂布軍の文官である。親子で、仕えていた

「お二人、仲がよろしいな」

「うん」

「よろしいのですか?」

「何がですか?」

「高順殿は軍の筆頭格、貂蝉殿は呂布様の義姉としてかなり信をおかれております」

「……」

「その二人がご結婚……これは、陳宮殿の地位を脅か」

「陳登殿、不思議なことを言いますね」

「なに?」

「私は呂布様にお仕え出来ればよいのです。地位など、どうでもいい」

「ほう……もしかしたら、あの二人良からぬ、そう、良からぬことを考えているやもしれませぬぞ? そ

う、呂布様に取って代わろうと。実際に、出来ぬ事ではありますまい。貂蝉殿、ならば。高順殿という軍

の後ろ盾もありますし」

「あの二人に限って、ございませぬな。そのようなこと、絶対に起こりえません」

 陳宮、斬って捨てる

「そうですか? ならよろしいのですが」

 陳登、去る

「……あの男……」



「……あの男…今動くか……」

 夏侯惇軍は、既に丸裸になっていた

 もう一押し、もう一押しなのだ

 「劉備

 一押しに、なれる存在だった

夏侯惇殿! 劉備が、劉備が!」

「李典、うろたえるな」

 副将。慌てていた

「しかし!!!」

「うろたえるなと、言っているんだ。李典、お前はその冷静さが売りであろう?」

「……夏侯惇殿……」

「俺達がじたばたしても、もはや状況は変わらん。運を、天に任せてみるか」

 曹操なら、運を天から奪い取るのだが……俺はその域にはまだ、だな

夏侯惇殿……嬉しそうですね」

「そう、か?……さあて……」



「さあて、長兄。どうするのですか?」

 その美髭をしごきながら。三兄弟が次男、関羽

「ふふん」

 長男劉備、笑う。徳の将軍と名高い男

「兄者、なに笑ってるんだ?」

 三兄弟が末、張飛。蛇矛を振り回す

「ふふん……」

 劉備、また笑う

「なにも……考えていないのですか……?」

「ええ!!! そうなの、劉備さん!?」

 陳到趙雲

「さてと……張飛、ちょっと高順どんにちょっかいをかけてきな」

「……お、おお!?」

 急だな、と張飛

「関さん、陳到夏侯惇どん助けにいくよ~」

「……」

 関羽、黙る

「それは……」

 陳到劉備

「おいら達、曹操どんにつくよ」

「ほお……長兄、それでよろしいのですか?」

「関さん。麋竺と結構長い事、考えたんだ。今呂布さんを叩いておかないと、まずい。おいらの第六感が

そういってる。今止めないと、あの人、全部押し流しちゃう」

「「「……」」」

「いいかな。関さん、張飛陳到趙雲

「長兄の命に私は従うだけです」

 関羽が笑った

「俺は兄者と一緒に暴れられりゃあ、それでいい」

 張飛、蛇矛を地面に突き刺す

「……殿の命令のままに……」

「ぼ、僕も!」

 陳到一礼する。趙雲もその真似をした

「じゃあ、決まりだね」

 劉備軍、行軍を早める

 趙雲は、陳到の隣にいた

趙雲……」

「はい!」

「これが、お前の初陣となる……」

「……はい」

「私の傍を離れるな……それだけは守ってくれ……」

「うん……」

趙雲は、良い子だな……いいか、生き延びろ……」

 陳到の覆面から覗く目が笑った。趙雲の頭を、優しく撫でた

 心配が趙雲に伝わってくる

 趙雲は、くすぐったくて、嬉しかった

「わかりました!」



「よお!!!!!」

 大音声が、戦場に響く。張飛は、まっすぐ高順のもとに馬を走らせた

 その走りは桃色の武将の前で止まった

 両者、武器をむけあう

 蛇矛

 剣

張飛……そうか、劉備はそう動くか」

 呂布軍筆頭武将高順。陣頭で指揮をとっていた

 劉備軍が城を出たとき、軍を退かせた

 唯一人、張飛が向かってきた

「おうよ、なあに、たったの六千だ。大した数じゃあねえだろ」

「……二万対二万に加わる六千。大した数じゃない、かな?」

「さあな。まあ、俺には関係ねえ……ちょっくら、遊んでくれや」

 その身体には闘志がみなぎっていて

 張飛

 稀代の武人である

 大陸広しといえど、彼に武芸で勝る人間の数は多くない

「いやだと言ったら?」

「……無理にでも」

 一騎打ちが、始まった