あやかし姫~血戦、終了、姫様~
「おうおう、この程度か?」
五十はいた妖猿の群れ。
残りは既に十ばかし。
生きている者は、太郎の強さに怯んでいた。
「お前達……十殺陣」
ヒヒの言葉にキイっと返事すると、妖猿達はくるくる太郎を回りはじめた。
そして、一斉に地を走り、太郎を襲った。
十面、攻撃。
「アグ……」
鋭い爪は、太郎ではなく仲間の臓腑をえぐった。
太郎は宙を飛んでいた。
がちっと、音がした。
猿達の首が、全て飛んだ。
ぽーんと跳ね、ころころと、ヒヒの元に転がる。
面白くなさそうな視線をヒヒはかっての仲間のなれの果てに投げかけた。
「よう……これであんた一人だな」
「そうみたいだね。あんまり、使えない奴ら……違う、あんたが強すぎるんだねえ」
ききっと、ヒヒはその巨体を震わせる。
「別に、強すぎることはないさ。俺は、まだまだ鼻垂れのひよっこよ。なあ、あんた悲しくねえのか? 仲間が殺されて?」
「いやあ……別に」
「そっか……お前は、殺す」
「殺せるかなあ……殺せるもんなら、殺してみな!」
ひひが、巨体を揺るがし、怒声をあげる。
空間を揺るがす大声であった。
両者が、飛びかかる。
太郎が、顔を歪めた。
腹の傷は、深かったのだ。
ヒヒは、その隙を逃さなかった。
太く長い腕が、太郎を襲った。
ばんっと音がして、太郎の真っ赤に染まった身体が、地面に叩きつけられた。
そのまま、太郎はぴくりとも動かなかった。
ヒヒが、勝利の咆吼をあげた。
「あ……」
「姫様、どうしたの!?」
急に、姫様が立ち上がった。
寺、古寺。妖達が集まっていた。
頭領の姿はない。
鬼姫に、会いに行ったのだ。
「太郎さん?」
虚空を見ているその瞳。寺の天井を映しているだけ。
姫様は、わななき始めた。
その震える肩を、葉子が押さえる。
「いや!いや!」
「落ち着いて!姫様落ち着いて!」
「いや……」
葉子の手をはらいのけると、姫様は外に出る。
庭に出る。
そして、妖達の目の前で、その姿をかき消したのだった。
「あ、あ……」
葉子が、ぺたんと尻餅をつく。
「消えちまった……」
黒之助が姫様の消えた場所にいち早く行き、なんにもないことを確かめる。
どうすることも出来ず、妖達はただただおろたえるばかり。
頭領はいない、姫様もいなくなったのだ。
五十はいた妖猿の群れ。
残りは既に十ばかし。
生きている者は、太郎の強さに怯んでいた。
「お前達……十殺陣」
ヒヒの言葉にキイっと返事すると、妖猿達はくるくる太郎を回りはじめた。
そして、一斉に地を走り、太郎を襲った。
十面、攻撃。
「アグ……」
鋭い爪は、太郎ではなく仲間の臓腑をえぐった。
太郎は宙を飛んでいた。
がちっと、音がした。
猿達の首が、全て飛んだ。
ぽーんと跳ね、ころころと、ヒヒの元に転がる。
面白くなさそうな視線をヒヒはかっての仲間のなれの果てに投げかけた。
「よう……これであんた一人だな」
「そうみたいだね。あんまり、使えない奴ら……違う、あんたが強すぎるんだねえ」
ききっと、ヒヒはその巨体を震わせる。
「別に、強すぎることはないさ。俺は、まだまだ鼻垂れのひよっこよ。なあ、あんた悲しくねえのか? 仲間が殺されて?」
「いやあ……別に」
「そっか……お前は、殺す」
「殺せるかなあ……殺せるもんなら、殺してみな!」
ひひが、巨体を揺るがし、怒声をあげる。
空間を揺るがす大声であった。
両者が、飛びかかる。
太郎が、顔を歪めた。
腹の傷は、深かったのだ。
ヒヒは、その隙を逃さなかった。
太く長い腕が、太郎を襲った。
ばんっと音がして、太郎の真っ赤に染まった身体が、地面に叩きつけられた。
そのまま、太郎はぴくりとも動かなかった。
ヒヒが、勝利の咆吼をあげた。
「あ……」
「姫様、どうしたの!?」
急に、姫様が立ち上がった。
寺、古寺。妖達が集まっていた。
頭領の姿はない。
鬼姫に、会いに行ったのだ。
「太郎さん?」
虚空を見ているその瞳。寺の天井を映しているだけ。
姫様は、わななき始めた。
その震える肩を、葉子が押さえる。
「いや!いや!」
「落ち着いて!姫様落ち着いて!」
「いや……」
葉子の手をはらいのけると、姫様は外に出る。
庭に出る。
そして、妖達の目の前で、その姿をかき消したのだった。
「あ、あ……」
葉子が、ぺたんと尻餅をつく。
「消えちまった……」
黒之助が姫様の消えた場所にいち早く行き、なんにもないことを確かめる。
どうすることも出来ず、妖達はただただおろたえるばかり。
頭領はいない、姫様もいなくなったのだ。