愉快な呂布一家
原野で向かい合う、十部軍と飛熊軍。 どちらも騎馬主体。両者が戦場として選んだのは、最もその力が発揮される場所。 馬騰は、向き合って、圧迫されるような嫌な感じを受けた。斥候の報告とは違うのだ。 統制が、取れている。 まるで、それまで定まっていな…
――呂布と、曹操。徐州での戦と同時期―― 十部軍。 それは、董卓亡き後の涼州を治める十人の豪族の通称。 今、十部軍の一応の頭目となっているのは、馬騰、韓遂の二人である。 彼らは二人で語らい、かっての都・洛陽に、軍を進める事にした。 漢王室に対する愛…
街の外れ。そこで影は立ち止まった。 後ろには――二人の鬼の姿。 「さてと、観念、したようね」 「……大人しくしたほうがいいよ……死にたく、なければ」 「ぐ……」 「う、あー!」 また、光の糸が。 貂蝉も、同じ光の糸を。 今度は、完全に貂蝉が勝った。 糸は、…
「呂……呂布……」 口を、ぱくぱくとさせる二つの影。 目の前の事実が、信じられなくて。 「そんな、眠り薬……こいつも解毒剤を?」 「へ? なにそれ? あー、この甘い匂い?」 瞳を爛々と飢えた獣のように輝かせながら、無邪気に言った。 「殺気に反応して起き…
「な、なんで! 猫眠煙を吸って!」 甲高い声。少年とも、少女ともとれるような声を、小柄な影はだした。 「少々、慌てましたが、仕事柄この手の薬には、手慣れているので」 「ちっ……」 「一目で、眠り薬だとは。あとは、解毒剤を飲めばいい」 「はあ? ……ど…
「そろそろ……お腹が空く頃ね……」 ゆっくりと、布団から抜け出ると、貂蝉は愛する子共達のところへ。 隣のベッドの雛の安らかな寝顔に、 「……よかったですね……本当に。安心、したんですよ」 そういった。 「うん、待ってて……あれ? 窓、開けたっけ?」 窓が、…
「えっと、高順殿、それでどうなったのです部屋割りは」 「呂布殿と張遼殿、貂蝉さまと雛殿だそうだ」 風呂上がりの牛乳を飲みながら、高順が陳宮に。 飲むか? ときかれ、私はこっちと小銭を出して果物牛乳を売店のおじさんに受け取る。 「大浴場……まあまあ…
西域につながる小さな宿場街。 人と人が、物と物が、いき交いゆき交い、それなりに繁盛して。 その街の、ほどほどの大きさの宿。 そこに結構な数の団体客がいた。 皆、お揃いの薄茶の緩やかな服を着て、フードで顔を隠していた。 通りかかる人は、はて、と訝…
「赤ちゃん、可愛いね~」 呂布が言った。 「うん」 張遼が頷く。 こしょこしょと、くすぐってみる。ちょこっと、動いた。 「それでは、高順様と貂蝉様は五人で?」 陳宮の言葉に、二人が頷く。 「私と呂布様、張遼さんは丁原さまのお屋敷へ。他の方々は?」…
「着いたあ!」 というわけで、到着である。 呂布軍、無事、荊州に辿り着いた。 出迎えるわ、張繍、雛。 照れ臭そうに、手を繋ぎながら、である。 「……あれ?」 「お久し振りです、貂蝉さま!」 「雛さま、お元気になられて……本当に良かったですわ……」 二人…
洛陽のとある食堂。 そこに、妙な集団が。 皆、薄茶のゆったりとした布を身に纏っていた。 顔を、隠していた。 見たところ、子供も交じっているような。 赤子が、三人。 ぐっすりと、眠っていた。 「うーん、お腹空いたあ、貂……違った、厳姉様」 「はいはい…
全てを飲み込む漆黒の狂気 最強の誇りと滅びし誓いをその胸に 山狗を統べる大鎌の主 己に流れるその血を呪って 二人は出会い、乱世にその名を刻み、同じ時を生きた 「愉快な呂布一家~第三部、戦姫双歌」 開戦
ぱしゃぱしゃと、水を跳ね撥ね道を走る。 薄茶のゆったりとした布で顔を隠し、大きな長い、これまた布に包まれた何かを持って。 この地の名は――洛陽。 「もう!」 声を出す。 どこか、雨宿りできるところはないかときょろきょろ。 人と、人と、離れるように…
「どうして、僕なんですか!」 魏延が、抗議する。 宋憲が、困る。 「僕も東の軍に参加するんじゃないんですか!」 「いやあ、それがなあ、東は、お子様厳禁でな」 「真面目に、答えて下さい!」 「指揮する者がいないと、困るだろう……」 「僕じゃなくても!…
「……臧覇殿! 全軍を離脱させて下さい!」 「なんだと!?」 元・山賊の男が。 「呂布様は、城を出ました」 「はあ?」 さっぱり、である。 全然、話が掴めないのだ。 「もう! とっとと!」 「って、無理だろ!」 張遼が、止められない。あの夏侯淵に傷を負…
「いやあああ!!!」 少女が、青龍刀を振り回す。 小柄な馬に、小柄な身体。 呂布、貂蝉の義妹、張遼。 彼女の狂気が伝染し、彼女の兵が、狂気し狂喜する。 それは、小さな呂布といっていい。 呂布の狂気の染り方は、その比ではないのだが。 呂布の軍が圧倒…
「これで、この戦は終わりなのでしょうか」 「そういうことに、なるだろうな~」 曹操と、荀彧。君主と軍師、二人の会話。 眼前の呂布の姿に、曹操はルンルン。 「まだ張遼が残っているが、それも、呂布殿がいればなあ」 「殿。陳宮、高順、貂蝉の姿が見えま…
旗が、翻る。「孫」の字が、翻る。 孫家はかっての領土を、取り戻した。 「まあ、こんなものか」 孫策。孫家の若き当主が、そう呟いた。 「袁」の旗が、地に、朽ちていた。 「周瑜、やっと第一歩を踏み出す事が出来たわけだ」 「ああ」 周瑜。孫策の義兄弟。…
「いったい、何が起こったというのだぁぁぁ!!!」 宮殿で翁が一人吠えた。宮殿といっても粗末なものだが。 急いで建てたというのがよく、わかる。 すきま風が吹き、時折ぱらぱらと砂が落ちて。 その地の名は洛陽。かっての、大陸最大の都市。 そして、漢王…
白馬将軍公孫瓚が籠もる易京楼。 十年分の兵糧をため込み幾多数多の防備を敷いた堅城。 それが、砂のようにさらさらと崩れていく。 本城にまで袁紹の兵が侵入してきたのだろう。怒声や、武器のぶつかり合う音が聞こえる。 何故、こうなったのだろうと、公孫…
水攻め。 それは、呂布軍に甚大な被害をもたらした。 陳宮が集めた兵糧。その大部分が水に浸かったのだ。 兵もなく、兵糧もなく。もはや、持ちこたえられる可能性は零に等しい。 呂布軍は絶望的な戦に、引きずり込まれていた。 「……そう……くるか……」 呂布の…
~張りつめた空気漂う、呂布遊軍仮設本陣~ 張遼「……(´・ω・`)」 臧覇「……(-.-;)」 山賊A「頭! 獲物が現れましたぜ! それも大量にでさあ!(*´∇`)ゞ」 張遼「よっし、準備を!」 山賊A「うっす!(*´∇`)ゞ」 臧覇「なあ、張遼……(-.-;)」 張遼「どしたの?…
呂布:天下無双の火の玉「ガール」! 美人だ、小柄だ、怪力だ! 思いっきり抜けてるけど優しいぞ! 陳宮:呂布軍軍師! 呂布に・・・ 貂蝉:呂布・張遼の義姉! みんなのまとめ役! 大人の魅力の持ち主だ! 料理も上手だぞ! 高順:呂布軍筆頭武将! 渋いぞ…
曹操:乱世の英雄! 覇業を目指す者! 原野戦で呂布に勝利、その勢いで…… 程昱:曹操の軍師。諜報担当 高順:呂布軍筆頭武将! 渋いぞ、いぶし銀って感じだ。鼻に横一文字の傷があるぞ! 劉備:例のあの人、三兄弟の長男。第六感が・・・ 関羽:劉備の義弟、…
陳宮:呂布軍軍師! 呂布に・・・ 高順:呂布軍筆頭武将! 渋いぞ、いぶし銀って感じだ。鼻に横一文字の傷があるぞ! 張遼:呂布・貂蝉の義妹! 呂布軍第二武将!まだまだお子さま!でも武勇は抜群だ! 魏続・宋憲・侯成:呂布配下の武将 臧覇:泰山の山賊の…
曹操:乱世の英雄! 覇業を目指す者! 原野戦で呂布に勝利、その勢いで…… 荀彧:曹操軍筆頭軍師! 曹操に振り回されながらも健気についていってます 夏侯惇:曹操軍筆頭武将! 曹操の従兄弟、隻眼の武将。猛将としてそれなりに名高い 許楮:曹操の護衛。普段…
呂布:天下無双の火の玉「ガール」!美人だ、小柄だ、怪力だ!思いっきり抜けてるけど優しいぞ! 陳宮:呂布軍軍師! 呂布に・・・ 貂蝉:呂布・張遼の義姉! みんなのまとめ役! 大人の魅力の持ち主だ! 料理も上手だぞ! 高順:呂布軍筆頭武将! 渋いぞ、…
~真っ暗闇。自分の姿が淡く光っていて~ 呂布「ここは……」 確か、曹操さんと戦をしていて…… 私、陳珪のところへ…… それで……それで…… 呂布「あう、頭が痛い……」 ?・??「ア、頭デハナクテハ、腹ダ」 呂布「わたし……? お腹……?」 目の前にいる自分。なんだ…
返事はなかった。呂布が少しずつ落ちていく。 赤く染まっていた。 敵の血ではない。 矢。 もう一度叫ぼうとした。怒気を込めて叫ぼうとした。なにを、しているのかと。 はっと、気づいた。叫ぶのをやめた。 涙が、零れた。 矢が刺さっていた。魏越の、首に。…
魏越「急いでくれ! 頼む!」 だが、赤兎の走りはいつもより遅いまま。 主の身体を気遣っているのだ。魏越にもわかっている。 それでも、言うしかなかった。 後ろをみる。 陳珪の姿。 また一人、仲間を斬り倒した。 憎しみが胸をたぎる。 だが、今は…… 自分…