小説置き場2

山岳に寺社仏閣に両生類に爬虫類に妖怪に三国志にetcetc

愉快な呂布一家

山狗(2)

原野で向かい合う、十部軍と飛熊軍。 どちらも騎馬主体。両者が戦場として選んだのは、最もその力が発揮される場所。 馬騰は、向き合って、圧迫されるような嫌な感じを受けた。斥候の報告とは違うのだ。 統制が、取れている。 まるで、それまで定まっていな…

山狗(1)

――呂布と、曹操。徐州での戦と同時期―― 十部軍。 それは、董卓亡き後の涼州を治める十人の豪族の通称。 今、十部軍の一応の頭目となっているのは、馬騰、韓遂の二人である。 彼らは二人で語らい、かっての都・洛陽に、軍を進める事にした。 漢王室に対する愛…

愉快な呂布一家~侵入者(4)~

街の外れ。そこで影は立ち止まった。 後ろには――二人の鬼の姿。 「さてと、観念、したようね」 「……大人しくしたほうがいいよ……死にたく、なければ」 「ぐ……」 「う、あー!」 また、光の糸が。 貂蝉も、同じ光の糸を。 今度は、完全に貂蝉が勝った。 糸は、…

愉快な呂布一家~侵入者(3)~

「呂……呂布……」 口を、ぱくぱくとさせる二つの影。 目の前の事実が、信じられなくて。 「そんな、眠り薬……こいつも解毒剤を?」 「へ? なにそれ? あー、この甘い匂い?」 瞳を爛々と飢えた獣のように輝かせながら、無邪気に言った。 「殺気に反応して起き…

愉快な呂布一家~侵入者(2)~

「な、なんで! 猫眠煙を吸って!」 甲高い声。少年とも、少女ともとれるような声を、小柄な影はだした。 「少々、慌てましたが、仕事柄この手の薬には、手慣れているので」 「ちっ……」 「一目で、眠り薬だとは。あとは、解毒剤を飲めばいい」 「はあ? ……ど…

愉快な呂布一家~侵入者(1)~

「そろそろ……お腹が空く頃ね……」 ゆっくりと、布団から抜け出ると、貂蝉は愛する子共達のところへ。 隣のベッドの雛の安らかな寝顔に、 「……よかったですね……本当に。安心、したんですよ」 そういった。 「うん、待ってて……あれ? 窓、開けたっけ?」 窓が、…

愉快な呂布一家~お泊まり(2)~

「えっと、高順殿、それでどうなったのです部屋割りは」 「呂布殿と張遼殿、貂蝉さまと雛殿だそうだ」 風呂上がりの牛乳を飲みながら、高順が陳宮に。 飲むか? ときかれ、私はこっちと小銭を出して果物牛乳を売店のおじさんに受け取る。 「大浴場……まあまあ…

愉快な呂布一家~お泊まり(1)~

西域につながる小さな宿場街。 人と人が、物と物が、いき交いゆき交い、それなりに繁盛して。 その街の、ほどほどの大きさの宿。 そこに結構な数の団体客がいた。 皆、お揃いの薄茶の緩やかな服を着て、フードで顔を隠していた。 通りかかる人は、はて、と訝…

愉快な呂布一家~新たな、始まり(3)~

「赤ちゃん、可愛いね~」 呂布が言った。 「うん」 張遼が頷く。 こしょこしょと、くすぐってみる。ちょこっと、動いた。 「それでは、高順様と貂蝉様は五人で?」 陳宮の言葉に、二人が頷く。 「私と呂布様、張遼さんは丁原さまのお屋敷へ。他の方々は?」…

愉快な呂布一家~新たな、始まり(2)~

「着いたあ!」 というわけで、到着である。 呂布軍、無事、荊州に辿り着いた。 出迎えるわ、張繍、雛。 照れ臭そうに、手を繋ぎながら、である。 「……あれ?」 「お久し振りです、貂蝉さま!」 「雛さま、お元気になられて……本当に良かったですわ……」 二人…

愉快な呂布一家~新たな、始まり(1)~

洛陽のとある食堂。 そこに、妙な集団が。 皆、薄茶のゆったりとした布を身に纏っていた。 顔を、隠していた。 見たところ、子供も交じっているような。 赤子が、三人。 ぐっすりと、眠っていた。 「うーん、お腹空いたあ、貂……違った、厳姉様」 「はいはい…

戦姫双歌

全てを飲み込む漆黒の狂気 最強の誇りと滅びし誓いをその胸に 山狗を統べる大鎌の主 己に流れるその血を呪って 二人は出会い、乱世にその名を刻み、同じ時を生きた 「愉快な呂布一家~第三部、戦姫双歌」 開戦

愉快な呂布一家~二人の戦姫~

ぱしゃぱしゃと、水を跳ね撥ね道を走る。 薄茶のゆったりとした布で顔を隠し、大きな長い、これまた布に包まれた何かを持って。 この地の名は――洛陽。 「もう!」 声を出す。 どこか、雨宿りできるところはないかときょろきょろ。 人と、人と、離れるように…

終焉の宴(終)

「どうして、僕なんですか!」 魏延が、抗議する。 宋憲が、困る。 「僕も東の軍に参加するんじゃないんですか!」 「いやあ、それがなあ、東は、お子様厳禁でな」 「真面目に、答えて下さい!」 「指揮する者がいないと、困るだろう……」 「僕じゃなくても!…

終焉の宴(7)

「……臧覇殿! 全軍を離脱させて下さい!」 「なんだと!?」 元・山賊の男が。 「呂布様は、城を出ました」 「はあ?」 さっぱり、である。 全然、話が掴めないのだ。 「もう! とっとと!」 「って、無理だろ!」 張遼が、止められない。あの夏侯淵に傷を負…

終焉の宴(6)

「いやあああ!!!」 少女が、青龍刀を振り回す。 小柄な馬に、小柄な身体。 呂布、貂蝉の義妹、張遼。 彼女の狂気が伝染し、彼女の兵が、狂気し狂喜する。 それは、小さな呂布といっていい。 呂布の狂気の染り方は、その比ではないのだが。 呂布の軍が圧倒…

終焉の宴(5)

「これで、この戦は終わりなのでしょうか」 「そういうことに、なるだろうな~」 曹操と、荀彧。君主と軍師、二人の会話。 眼前の呂布の姿に、曹操はルンルン。 「まだ張遼が残っているが、それも、呂布殿がいればなあ」 「殿。陳宮、高順、貂蝉の姿が見えま…

終焉の宴(4)

旗が、翻る。「孫」の字が、翻る。 孫家はかっての領土を、取り戻した。 「まあ、こんなものか」 孫策。孫家の若き当主が、そう呟いた。 「袁」の旗が、地に、朽ちていた。 「周瑜、やっと第一歩を踏み出す事が出来たわけだ」 「ああ」 周瑜。孫策の義兄弟。…

終焉の宴(3)

「いったい、何が起こったというのだぁぁぁ!!!」 宮殿で翁が一人吠えた。宮殿といっても粗末なものだが。 急いで建てたというのがよく、わかる。 すきま風が吹き、時折ぱらぱらと砂が落ちて。 その地の名は洛陽。かっての、大陸最大の都市。 そして、漢王…

終焉の宴(2)

白馬将軍公孫瓚が籠もる易京楼。 十年分の兵糧をため込み幾多数多の防備を敷いた堅城。 それが、砂のようにさらさらと崩れていく。 本城にまで袁紹の兵が侵入してきたのだろう。怒声や、武器のぶつかり合う音が聞こえる。 何故、こうなったのだろうと、公孫…

終焉の宴(1)

水攻め。 それは、呂布軍に甚大な被害をもたらした。 陳宮が集めた兵糧。その大部分が水に浸かったのだ。 兵もなく、兵糧もなく。もはや、持ちこたえられる可能性は零に等しい。 呂布軍は絶望的な戦に、引きずり込まれていた。 「……そう……くるか……」 呂布の…

下邳城攻防戦6

~張りつめた空気漂う、呂布遊軍仮設本陣~ 張遼「……(´・ω・`)」 臧覇「……(-.-;)」 山賊A「頭! 獲物が現れましたぜ! それも大量にでさあ!(*´∇`)ゞ」 張遼「よっし、準備を!」 山賊A「うっす!(*´∇`)ゞ」 臧覇「なあ、張遼……(-.-;)」 張遼「どしたの?…

下邳城攻防戦5

呂布:天下無双の火の玉「ガール」! 美人だ、小柄だ、怪力だ! 思いっきり抜けてるけど優しいぞ! 陳宮:呂布軍軍師! 呂布に・・・ 貂蝉:呂布・張遼の義姉! みんなのまとめ役! 大人の魅力の持ち主だ! 料理も上手だぞ! 高順:呂布軍筆頭武将! 渋いぞ…

下邳城攻防戦4

曹操:乱世の英雄! 覇業を目指す者! 原野戦で呂布に勝利、その勢いで…… 程昱:曹操の軍師。諜報担当 高順:呂布軍筆頭武将! 渋いぞ、いぶし銀って感じだ。鼻に横一文字の傷があるぞ! 劉備:例のあの人、三兄弟の長男。第六感が・・・ 関羽:劉備の義弟、…

下邳城攻防戦3

陳宮:呂布軍軍師! 呂布に・・・ 高順:呂布軍筆頭武将! 渋いぞ、いぶし銀って感じだ。鼻に横一文字の傷があるぞ! 張遼:呂布・貂蝉の義妹! 呂布軍第二武将!まだまだお子さま!でも武勇は抜群だ! 魏続・宋憲・侯成:呂布配下の武将 臧覇:泰山の山賊の…

下邳城攻防戦2

曹操:乱世の英雄! 覇業を目指す者! 原野戦で呂布に勝利、その勢いで…… 荀彧:曹操軍筆頭軍師! 曹操に振り回されながらも健気についていってます 夏侯惇:曹操軍筆頭武将! 曹操の従兄弟、隻眼の武将。猛将としてそれなりに名高い 許楮:曹操の護衛。普段…

下邳城攻防戦1

呂布:天下無双の火の玉「ガール」!美人だ、小柄だ、怪力だ!思いっきり抜けてるけど優しいぞ! 陳宮:呂布軍軍師! 呂布に・・・ 貂蝉:呂布・張遼の義姉! みんなのまとめ役! 大人の魅力の持ち主だ! 料理も上手だぞ! 高順:呂布軍筆頭武将! 渋いぞ、…

武神、帰還

~真っ暗闇。自分の姿が淡く光っていて~ 呂布「ここは……」 確か、曹操さんと戦をしていて…… 私、陳珪のところへ…… それで……それで…… 呂布「あう、頭が痛い……」 ?・??「ア、頭デハナクテハ、腹ダ」 呂布「わたし……? お腹……?」 目の前にいる自分。なんだ…

徐州の戦(終)

返事はなかった。呂布が少しずつ落ちていく。 赤く染まっていた。 敵の血ではない。 矢。 もう一度叫ぼうとした。怒気を込めて叫ぼうとした。なにを、しているのかと。 はっと、気づいた。叫ぶのをやめた。 涙が、零れた。 矢が刺さっていた。魏越の、首に。…

徐州の戦(6)

魏越「急いでくれ! 頼む!」 だが、赤兎の走りはいつもより遅いまま。 主の身体を気遣っているのだ。魏越にもわかっている。 それでも、言うしかなかった。 後ろをみる。 陳珪の姿。 また一人、仲間を斬り倒した。 憎しみが胸をたぎる。 だが、今は…… 自分…